【フォーリンアフェアーズ誌ガイド 2026年1月・2月号概要】 (原書:Foreign Affairs, 2026年January/February号、the Council on Foreign Relations出版)

 掲題誌の当月投稿論文概要を下記に紹介します。

 トランプ大統領の諸行動は、年明けに一層エスカレート。そんな中、先ず、訳者の推奨するのは、以下4論。何れも、トランプが作り出す世界に対し、日本がどう対処すべきかのヒントになる。諸論稿は何れも旧年中に執筆されたものだが、直近の同大統領の無茶振りは、決して予想外のものではなく、識者達が既に散々危惧したシナリヲ通りに進んでいることが再度確認出来る。

<推奨論文4篇>

(1)『西欧の敗退 ~欧州大陸はトランプの罠を脱せられるか?~』

著者:マティアス・マティス(ジョンズ・ホプキンズ大学院教授)、他共著

(『How Europe Lost ~Can the Continent Escape Its Trump Trap?~』(原書P154-165)

 トランプ脅威を欧州の立場から分析。現在、欧州、日・韓、及び世界が取る日和見的ゴマスリ策は国家自滅の道だと主張。これを回避する為に、トランプへの迎合を止めよ、と提言。さもないと、EUは分裂し崩壊、更に各国内に於いては大衆右派と極右の台頭を手助けすることになる。具体策として、米国抜きで仲間を増やし(TTP活用)、一方、中国には硬軟両用で当たるよう提言。

(補足)

提言実行に際し、各国が指針とすべき4つの戦略と3つの原則が提示されている。

戦略:防衛準備、貿易多様化、対中国独自策、エネルギー転換(クリーン化)

原則:Noと云える国たるべし、独立行動辞ぜず(利益相反時)、域内包括的プロジェクト推進

(2)『米国独裁主義の代償 ~民主主義後退の巻き返しは可能か?~』

著者:スティブン・レヴィツキー(ハーバード大学教授)、他共著

(『The Price of American Authoritarianism ~What Can Reverse Democratic Decline?~』原書P30-43)

 筆者らは、今や、米国政治が“政党間競争が尚も存在する環境下に独裁化する”(不完全独裁)状態にある、と警鐘を鳴らす。この指摘は昨年当誌6月号に初出、今般、重ね寄稿した理由は、トランプによる国内政敵潰しが、一層露骨に深刻化した為だ。米国民と圧制を受ける人々に対し「諦めるな」と本論は激励。民主主義がまだ部分的には現存する状況下に於いて、巻き返しは可能と見解する一方、人々が陥り易い罠は「トランプ政治の現状追認」と「運命だと諦観する姿勢」で、これらこそが大敵と戒める。

(補足)

1) 民主主義と不完全な独裁との鬩ぎ合いは長期戦を予想(今後10年続く)。

2) 巻き返しに際し、必要な心構えは「専制に直面する現実」を自覚しつつ「民主的対抗策が開かれている事実」を複眼視することだ、と。

(3)『西欧陣営に残された最後の機会 ~手遅れになる前に新たな世界秩序を築く方法の提言~』著者:アレクサンデル・ストゥブ(フィンランド大統領)

(『The West’s Last Chance  ~How to Build a New Global Order Before It’s Too Late~』原書P104-116)

 北欧の小国フィンランド大統領から骨のある提言だ(人口僅か6百万人未満、NATO加盟国)。現在、地球は、西世界、東世界、そして南世界(グローバルサウス)に三分され、三角関係の綱引きが展開する中、同国を含む小国や中規模新興国がゲームの行方を握る、との認識に立つ。彼が訴えるのは、国連改革に関する具体提言だ。即ち、常任理事国のメンバー枠拡大に関し、亜細亜に+1枠増、アフリカに+2枠増、南米に+1枠増、更に、拒否権の禁止と常任理事国による違反行為への罰則規定を求める。

