【一般論稿】『中国対中国 ~同国が遂げた成果の副作用に難渋する習近平~』(原典:『China Against China ~Xi Jinping Confronts the Downsides of Success~』, Foreign Affairs 2025年11月12月号、P122-133)

著者: ジョナサン・A. チン(Jonathan A. Czin) 

肩書:現ブルキングズ研究所 中国センター研究員。バイデン政権下NSC国家安全保障会議中国部長(2021-23年)。元CIA在籍上級分析官在籍。

(論稿主旨)

 習近平が中国指導者序列の最頂点に上り詰め13年が経過したが、彼の治世を巡る評価は、ワシントン政府内専門家達の間に未だ一定する気配が全くない。一説によれば、習は毛沢東の再来であり、絶対的権力を略(ほぼ)手中に収め、国家を彼の意に従わせた、と。又、他の説は、習政権は極めて危うく、不満を抱くエリート達のクーデターで失脚する危険を常に内包する脆さを強調。習の率いる中国は、果たして、目的を遂げる意思、資源、そして米国をも凌ぐあっ晴れな技術を有する手強い競争相手なのか、或いは、巨額債務に二進も三進も行かず内部崩壊瀬戸際の国家なのか。その答えは、尋ねる相手次第に様々で、中国成長モデルが躍動的か、瀕死状態か、弛みなく発展するのか、或いは過去に囚われ絶望的な事態なのか、諸説紛々たる状況だ。

  又、コロナ感染症蔓延からの経済回復に苦戦する中国の姿を目の当たりにすると、習の事業に対する観察者達の評価は一層複雑化した。習が過酷なコロナ規制を唐突に終わらせ、国内経済活動を再開させた2022年末、ウォールストリート・ジャーナル紙が打ち出した議論はその典型だ。つまり、それは中国経済が急回復を遂げるか否かではなく、その過程が「V字型か、或いは2度底を舐めるW字型」かと云うものだった。更に、経済が停滞し始めると、ワシントン政府内の一部は、真逆の極端へ結論を方向付けた。即ち、中国は最盛期を既に越え、統治構造は破綻し、同国が「米国対比、衰退し始めた」と。

 中国を巡り一定しない分析評価は、そのまま米国の対中政策に映じられた。第二期トランプ政権初期、高官達は「中国が米国にとって最大脅威だ」と挙(こぞ)って云い募った。その一方、中国が被る経済的制約の甚大さに鑑みれば「米国の仕掛けた貿易戦争に容易く屈服する」と信じた節があり、恰も、毛沢東が嘗て米国を見掛け倒しの弱くて脆い“張り子の虎”と評したのを彷彿とさせるような、楽観的見解が流布した。

結局、関税で中国に圧力を掛ける試みは失敗。2025年4月、米国政府が発動した高関税策に対し、中国は即座に報復関税を課し磁石用レアアースの供給を停止した。斯くして、中国経済は貿易の衝撃をも消波し乗り切る能力を備えることを証し、同国政府は自信を新たにした。

 嘗てソヴィエト連邦が、閉鎖型非自由主義体制の重みで自ら弱体化したのに比べ、米国は、自身の政治体制が強靭である理由を、諸問題を認識し、解決諸策を提案し、軌道修正を図る能力を備える点に求めた。そして、中国では過ちを認めずに、問題を全て曖昧化させるインセンティブが政府高官に働く、と元来信じられて来た。処(ところ)が、現実には、習近平体制下に、彼らは多くの弱点を率直に認識し、段階を踏みそれらを修正する行動に長け――これらは、柔軟で適応力に富むとされた米国制度より寧ろ優る、とさえ考え得る点に於いて、米国人にとっては手痛い皮肉な事態となった。つまり、習近平政権下に中国台頭の意味する処は、単に米国権力に対してのみならず、米国の開放型社会の基本信条――つまり「自由な指摘と議論こそが自己修正型制度の基盤である」と云う根本理念そのその物への挑戦でもあるのだ。

 習にとって、覆い隠すことの出来ない中国の弱点が、40年に亘る経済改革の副作用だ。急成長は富と力を齎(もたら)した反面、意思決定の優柔化、汚職、そして他国への過度な経済依存を強めた。一方、人々は習の強大な指導力に目を奪われがちだが、彼は中国が抱える多くの脆弱性を特定し、これに対処し、持てる資源を動員し、国家をより強靭化する能力を発揮した点を見落としてはならない。そして、米国が仕掛けた貿易戦争をも成功裏に撥ね付けたことからも、寧ろ、習の戦略は奏功していると見るべきだろう。

(論稿第一章 翻訳了)

文責:日向陸生

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