<訳者口上>
2016年に実施、掲載された同誌インタビュー対談を復刻掲載します。同誌編集長、ギデオン・ローズが、当時、米国軍制服組の頂点に座したマーティン・デンプシー(元統合参謀本部議長)を相手に米国国防政策に関し、鋭く切り込む内容です。時はオバマ政権末期、次期大統領の椅子を巡る選挙が目前に迫り、民主党ヒラリークリントンと共和党トランプが凌ぎを削る最中のことでした。
「10年ひと昔」の言葉通り、対談を読めば当時、未だ、ウクライナ戦争も、ガザ紛争も、そして抑々(そもそも)トランプ政権自体の誕生すら見ない、当時の平穏な世界に郷愁すら覚えます。
処が、両名の緊迫した、しかし適格且つ当意即妙な遣り取りは、今日読んでも非常に新鮮です(恰も名選手同士が互いに死力を尽くすボクシング・マッチは、十年後に見返しても色褪せないが如くです)。
一方、品位に欠け、稚拙なトランプ大統領やヘグセス国防長官、或いは無責任でその場凌ぎの高市首相やその閣僚達の言動に辟易とし、日常ストレスを溜めておられる諸氏も多いことでしょう。そのような方々にとり、この対談は、一服の清涼剤となる点は訳者が請け負います。
理由は何処にあるか考察すると、この対談の両名は、互いに立場を異にするとはいえ、高い見識と教養を備えた上で、それぞれ当該職域の長へ上ったのみならず、何よりも真剣に国家を憂慮する気持ちに突き動かされている点こそが、彼らと前出の人々とを決定的に隔する所以と思い至りました。
先週、自宅の古書整理をした処、段ボール箱の中に紛れていた、当該号に偶然目が留まり、冒頭対談ページを何気なく一瞥すると、その儘、引きこまれるように一機再読。そして、今般、同記事復刻紹介へと至った次第です。
訳者
=== 以下 記事全文翻訳 ===
【編集長メッセージ / マーティン・デンプシーとの対談】
昨年2015年9月にマーティン・デンプシー大将は米国陸軍を退役。実に40年以上の軍歴を勤め上げた。彼は、ウエストポイント陸軍士官学校卒業後、陸軍機甲部隊将校を振り出しとし、その後、湾岸戦争とイラク戦争へ従軍、そして、米国陸軍参謀総長を経て、遂には米国統合参謀本部議長へと昇った。下記は、今年2016年6月、彼と、私、フォーリンアフェアーズ誌編集長、ギデオン・ローズが対談した内容だ(このインタビュー内容は、一部編集及び圧縮されたものである)。
編集長 ギデオン・ローズ
【対談】
Q1「今、世界は先例ない最も危険な状況」と、あなたは公言するが、懸念する根拠は何か?:
>>私の生涯で、現在が最も危ない状況だ。自身の軍歴41年間には、極めて深刻な安保上の脅威に幾度か対処を余儀なくされたが、それは精々一つの問題か、或いはその次にもう一つ新たな危機が訪れる、と云う具合だった。即ち、最初の懸案はソヴィエト連邦が全てであり、その次は平和維持活動、その後にやって来たのがテロ問題だ。処(ところ)が、今や、多くの懸案が同時多発する。斯様に、複数の諸課題に直面する中、我々は有限な資源の割当てに苦心し、しかも、国防予算編成の見通は、実に異様な迄に不透明な状況だ。
Q2しかし、今般の脅威はどの一つをとっても以前に比べ小粒だ。即ち、嘗ての大きな一つか二つの脅威よりも、比較的小さな諸脅威が広範囲に発生する昨今の状況を、あなたはより懸念すると理解してよいか?:
>>それら諸脅威が、どれ程小さいかは議論の余地がある。もし放置すれば、今日認識するより遥かに大きな脅威にそれらは将来増幅し得るのだ。
露西亜や中国等の国家が、欧州と太平洋に於ける我が国々益に挑戦している。何れの国も、まだ米国に匹敵する競争者ではないが、特定分野では我が国に伍する位置に接近しつつある。又、ISIS(スラミック・ステイト)のような非国家体の存在がある。
これら諸問題は全て、我々が決して無関心でおられぬものだ。更に、悩ましくも、これら全部に対し、20年単位の長期視野に立ち、政治、関係諸省庁、及び必要な諸資源、この三拍子揃った支援を整えつつ、問題を深く掘り下げることは物理的に不可能なのだ。その結果、現状、精々1年単位で事態対処に臨まざるを得ない傾向に陥っているのが懸念点だ。