 小国の戯言と無視するのは容易い。が、世界秩序の危機に際し、敢然と正論を述べる姿勢は高く評価すべきだ。更に、彼国は果たして小国か? 成る程、日本国は20倍の人口と、13倍の GDP規模を誇るが、一人当たりGDPを見れば彼国は我が国よりも1.7倍多いのだ(それぞれ約5万ドルと3万ドル)。 

と云うことは、今の日本の政治家達は、1億2千万人の勤勉な国民を擁しながら、フィンランドより国民を貧しくし、フィンランド程の世界秩序に対する物言いも出来ない。この現実に、日本国民は総員、穴があれば入りたい程、深く恥じ入るしかない。要は、両国に於ける政治指導者の知能指数の差が此処に歴然と現れていると見るべきだ。

(補足)

1)フィンランドは大戦後に独立を果たすが、ソ連へ領土の10%失い、冷戦時は保身の為ソ連に日和ったことを反省点とする。

2)時局認識:世界は今や「秩序重視の多国間主義」と「権力国家を中心とする多軸主義」との対立と見做す。

3)守られるべき根本理念:主権、国土、武力非行使、人権・自由、そして違反者への罰則

(4)『南米に生じた右傾化革命 ~トランプ時代に南米再構築を推進する力~』

著者:ブライアン・ウィンター

(『Latin America’s Revolution of the Right ~The Forces Remaking the Region in the Age of Trump~』原書P128-141)

 南米専門に取材する季刊誌『アメリカス・クオーターリー』編集長による寄稿。トランプ政権への賛否からは距離を置き、同政権の影響下に変遷を遂げつつある南米を冷静に分析。20数年同地域を観測し続けた者ならではの筆致で、一読に値する。

 同大陸をイデオロギー分類で俯瞰。エルサルバドルとアルゼンチンの右派政権はトランプと現在関係良好だ。但し、現状、右翼の影は未だ薄く、左翼の主力3国(キューバ、ニカラグア、ベネズエラ)が存在感を示し、それ以外は実はハイブリット複合型(独裁ではないが民主でもない)にグアテマラ、メキシコ、及び冒頭のエルサルバドルが属する。但し、キューバとベネズエラに於ける社会主義の破綻状況が人々を落胆させた結果、右翼を容認する傾向が増加。両国からの難民流入が、チリ、コロンビア、及びペルーで反移民を訴える右派を増長させ、更に、麻薬問題の拡大(生産量増加と仕向け地の拡散)により、反難民、反麻薬を公約に掲げ、治安重視をアピールする右派政権が市民から支持を受けるようになった。(エルサルバドルのブケレ政権の高い人気はこの典型)。今般の右傾化の流れは、果たして1960年台キューバの赤化がもたらした南米共産革命に匹敵する大きな勢いとなるや否や、今後注目を要する、と筆者は見解。

(補足)

1)右傾化を裏付ける世論:南米18ケ国アンケート調査で20年来最も右派を肯定する人々が増加。エルサルバドルのブケレ人気が高い一方、ベネズエラのマデュロ大統領は超不人気。

2)南米コカイン密輸形態の変化:嘗て、ニューヨーク、ロンドン、ベルリンの成金達の嗜好品として南米から北上ルートを主流としたが、今や、麻薬仕向け地と物量は全方位へ激増(コカイン消費地内訳:北米27%, 欧州24%, 南米・カリブ20%, 亜細亜14%, アフリカ13%)。 

3)宗教にも右傾化の影響。カトリック教国ブラジルに、昨今保守的な福音派が勢力拡大し摩擦と対立激化(中絶問題、等)。

4)その政治手腕に於いて訳者が注目する南米の指導者が幾人かいる。チェーンソーをぶん回す派手なパーフォーマーで有名な、アルゼンチンのミレイ大統領は、その見掛けに依らず、経済応用数学を駆使する学者で、理にかなった経済政策で同国のインフレを鎮静化させた実績は国際的に定評がある。また、エルサルバドルのブケレ大統領は、ギャング退治で治安回復し国民の信を得て、大統領の任期2期目を疾走中。メキシコのシェインバウム大統領(同国初の女性元首)は、昨年トランプ大統領の威圧的な交渉に臆せず渡り合う姿勢が評価された。彼らの共通項は何れも頭脳明晰で且つ実際の成果を国民に示した点だ(奇しくも3人ともユダヤ系)。

