著者/肩書: マティアス・マティス &ナタリー・トッチ共著/ 両名ジョンズ・ホプキンズ大学院教授 (Matthias Matthijs & Nathalie Tocci)
(第一章 論稿趣旨)
米国大統領ドナルド・トランプが執務室に復帰した2025年1月の時点で、欧州大陸はある選択に迫られたのだった。即ち、トランプが、凄まじい欧州国防支出増額を求め、広範に及ぶ新関税策で欧州を脅し上げ、更に、欧州が積年培って来た民主主義と規範順守の価値観を真っ向否定しに掛かった時、欧州指導者達は、片や、「対抗姿勢を打ち出し集団でこれら要求を押し戻す」選択と、或いは、「抵抗を最低限に封印しトランプに屈服する」選択とに直面した。結果は、ポーランドから英国、更にはラトビア共和国から伊太利亜に至る迄、皆が後者を選んだ。米国と対等な友好国の立場として交渉を主張するでもなく、又、戦略的自治策を自主的に打ち出すこともなく、EU構成諸国と英国等の非加盟国共々、全員が反射的に且つ次から次へと“屈服する”道を選択したのだった。
欧州に住む多くの人々にとり、これは合理性ある選択だった。迎合策を提唱した中道派は、これに代わる諸対案――トランプからの防衛費拡大要求に抵抗し、貿易交渉に於いては中国流の報復的関税合戦をエスカレートさせ、彼の独裁者的振る舞いを非難すること――は、欧州の利益を損なうものだと論じた。例えば、米国がウクライナを見殺しにすることもあり得た。トランプはNATO支援の取り止めを宣言し、欧州大陸の主要基地から撤退する可能性があった。又、大西洋を挟んで、全面貿易戦争が勃発したかも知れなかった。これらの事態の内、どの一つも現実には発出することなきを得たのは、一重に欧州が慎重に自重し、トランプへの迎合策を選択した賜物なのだ、と彼らは云う。
無論、これは十分真実とも云える。だが、この認識に立つ人々は、抑々(そもそも)、当の欧州国内の政治諸状況が、実は妥協的決着を図るよう促すことに寄与したこと、並びに、斯かる迎合的姿勢が域内各国に将来如何なる帰結を齎すか、この両方に全く思いが至っていない。結局の処、大衆極右政党の台頭は米国固有の政治現象でない。欧州に於いても、極右政党が政権を握るか、或いは最大野党に存在する国々が増加する中、トランプへの追従を支持する者達に限って、国粋主義者や大衆勢力により結局彼ら自身が束縛されるという事実を容易に認めようとしない。その上、彼らは往々にして、トランプに迎合する政策が、却って極右政党を一層伸長させることにも気付いていない。極右勢力は欧州の「弱体化」に付け入ろうとし、それを歓迎する。欧州が、防衛、貿易及び民主主義の価値観の諸案件に於いて次々とトランプに屈服する様は、彼らを大いに勢い付かせる効果を持ったのだ。これらから察すれば、欧州が実施した対トランプ戦略は、実は知らぬ間に自ら「自壊の罠」に嵌まった、と言い換えが可能だ。
欧州がこの連鎖から抜け出す道は唯一つだ。まだ対処可能な処(ところ)から段階的に機構修復を進めることだ。「2029年にはトランプが去り、大西洋の悪夢が終わる」との当てにならぬ考えに捕らわれ、その時を消極的に待ってはならない。EUは媚び諂(へつら)うのを止め、主権を大きく回復する必要がある。これを為(な)し得てこそ、内部から侵食しEUの空洞化を引き起こす政治的勢いを殺すことが出来るのだ。
(第一章 訳 完了)
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文責:日向陸生
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