Q3露西亜が同国周辺域で起こした行動が、将来、集団安全保障(第5条)を約するNATO諸国への直接攻撃へエスカレートする懸念はあると考えるか? :
>>露西亜連邦にもNATOにも属さない、所謂、中間の“灰色”諸国に対し、露西亜が地勢学的影響力を回復しようと尽力しているのは明白だ。つまり、彼らは、自身の衛星国として機能する国家群の再興を画している。と云うのも、彼らは2020年以降、自国成長軌道の衰退化が免れない見通しを踏まえ、これら衛星諸国により将来の露西亜経済及び安全保障を下支えすることを目論むのだ。
一方、中国は新たな同盟諸国を模索していない。彼らは、寧ろ、自国経済回転に不可欠な諸資源を確保し、15億人を越える国民生活を維持する為に、経済上の取引相手を必要としている。
露中と対照的に、米国の場合、安全保障は同盟諸国体制に依存している。この同盟起源は第二次世界大戦に遡り、その後も先人達の尽力で築き上げてきたものだ。然し、ここに、又、私の危惧も生まれる。即ち、今後、露西亜の緩衝地域に於いて、何れかの時点で、同国と米国の欧州同盟体制との間に好ましからぬ摩擦を来すだろう。又、中国が、自国サプライチェーンを確立し諸資源の獲得を狙う諸行動が、これも又、同国と米国の亜細亜域内同盟体制との間に、好ましからざる摩擦を招来して不思議はない。これが、私が今抱く懸念だ。
Q4あなたは、米国同盟体制を懸念誘発の一因に挙げたが、寧ろ、この同盟関係こそ強味ではないか? これら同盟諸国と友好国に米国を合算した防衛支出額でみれば、それは優に全世界の三分の二、乃至は四分の三を占めている。この点からすれば、諸資源保有量と同盟関係力に於いて遥かに見劣りする中露を、他諸国の人々がそれ程迄に、恐れる必要があるだろうか? :
>>我が国の同盟並びに友好諸国は、互いの利害関係に於いてやや脆弱性を抱え勝ちだ。例えば、NATOの場合、ある加盟国は露西亜こそが最も深刻な脅威と定義するが、別の加盟国は移民やテロを一層深刻な問題だと考慮し得る。
斯くして、露西亜は二つの手段でNATO同盟に影響力を振うことが可能だ。即ち、一つはNATO域内東部側面に対し武力による直接的脅威を与えること、もう一つは、大西洋両岸の同盟関係に楔(くさび)を打ち込むことだ。露西亜は、我々の欧州防衛強化能力を挫くとの明確な意図によって、これら両策を推進する能力を備え、もし、その企てが成功すればNATOの信頼性が急速に劣化するだろう。
Q5具体的に露西亜側のどのような能力を想定しているか? :
>>一部は機密情報に属しここに語れぬが、分かりやすい事例を挙げれば、例えば、宇宙開発、サイバー技能、地上設置式誘導ミサイル、海底に於ける諸能力等、これら全ては、大西洋関係を脅かし、NATOを非常に危険な状況に陥れることを目し、露西亜が開発に励む分野だ。
Q6中国と周辺諸国は、近来、南及び東志那海に於いて一触即発の状況に至っている。これらの事態に米国が取った対応は、過剰か、不足か、又は丁度良いか、どう考える? :
>>我が国のこれ迄の諸行動は、当事者達へ明確なメッセージ発信を意図し為された、と私は考える。即ち、「我々が、太平洋に多くの同盟諸国を擁し、これら諸国と利害を共有し、その条約履行責任を互いに確約している」こと、そして「もし中国が国家主権を乱用し我が同盟諸国に脅威を与える場合には、我々は彼らを支援する条約義務を負う」のだ、と。
これらの地域に於いて、我々の対応は十分であったか? その答えは、「概ね適切に対応した」と私は答えるだろう。