<佳作 3篇>
冒頭紹介した3論稿と同趣旨だが、以下の3論も注目に値。

(5)『米国が抜けた後の同盟 ~各国はプランBを用意せよ~』

著者:フィリップ・H.ゴードン(ブルッキングス研究所研究員。バイデン政権下に副大統領補佐官で国家安全保障担当)、他共著。

(『The Allies After America ~In Search of Plan B~』原書P142-153)

 先の民主党政権運営に参画した2名からの提言。

 トランプにゴマをすって当座を凌げると思うのは間違いだ。国際的善に対する負担を拒絶する同政権が、今後も世界への長期的脅威となり得ると認識すべきである。論稿は、トランプの信条と陣営要人のルビオやバンスが如何に軽薄であるか、具体諸事例を指摘(要は中国や露西亜の大国を意識する一方、自身は力により小国を圧迫するのを是とする思想)。

 軍事的安全保障と国際経済の枠組みから今や米国が離脱して行く中、各国は「“プランB”を用意せよ」と論稿は訴える。短期での急シフトは無理でも長期的に備えよ、と。

(備考)

1)トランプの脅しに、EU、英国、中東、日・韓は皆屈した(日本の高市首相がトランプはノーベル平和賞に値すると見え透いたゴマスリした一件にも言及あり)。

2)機嫌取りと投資約束は一時凌ぎに過ぎぬと認識すべし。

3)「米国と欧州の運命は別個だ」との独逸メルツ首相発言を引用。欧州の核共有、韓国及び日本でも各国核戦力議論開始の機運を指摘。

(6)『非自由主義が蔓延る国際情勢 ~独裁主義国家間協力が国際秩序に影響を及ぼす~』

著者:ニック・チーズマン(英バーミンガム大学教授)、他共著

(『The Illiberal International  ~Authoritarian Cooperation Is Reshaping the Global Order~』P46-57) 

 「民主主義は今や“絶滅危惧種”だ」との著者ら指摘は目を引く。続いて、統計的裏付けが示される。この四半世紀で45ケ国が独裁化(一方、独裁後、民主復帰の事例なし)。マクロ視すると、今や独裁国家は、世界の全人口とGDPで、それぞれ70%と46%を占める(人口大国の印度と中国が含まれる為、これはうなずける数字だ。但し、将来、更に米国も仲間入りすれば恐ろしい事態である)。背景には、枢軸の独裁諸国が連携し勢力を拡大した影響がある。その証左は、独裁国家同士の会合実績件数は、年間4万5千件に上り(2024年)、更に、独裁国家が設立した諸機構が活発化した(露西亜の音頭取りで、反民主同盟OSTO発足、国連の弱体化を招いた、等)。

 対策として、規範順守を求める諸国による民主連合ネットワーク強化を提言、その望ましい実例として、EUが「民主主義の盾(Democracy Shield initiative)」を創設し、又、チリの主催した「民主主義を守る会(Democracia Siempre)」首脳会議(ブラジル、コロンビア、スペイン、及びウルグアイが出席)は一歩前進と評価。

(補足)

1)中国の動き:“非リベラル研修”をアフリカ諸国へ実施(ナミビア、南ア、タンザニア)。

2)米国実業界の動き:イーロン・マスクは露骨に非リベラル勢力を支援。

3)独裁者同士のコネクションが相互延命に寄与する。

4)最早、存在しないルールに沿ってゲームを進めるのは愚で滑稽だ。そうなる前に行動が必要。

偽情報防止、メタやXによる不当影響力の排除努力、民主派フリージャーナリストへの資金供与強化。加えて、汚職・反マネーロンダリング取り締まり、及び民主主義を支持する仲間拡大。

 当月号表紙のサブタイトルは「独裁者達の権力分析」と冠され、これはステファン・コトキンによる次の投稿論文の主題で、同論が当月の巻頭を飾っている。

(7)『独裁者達の持つ弱点 ~彼らを脅かすものは何か~』

著者:ステファン・コトキン(フーバー研究所上席研究員)

