著者: ミッチ・マッコーネル (MITCH McCONNELL)
肩書: 上院議員(ケンタッキー州)、米国議会院内総務(任期2007-2024年)
(論稿主旨)
トランプが大統領として二期目の執務を開始する時、引き継がれる世界環境は、4年前に彼が退任した時に比べ、米国の諸利益の観点から、遥かにより敵対化している。
中国は、自国の軍事的、政治的、そして経済的影響力を世界に拡大させようとの試みを強化して来た。露西亜はウクライナに対する残虐で決して正当化出来ない戦争を続行させている。イランの脅威は未だ抑止されるに至らず、同国はイスラエルを破壊し、中東を支配し、そして核兵器開発を継続する作戦行動を依然遂行する。そして、米国に敵対するこれら三ケ国に加え、今や、北朝鮮が、“凡そ100年もの間、西欧の平和と繁栄を下支えした、米国主導の世界秩序”を、次第に弱体化させようと、彼らとより緊密な連携を取り始めた。
バイデン政権が、これら諸脅威の対処に当たり追求したのが「事態に関与し妥協を探る」策だった。然し、今日の失地回復主義を唱える諸大国が求めるのは、既存国際秩序を統合的に深化させることではない。彼らの望みは、その基礎自体をすっかり拒否することなのだ。彼らは、米国の弱みに付け込んで力を強化し、世界覇権に対する彼らの食欲は、それら弱みを喰らうことで更に一層貪欲化して行くのだ。
ワシントンの多くの政治家達は、この脅威を認識し乍らも、彼らは、“現実に進行する大掛かりで体系的な競合状態とは凡そ無関係な、彼らにとって国内に於ける優先諸政策”を正当化する為の道具として、その脅威を利用する有様だ。
彼らは、「大国同士が競合する現実」を口先で表面的に支持をしながら、斯かる競争に於いて実際には決して欠くべからざる“軍事力への投資”を縮小する人々だ。彼らの誤った前提によって大きな代償が生じたことは今や明白である。然し乍ら、軟弱に始終した4年間を巻き返す策が、「次の4年間を孤立化」することでは、断じてあってはならない。
米国が直面する中国と露西亜との競合は、地球規模で対応すべき難題である。それにも拘わらず、トランプに対し「脅威に対抗する箇所を一つに絞り、それ以外の地域では米国の利益も防衛義務も縮小すべきである」と進言する者達が必ず現れるに違いない。
これら主張の大半は、欧州乃至は中東の利益を犠牲にし、亜細亜へ資源を集中させよ、と云う議論だ。この考えは、「米国が強固な要塞である」との夢物語に耽る、孤立主義信奉の保守派と、一方では、「国際主義が既に終焉した」と勘違する、進歩派自由主義者との双方の間に一般化している。
右派は、露西亜が欧州へ侵攻する事態に直面して尚、軍事予算を削減し、一方、左派は、イランを抑止する策にもイスラエルを支援する策にも相変わらず慢性的アレルギー症を発する始末だ。何れの陣営も、米国の軍事優位性の維持を図ることも、或いは、既存秩序へ修正を求める諸大国に対抗する上に重要な同盟諸国を保持することも、その実行を約することがない。もし米国が軍事的後退を続ければ、“敵対諸国が喜んでその隙を埋める機会”をみすみす与えるだけなのだ。
トランプと雖(いえど)も、外交政策に就いては、米国指導力の礎(いしずえ)たる「軍事力(hard power)」に基いて、その構築に当たる知恵を持ち合わせている筈だ。従って、軍事力の重要性が無視される目下の傾向を巻き返す為に、同政権がやるべきは、防衛費の顕著にして持続的な増額、防衛を支える民間産業基盤へ世代を跨ぐ長期的な投資、及び米国の新技術開発加速に緊急に必要とされる諸改革をそれぞれ実施し、その上で、同盟国を拡大し、更に彼らと新技術の共有を図る、等の諸策実現を公約することだ。
トランプ政権がこれらの諸段階を進む場合、同政権の共和党内部から「米国の権力優位を追うのは止めよ」との反論が恐らく一斉に上がるだろう。然し、同政権はこれらの要望を拒絶しなければいけない。何故(なぜ)なれば、「米国は一度に一つの脅威に専念する能力しかない」、又は「米国の世界に対する信頼性は分割し切り売りも可能だ」、或いは「米国は世界の混沌状況と関係なく、距離を置いてあしらって一向に支障がない」と云った論に乗じるのは、米国の国際的利益も、又、敵対諸勢力の国際的野望をも一切考慮なく、無視する行為に等しいからだ。
一つ云えることがある。米国は、自国の衰退回避に尽力するのみでは、再び偉大な国家へ返り咲くことはないのだ。
(以上 第一章 論稿主旨部完訳。後続諸章の翻訳は別途追加掲載予定)
文責:日向陸生
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