これら事態に対し、私は、所謂『航行の自由(FONOPs)』作戦(米駆逐艦を敢えて中国が主張する領域内を通過させる作戦行動)の推進強化を主張した。その意図は中国に対し、「あなた方が海に出かけて、人工埋め立て作業を試みるのは自由だが、斯かる行動を以ってしても、現状の法規範へは一切影響を及ぼすことがない」点を明示すことにあった。我々は、中国が造った人工島に関し、“12海里領海”の解釈を認めるつもりはないのだ。我々は本件を譲る訳にいかない。何故なら、誰かが何かを宣言し、誰も意義を唱える者がなければ、それが規範になり得るからだ。従い、私としては、『航行の自由作戦』はもう一段増強し実施するのがより望ましかったと考えるものの、我々の取った作戦行動は確実に効果を上げたと思っている。
Q7一部では、我が国が現実に実施したのは、伝統的な“自由航行作戦”と云うよりは、寧ろ純粋な「通航」に過ぎなかったと論ずる向きがあることに就いては?:
>>これら議論は、当該海域内に展開する米軍艦船行動を、どのような呼称を宣言して行うのか、その法的解釈に類する問題だ。私が対峙する中国側相手方にとって、その行動の呼び方は重要でなく、「米国が斯かる航行の権利を断固主張することを中国が快く思わない」点が明白となったことに意義がある。
Q8米軍艦船や航空機が、海外軍戦闘機に妨害を受ける事案がこれ迄頻出した。これら事態への対処は、無視するか、或いは、応戦エスカレートさせるか、何れが適切か? :
>>我が国として為すべきは、その事態を掌握し、相手国へは外交と軍事の双方ルートを通じ抗議することだ。
但し、中国に関し、私が非常に興味深く思うのは、彼らと国際基準や国際諸規範の会話をすると、彼らは必ずこう指摘するのだ。「これら規範は、自分達がまだ国際舞台に不在中に確立された」のだ、と。従って、彼らが今や国際舞台に立った以上、我々は彼らと諸規範に関し再交渉を行う必要がある。そこで我々が為すべきは、他の何事にも代え、安全保障上の利益を第一として主張を継続することだ。これら規範を順守することは、是が非でも必要だった。そして、我々は、先ずは、この海事行動に関するルール設置に関し成功を収めた。一方、領空域のルールに関しては、一層多くの時間を要し、私の任期中に解決を見みたかどうか確信が持てない。
Q9非国家主体について。先ず、海外の紛争地帯で、ISISに代表される非国家組織の存在を見た。
その後、テロ組織の国際ネットワークが、多くの国々で支部や分派、及び過激化した地元支援者達と共に台頭して来た。もし、万が一、米国市民が国内でテロ襲撃を起こした場合、米国軍が取れる対応は何か?:
>>過激イスラム諸集団による攻撃には2種類ある。幾つかの事案は、彼らが現実に武力蜂起し領土確保を狙うものだ。これに対し、我々は地上で応戦が必要になるが、その戦いは、直接の利害当事者達が遂行すべきで、当該地域に属し且つ戦闘を厭わない地元の人々が中心となり、我々は飽く迄協力者として行動する。それは、我々が直接手を下すよりも遥かに長い時間を要するにせよ、20年間と云う長期持続可能性を見据え、この選択を取るのが我が軍の方針だ。
片や、オンラインを通じ、ISIS等の過激派集団は一般諸個人を感化する。彼らは地上戦では勝利できないが、このバーチャル空間の戦いで恐らく勝利を収めている。我々にとり、同空間内で彼らと戦うのは至難だ。これは長期的な戦いで、我々として油断せず、積極的に対抗する必要がある。この分野に於いて、我々の従来取り組みは、本来、なすべき水準に至らず、不十分と考える。
Q10ボブ・ゲイツ(元国防長官)が数年前に語った有名な言葉がある。「私が考えるに、今後、将来の如何なる国防長官も、もし、再び、大規模な米軍地上軍投入作戦を亜細亜、或いは中東、アフリカ向けに提言しようとする者がいたら、頭を医者に見てもらった方がよい」と。これに同意するか? :
>>将来、何れかの時点で、米国国家安全保障上の利益を著しく脅かす事態が発出し、大規模な戦力派遣の必要に迫られる可能性がある。例えば、もし、イランが核兵器とそのミサイル搭載能力開発を決し、それにより脅しを掛けてくる場合、これは如何なる戦力をも投じても、それを必ず阻止すべき事態に相当する、と私は考える。