(原書『The Weakness of the Strongmen ~What Really Threatens Authoritarians~』P8-29)

 本稿は、独裁化を進めるトランプ政権を止める可能性に就いて考察する。

 筆者は独裁政権の持つ特性を五つに分類。即ち、内部組織を強力に支配する、圧倒的な集金システムを掌握する、神話性(政権に箔をつける)を備える、国民生活を支配する、そして、地政学環境を利用すること(国際自由市場に参入を許された中国がお人好しの日本から基幹技術を無料で徹底吸収した件が、その典型として例示される)だ。

 これらに照らし、トランプは上述5つのどの観点からも、独裁者として盤石な基盤を未だ持たないと筆者は見解。(典型独裁国家と異なり、米国の主要資金源は国民からの税収である。更に、任期が有限で今年にはレームダック化し、権力弱体化は免れ得ない。唯一、地政学上、覇権的な中国の存在は米国の独裁化を促す要因だが、その影響は限定的とみる)

 その上で、“米国政治の劣化”こそが問題の根源であり、民主化維持の努力が必要、とする。加え、トランプの出現は寧ろ必然で、これ迄の共和・民主の両政権が共に、米国の動員可能な資源を上回り、過剰な政策コミットを追求した結果である、と。民主主義維持の努力を怠れば、独裁諸政権がのさばる。露西亜の武力侵攻に対し、戦うウクライナ国民を筆者は賞賛。そして、世界の諸対立に於いて米国が果たすべき役割とは、実際に戦火を交えるのではなく、あらゆる策を講じ“冷戦“(嘗ての米ソ対立の如く)に止めることだと強調。

 スターリン研究者でもある、彼の次の言葉は一定の重みをもつであろう。曰く「独裁者は何時か死ぬ。権者交代に際する権力持続が最も難題であり、内部からの裏切りが往々に生じる」と。

(訳者補注):コトキンによる権力構造分析の視点は見るべきものがあるが、訳者が兼ねてより指摘して来た通り、同氏は殊、大戦中の我が国の歴史事象に歪んだ偏見を持つ男で、この点日本のメディア(特に読売新聞)が完全沈黙している点は問題と云わざるを得ない。

 上記に紹介した7編を含み、当月号は11篇の論稿を掲載(末尾一覧をご参照)。又、興味深い論稿に就いては、幾編かを選定し別途逐語訳を掲載する予定です。 

【訳者所感】 日本マスメディアの臨終

 世界情勢が際どく大転換する最中、無用な政治空白を生む今般の衆議院解散は如何にもまずい。勝手気儘な高市首相の振る舞いは、メディアによるチェックと牽制が有効でない証だ。政権発足以来、寧ろ、総じてメディアは同政権に迎合し、これが首相の増長を許したのだった。

 高市首相は先を見通す能力を欠き場当たり的な対応に終始する習性を持つ。これが短期の内に三度迄も実証された。先ず、公明党離脱、続いて、台湾有事発言が中国に与える影響、そして今回の公明と立憲民主との統合、これらの事態は、何れも事前のシナリオ分析で吟味想定された形跡が皆無で、事が起きてから豆鉄砲をくらったように慌てて事後対処に終始する繰り返しだ。表向きの発言は勇ましくとも、全てが無策後手なのだ。

 今回の衆院選の争点に、肝心な問題がフォーカスされていない。小手先で一時凌ぎな所得補填や減税ではなく、本来論ぜられるべきは「日本が超債務大国に堕した現状を踏まえた上で、財政健全化への道筋」である筈だ。円安・物価高は必然の結果に過ぎず、寧ろ対処すべきは、その原因たる「政府と日銀の癒着と放漫財政」の解消なのだ。