その反面、テロ温床の地、中東で不安定な状況が継続することに呼応し、同域へ大規模な米軍を展開する策は非生産的と私は考える。理由は二つある。先ず、我々が大規模戦力を投入すると、本来、問題に対処すべきこれら地域の人々がそれを見て速やかに後退し、その後、殆ど助力も提供せぬ儘、結局、我々が対応余儀なくされること。次に、我々は元来、露西亜、中国、北朝鮮といった諸国家からの潜在的脅威を、有効に抑止する為に軍事力を維持する責務を要する為だ。
従い、中東の一般紛争に関し、米国は主体者になることを回避する一方、同域内に我々は利害とパートナー達を有している、と云う事実を認識すべきだ。即ち、我々が取るべき手法は、幾か所かの拠点を域内に維持しつつ、必要に応じ、ここから我が軍の直接軍事作戦を実施し、或いは、拠点受け入れ国の軍隊に訓練を施し、又、必要資材を補強することだ。但し、重要なことは、主体者は飽く迄、地元の人々だ。米国は、時局に応じ臨機応変に、その支援程度を調節し、時に拡大し、或いは縮小する柔軟性を発揮することが求められる。我々は時局の拡大化はとても得意だが、縮小するのは不得手な傾向にある。
Q11それは、我々が現状実施する手法から劇的変化がないようにみえるが。 :
>>その通りだ。急激な変化を試した処で、何も変わらぬ。寧ろ、それは事態を一層悪化させるだろう。
Q12最近の中東に於ける米国軍事政策は特に不成功であったと、多くの評論家達は考えている。これに異論あるか? :
>>異論がある。我が軍中東戦略は、あるべき姿に照らし、現在、総じて適正と、私は認識する。
但し、以前の我々は、「協力できない項目」を明確化することを重視し、その説明に始終する傾向があった。そして、これが域内パートナー達へ、理解困難なメッセージを与えてしまった。我々はこれを克服し、今や、パートナー達は「我々が何を積極的に実行するか」を理解するに至った。具体的には、我々の空軍戦力、諜報能力、訓練プログラム、設備供与等、米軍固有の諸能力の提供であり、これらによって彼らは、大きな優位性を確保できるのだ。
Q13シリア向けに、我が国は「兵員訓練と設備強化」計画を実施、5億ドルの費用を投じたが、多くの効果が見られない。これは、現場での実行に関わる問題か、或いは、同種の計画に本来的に付随する性格の問題か? :
>>恐らく、その両方の要因がそれぞれ多少づつ作用した。
当時、政府内の他関係諸省が既に別の諸計画を進めていた状況下、我々は大統領に対し、国防省としての提案を提示できないものかと模索した。その折り、省内で最初の段階で提示された諸案に、中央軍からのものがあり、その趣旨は、我々がシリア穏健派戦闘員達を見つけ、現地の戦闘から一定期間離脱させる間、我々が訓練を施して中核戦力を構成出来る能力を彼らに習得させ、その後、彼らを再度戦線投入する、と云うものだった。この概念は効果があると私は踏んだ。何故なら、同策によって、我々は、米国が支援するシリア人集団を確保でき、そして、彼らが最終的に戦闘に勝利した暁に、我々は影響力を保持しつつ、シリア国家の将来構築に助力可能と思えたからだ。
但し、今、思い返せば、この見通しは誤りだった。現実には、再投入されたこれらの集団は“反体制組織”としての扱いを受けたのだ。それは、同国政権に止まらず、ISIS、そして過激派“アル・ナスラ戦線”、更には、我々がその投入を歓迎するに違いないと目した、他の諸集団からも反感を買ったのだった。「彼らが歓迎されない」という兆候を、我々はどの時点で見誤ったのか、私にはわからないが、読み違えたのは事実だ。
結局、我々はこの計画を破棄し、別策を模索した。即ち、今度は、既に存在している、穏健派の集団に対し、武器を供与し訓練を施す手法を開始した。この新方式の効果判定は未だ決していない。幾つかの事案で成果を上げる一方、幾つかは上手くいってない。これらは中々困難な作業だ。と云うのも、シリアは、私が見て来た中でも比類なく脆弱で且つ破綻した国家だからだ。
Q14国家安全保障政策と国防政策との関係は如何に? 即ち、国防力の規模と構造は、国際介入や特定事象への対応に際し、我が国が取り得る選択肢に如何程の影響を与えるか? :
>>両者は直接に関係し合う。2012年の時点で、国防戦略指針(Defense Strategic Guidance)が予算に織り込まれ、その指針実現に両者が相関する中、我々は、国家安全保障上の利益確保に必要な戦力構造に関し、最低限度の基本的要望事項を明確に説明した。当時、我々はこれを必要最低水準と定義したにも拘わらず、現実には、複数の重要分野に於いて削減査定を受け、その水準を割り込む事態が生じ、以来、未だその挽回に至らない。これが、現在、そのミスマッチが生じている背景だ。
この為、我が国の諸資源を活用し、国家安全保障利益の配列組み換えが必要で、次期大統領は斯かる事態に遭遇することになるだろう。その節に切に願うのは、予算編成過程に於いて一定の確度を是非織り込んでもらいたいものだ。さもないと我々は実際、計画の立てようがない。
Q15約束と利用可能な諸資源との間に、もし開きがあるとすれば、約束範囲を縮小すべきか、或いは投入資源の拡大を画すべきか? :
>>もし、学会やシンク・タンク内で行う討議ならば、我々が世界を通じ約した諸事に就いて合意範囲を如何に縮小すべきかを語ることは可能だ。然し、その後で、真に問題になるのは、どの利益を“非優先課題”と判定し捨て置いてしまうかの判断は困難を極める、と云う点だ。
統合参謀本部議長の職にある間、もし私自身が大統領に対面し、「今、ご説明した、国家安全戦略上の、これら8乃至10ある事案に於いては、特に、これとこれを優先し推進すべきです」と後ろめたい気持ちなしに、果たして進言することができたかと云えば、甚だ自信はない。よしんば、仮に、敢えて斯かる提案をしたとして、現実には、第10番目の優先事案が、突如、筆頭重大事案へと格上げされる事態が往々に起きるものだ。エボラ出血熱病の突発的流行危機(2014年)が好事例だ。感染症対応や人的災害は、我々の尺度に照らせば決して高い優先順位に位置しない。但し、一度事態が発出すれば、立ちどころに最優先事案へと変じ、そこに資源集中を余儀なくされたのだ。よって、今、我々は2012年当時に設定された諸資源総量を回復する必要がある。何故なら、我が国戦力と応戦準備を、その必要水準で維持することが、我々の長期的な責務だからだ。
Q16国防予算に於ける最大の問題は、予算編成工程の不確かさか、予算総額か、或いは、特定構成内容の内訳か? つまり、ある分野に過大予算を投じる一方、他分野で不足を来しているのか? :
>>これは正に当を得た質問だ。2012年当時、私は、適正な国防規模とそれを支える為の諸資源を特定した上、更に三つの要素が必要と説いた。つまり、時間軸、柔軟性、そして確度だ。この意味する処は、例えば、国防省に於いて7千5百万ドルの予算削減を実施する場合、10年間かけて行うのであれば、それは可能だ。斯かる時間軸が与えられるならば、その間に、或いは特定の問題や箇所に就いて若干の期限猶予を要する事案も生じるかも知れないが、総じて実行できる。
然し、一方、柔軟性が欠かせない。これが意味する処は、仮に、国防省に対し7千5百万ドルの予算削減が命じられ、我々が「いいでしょう、その削減は実行可能です。」と約束したとしよう。この場合、現状25%程度過剰設備が存在し、更に6つか7つの兵器システムは老朽化しつつあり且つ量的に余剰な状況に鑑みれば、実現の目途は立つ訳だ。但し、重要なのは、そうと決まった後で、今度は議会が「しかし、私の選挙区域で仕事が減っては困る」だの、「私の選挙区に影響する兵器システム削減は許さない」だのと、硬直的注文はご法度に願いたい、と云うことだ。