 国民の主食が2年余りに2.5倍値上がりする事態に唯々諾々と服する人民は、世界広しと雖(いえど)も日本くらいだろう。訳者の近所のスーパーでは、どれも高値の札がついた各産地の米袋が並ぶ棚の前を、2,3遍、行きつ戻りつし、結局買わずにうなだれて売り場を後にするシニア達の姿が後を絶たない。日本国民の辛抱強さが、政治家やメディアに露出する識者達に利用されている。懐の豊かな彼らは、米代が2倍や3倍になろうが全く腹は痛まないのだ。

古語に曰く「人民に仁政の恩恵が至らぬ時、古の施政者は、恰も自らの手で押し転がし、彼らを谷底に突き落とした如くに感じ、その重責に当たった」と(孟子)。これに照らし、我が国歴代の農林相の無策無能ぶりには開いた口も塞がらぬ(坂本、江藤、鈴木各大臣)。

 維新の会は、自己都合による部分最適のみを追求する商人党だ。要は国民の税金を使って、自分たちの大阪だけを豊かにするのが狙いだ。不要不急の万博イベントに国庫金を盛大に使い、カジノ場へのインフラ整備を国費でちゃっかり始末した。その上、“身を切る改革”なる上辺のスローガンとは裏腹に、幹部も含め多くの党員が金に汚いことが露呈した。彼らは古の諺「根性の腐った商人に身を窶(やつ)すくらいなら、谷底に転がり落ちて死んだ方がましだ」(菜根譚)を噛みしめるべきだろう。 それにも関わらず、2030年にはカジノリゾートが万博跡地に開業する。事程、日本人は忘れるのが得意だ。カジノと云えば、ほんの2年前、水原一平問題で、日本の至宝たる大谷翔平がメジャーリーガー生命を絶たれる寸前に追い込まれたばかりではないか。維新によるカジノ場は、今後、何万人の水原一平を生み出し、何十人かの大谷翔平選手を葬るだろう。

 山上被告の判決が出た。「無期懲役」、結構なことだ。一方、統一教会問題に関し国民による政治的総括は結審していない。金銭を搾取し苦しめ、資金を国外へ移した同教会が、自死に追い込んだ日本国民の数は、未遂も含めば三桁に近いだろう。斯かる反社会組織と知りつつ、選挙に於いてその助力を借りて一票でも獲得した議員は、本来、政界永久追放に値するのではないか? 安倍元首相は同教会を集票マシンとして利用したことは真実だ。「死んでしまったからもう御仕舞」というのはメディアの悪い癖だ。自民党は国葬費を国庫に返納すべきだろう。又、高市首相も韓国大統領とドラム叩きに興じている場合ではない。在韓の同教会白亜の殿堂建設に流れた資金を取り戻すのが首相の仕事だ。

 高市首相が若者から圧倒的に支持されるのは、過去十数年に亘り自民党政権の問題をメディアがしっかり総括して来なかったことに原因がある。歴代首相、即ち、安倍氏(アベノミクスの弊害、政権と統一教会癒着)、菅氏(学会とメディア抑圧)、岸田氏(株式市場高値操作)の諸問題だ。この間、「社会正義」に対しメディアが生ぬるい姿勢と報道を繰り返す中で、若者達は青年期を成長し、或いは社会に参加したのだ。ジャニー北川の性加害容認問題、中居正弘性暴力事件も、同根だ。彼らは大人が手本を示さぬ限り、何が正義かを知る由もないのだ。

メディアに対し「孔子様の如き聖人」たれと云うつもりはない。但し、孔子が「春秋」を執筆した如く、「徳政の実績を上げた者を誉め、暴虐、殺人した君主を謗る」ことで施政者達が襟を正さずを得なくなった、と云う役目丈は果たしてもらいたいものだ。

 「働いて、働いて、」のフレーズは昨年末の流行語大賞に選出されが、知性も品位の欠片をも感ぜられない言葉だ。一体どれだけの人々が共感し得たのか(労働は正しい方向に投入してこそ有効で、誤った針路を爆走すれば寧ろ被害甚大だ)。

 思えば昨年は、伊東市長(学歴詐称)、前橋市長(ラブホテル内身上相談事件)、そこに止めの高市首相(軽率な台湾有事発言)と来れば、これはどう考えても大賞は「女の浅知恵」以外他になかったであろう。メディアが本来為すべき批判を封印し、資質を欠く首相の肩を挙って持って追従したこの一件は、訳者には日本メディアの臨終を知らせる弔鐘と聞こえた。