加え、確度も必要な条件だ。統合参謀本部議長の職にある間、この「優先順位の問題」が、常に私の頭上に“ダモクレスの剣”の如く吊り下がる思いを味わった。そして、実際に、この問題が、
陸・海・空軍参謀長達の肩にのしかかり、彼らこそが戦力統合を図る重大責務を負うている。
Q17退役を迎え、特定の兵器システムに関し、あなたが特に今、その増強、又は削減を強調したいことはあるか? :
>>我々が常日頃、言及する通り「必要な分野に、資金が足りていない」状況を呈している。諜報活動の基盤強化は、衛星利用であれ、無人機航空システムであれ、非常に強いニーズがある。各統合軍司令官からの要望に全て沿うことは不可能とは云え、その実現に少しでも近づける努力を怠るべきではないだろう。
又、10隻の空母を擁する米国艦隊を、我々が補充維持して行く為には、より確度の高い予算編成を伴ってこそ、艦船の定期修理や寄港日程の計画が可能になる訳で、この点の改善が必要だ。又、今般、オハイオ級原子力潜水艦の更新時期を迎えており、これは、核戦略三本柱を維持する為に、その実行は欠かせぬ重大案件だ。また、パトリオット型ミサイルに搭載するバッテリーに対する高い需要に常に応え続ける必要がある。又、我が軍戦力が、一部で極度の人員不足に直面しているのが現実だ。
Q18過去10年乃至20年の間、既存の防衛構造の維持を図るだけでも、実質防衛費を毎年増額する必要があったように見受ける。この理解は正しいか、そして、そうなった理由は何か? その場合、斯かる状態は持続可能か? :
>>年々の設備老朽化を勘案すれば、現戦力を維持するだけでも、年率数パーセントの増額が必要になる。更に、兵器設備の老朽速度は予測不能だ。それは、軍の戦力行使は実績あるのみで、予め予想し得ない理由による。それでも、我々は、我が軍の資本構造変革と再構成に関し、顕著な成果を上ることができた。然し、これらに要した諸費用は予算提出時には織り込まれなかったものだ。その上、資本構造改革は、取り分け巨大な諸課題を抱え、その一例が、先に言及した、オハイオ級潜水艦の更新問題であり、その実施は今後25年間に亘り予算増分要因になる。これらの議論は、事が危機的事態に至って初めて脚光を浴びる傾向があり、我々は今、正にその段階に居る訳だ。又、海軍は“核の三本柱戦略”(大陸弾道核ミサイル、同搭載潜水艦、核搭載戦略爆撃機)を維持することが必須だ。
Q19例えば、F35型戦闘機の最新兵器システムは、一機当たり費用が天文学的数字に上り、予算上、一握りの個体数しか配備に耐えない。米国に伍する競争者と現実に戦火を交える事態に至る場合、斯かる小規模戦力を以って、我が国が、多くの消耗を補充維持し、又は、事態をエスカレートさせる圧力を回避しつつ、十分長期間に亘り効果的な軍事行動を展開可能だと確信できるか? :
>>新兵器システムは、旧機種に比し、大概2~3倍,乃至4倍増の能力を備えるよう設計されているので心配ご無用だ。これらはコンピューター試算の上、繰り返し実地テストを経、我々はこれが真実であると確信する理由がある。
一方、心配されるのは、もしも、損耗を補充するに必要な能力を十分備えた国内産業基盤を、確実に保持可能な道筋を見出せなければ、それこそが、我が国の重大事になる点だ。私、個人としてこれを大いに危惧している。
例えば、ある艦船を継続し洋上勤務に就かせる必要性があると判断されたとしよう。すると、その場合、定期メンテナンスの周期に則した、寄港とドックでの修理を延期せざるを得ない。そうなると、造船所は労働者達を一時解雇し、その結果、これらの造船工達は仕事の不安定さに嫌気し、他の職種へ移ってしまうのだ。
これらは深刻な事案であるにも拘わらず、我々統合参謀本部も、これ迄、問題解明に当たらず、過去4年間の不安定性が齎(もたら)した負の影響も十分究明したとは、私は考えていない。
Q20軍歴中、あたなが最も誇りに思うこと、又、そして最大の後悔は何か?