*訳者注:訳者は女性蔑視者ではない。「男のクソ度胸、女の浅知恵」なる、愚かな男女の特徴を対比した古来からの云い習わしを引用したに過ぎない。訳者が最も尊敬する人類は、マザー・テレサと環境家のグレタ嬢、二人の女性である。

(了)

文責:日向陸生

【当月号掲載論文一覧】

(1)『西欧の敗退 ~欧州大陸はトランプの罠を脱せられるか?~』

(『How Europe Lost ~Can the Continent Escape Its Trump Trap?~』(原書P154-165)

著者/肩書:  マティアス・マティス/ジョンズ・ホプキンズ大学院教授、他共著

(2)『米国独裁主義の代償 ~民主主義後退の巻き返しは可能か?~』

(『The Price of American Authoritarianism ~What Can Reverse Democratic Decline?~』原書P30-43)

著者/肩書:スティブン・レヴィツキー/ハーバード大学教授、 他共著

(3)『西欧陣営に残された最後の機会 ~手遅れになる前に新たな世界秩序を築く方法の提言~』(『The West’s Last Chance  ~How to Build a New Global Order Before It’s Too Late~』原書P104-116)

著者/肩書:アレクサンデル・ストゥーブ/ フィンランド大統領

(4)『南米に生じた右傾化革命 ~トランプ時代に南米再構築を推進する力~』(『Latin America’s Revolution of the Right ~The Forces Remaking the Region in the Age of Trump~』原書P128-141)

著者/肩書:ブライアン・ウィンター/ 南米専門季刊誌『アメリカス・クオーターリー』編集長

(5)『米国が抜けた後の同盟 ~各国はプランBを用意せよ~』

(『The Allies After America ~In Search of Plan B~』P142-153)

著者/肩書:フィリップ・H.ゴードン/ ブルッキングス研究所研究員、バイデン政権下に副大統領補佐官(国家安全保障担当)勤務、 他共著

(6)『非自由主義が蔓延る国際情勢 ~独裁主義国家間協力が国際秩序に影響を及ぼす~』 (『The Illiberal International  ~Authoritarian Cooperation Is Reshaping the Global Order~』原書P46-57) 

著者/肩書:ニック・チーズマン/英バーミンガム大学教授、 他共著

(7)『独裁者達の持つ弱点 ~彼らを脅かすものは何か~』(原書『The Weakness of the Strongmen ~What Really Threatens Authoritarians~』原書P8-29)

著者尾肩書:ステファン・コトキン / フーバー研究所上席研究員

(8)『中国が将来勝ちを収める為の諸策とは~新領域での権力獲得戦略~』(原書『How China Wins the Future ~Beijing’s Strategy to Seize the New Frontiers of Power~』原書P58-73)

著者/肩書:エリザベス・エコノミー/フーバー研究所上席研究員(バイデン政権下に商務省中国担当顧問)

(9)『長引く中国との経済戦争 ~無期限の競争に備え、北京政府が用意した強力な武器~』(原書『China’s Long Economic War ~How Beijing Builds Leverage for Indefinite Competition~』原書P74-87)

著者/肩書:Zongyuan Zoe Liu/ 外交問題評議会上席研究員

(10)『イスラエルを特別扱いするのは止めよ~米国外交策への新たな展開の提言~』(原書『The End of the Israel Exception ~A New Paradigm for American Policy~』原書P88-103)

著者/肩書:アンドリュー・P.ミラー/シンクタンク・米国進歩センター研究員。バイデン政権下に国務省副次官補勤務。

(11)『多重提携の進む世界に生き残る方法 ~印度が進める多様化戦略とは~』(原書『How to Survive in a Multialigned World ~The Indian Way of Strategic Diversification~』原書P117-127)

著者/肩書:タンヴィ・マダン/ブルッキングス研究所上席研究員

以上11本。

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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