>>誇りに思う面は、答えるのが容易だ。それは、これ迄、私が共に働いた人々に尽きる。誠に有難いことに、我が国には若く有為な男女が健在で、彼らは、自身の個人的野望の多くを断念し、自主的に手を挙げ、より大きな目標の一部を担う道を選択した者達だ。それと云うのも、彼らが国防勤務の尊さを信じる故なのだ。
今般、軍服を脱ぐに際し、今後、これらの若い男性及び女性達が最大限国家に貢献できるよう、彼らを見守り、育成し、そして勇気付ける機会をもう持てなくなることが、極めて残念だ。
後悔について。それは、もし、兵士を失った時――陸軍兵、海軍兵、空軍兵、或いは海兵隊員かを問わず――自責の念にさいなまれるのが常だ。即ち、提供した設備に不具合がなかったか、与えた指示、或いは作戦に不備はなかっただろうか、と。従い、死傷者が出た場合、それがどのように、そしてなぜ発生したかを徹底調査し究明するのだ。それは、「事前には予防しえなかった出来事であったか」否かを確認する為だ。これら調査手続きが続行される過程で、一層、その兵士の損失が重く胸にのしかかってくる。一体全体、けっして平気でいられよう訳がない。
そして、統合参謀本部議長に昇進すると、今度は、国防予算、防衛体制、国防リスクに関し、様々な討議をする役目を負う。ある時は、私はこれらの人々を説得した。然し、又、多くの場合、説得に失敗する。現実は、討議や証言から戻った私は、自身の未熟な説得力を悔いることが数知れぬ程あった。
Q21ベトナム戦争後、米国は兵役志願制に移行した。これにより、極めて少数のプロ集団部隊が、休む間もなく作戦投入される事態が生じている。一般市民達が局外者となる一方、プロの軍人達は過度に拡大した戦線により広く薄く展開し、過剰労働に陥っている。この状況を是とするか?
>>これは非常に重大で、我々、統合参謀本部メンバー内でも頻りに論じて来た問題だ。1970年代中盤、志願制による兵力が考案された頃は、我々が近年求められる負荷の大きさで任務遂行する事態を誰も想定しなかった。だから、当時には実に上手く機能した。
然し、その後、ある時、一時的に、兵役期間を15ケ月に延長し、在宅期間を1年に短縮した処、殆ど戦力崩壊を招くような危機的事態に至る経験をした。
現在は、元のように、9ケ月間兵役に就き、2年間在宅する周期へ戻し、このペースは持続可能なものだと私は考えている。従い、現行ペースによって戦力運営を維持する限りは、これは永続可能だ。兵士の家族構成員達は皆強く結束している。しかし、兵役期間を延長し、家族と過ごす時間を削れば、我々は大きな問題に直面するだろう。我が国の現有戦力は、現在求められる任務を遂行するには十分足る規模だ。然し、今後、任務が増加する場合は、人員規模も拡大が必要だ。
Q22米国は今、正に大統領選挙に向け両党キャンペーンが激しく競い合う最中だ。国防策に関し、現在交わされる討議内容の水準に満足しているか? :
>>不満足だ。行われている議論が表層的且つ感情的だ。これら諸問題には真に深い議論を求めたい。新政権発足後、最初の60日か90日に起きる事態を討論するが如き姿勢は、私にとって満足には遠く及ばぬものだ。
Q23軍の最高司令官である大統領から、テロリスト捜査に関連し、仮に、無辜の市民に対し拷問や殺害を命じられた場合、どうなるか? :
>>我々軍人は、法典範たる合衆国憲法に宣誓した身だ。よって、我々はその責務に従い、違法や道徳を逸した命令に服従しない。もし、命令が脱法、又は道徳に反する場合、我々は職を辞するのみだ。斯かる命令には、断固、従う訳にいかぬのだ。
(了)
*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。
文責:日向陸生
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