【投稿論文】『陸と海の地政学 ~大陸勢力と海洋勢力、そして新国際秩序を生む戦い~』 (原典:『By Land or by Sea ~Continental Power, Maritime Power, and Fight for a New Order~』By S.C.M. PAINE, Foreign Affairs 2025年September/October号、P160-171)

著者/肩書:S.C.Mペイン / 米国海軍大学教授

(第一章 論稿主旨)

 大国間競合が、今や再び国際関係の中枢を占める。然し、今日の国家間争いの核心に関し、正確にその輪郭を掴んでいるかと云えば、諸説未だ定まらない。即ち、一部識者達は、冷戦時代から受け継がれた思想的な慣習によるものだと主張する。一方、他の論者は、軍事力の均衡変化に注目。将又(はたまた)、ある者達は、指導者そのものに迫り彼らの方針選択に原因を求める。

然し、現代の国際制度に関する諸紛争の起源は、苟(いやしく)も意識されることは少ないものの、現実には、その歴史の底流に存在する、「国家の権力と繁栄の源泉を巡る論争」に辿り着く。この諍(いさか)いは地理的要因に端を発し、此処(ここ)に対照的な二種の国際観念が見えて来る。即ち、「大陸型」と「海洋型」だ。

 大陸の世界では、国力を測る基準が“領土”だ。多くの国々は、地理的に内陸に位置し、数多くの隣国と国境を接した「大陸の世界」の住人だ。これら隣国の国同士は、お互いが歴史的に主要な敵対勢力に位置した。中国や露西亜と云った、当時の大陸覇者達は、他国を征服するに十分な国力を有し、「国際制度とは覇権国が影響を振う広大な領域毎に分割し適用される」と信じた。彼らは、国境防備の為に資源を軍備に注ぐ一方、侵攻を画し隣国に対し“富を破壊する戦争”の脅威を与え、国内には独裁支配を強化し、民需より国防を優先させる。この行き着く処は、凶悪の連鎖だ。つまり、独裁者が自身の抑圧策を正当化し王座を保持すべく、強大な敵国の存在を寧ろ求め、それに伴う安全保障上の脅威を醸成し、国家を戦争へと一層導くのだ。

 その反対に、海に囲まれた国家は相対的に侵略される危険が少ない。従い、彼らは、隣国に戦争を仕掛けるよりは、富の蓄積に励む。これら「海洋型」国家は領土でなく、お金を重要視する。彼らは、国防費と民間需要との予算相克を最小限に管理しつつ、国際貿易と産業力を以って国内繫栄を促進する。

「大陸型」覇権者達が引き寄せられるのは、勝者が敗者から“全取り”し終結する“有限”ゲーム戦略(敗者には壊滅的打撃)であるのに対し、「海洋型」秩序に属する人々が選好するのは、富の蓄積が止まない“無限”ゲームだ(この場合相互共に有益な取引が行われる)。彼らは、隣国を敵でなく、貿易仲間と見做すのだ。

 抑々(そもそも)、「海洋型」世界観の起源は、古代アテネ時代に遡り、海岸周辺に立地した彼らの帝国の繁栄は、沿岸貿易による富の蓄積により支えられた。斯かる国家は、海洋を社会共有の資産と見做すことで、万人の利用と安全な交易を可能とした。国際法の父と呼ばれる、フーゴ―・ゴルティウスが、当時の貿易帝国、和蘭(オランダ)共和国出身であるのは偶然ではない。

そして第二次世界大戦以降、商業を重視した諸国は、各々の域内に於いて、或いは世界規模で諸機構を設立し貿易を振興し、取引費用を極小化しつつ富を増殖させた。

彼らは貿易が支障なく遍く行われるよう、沿岸警備隊や海軍を組織し海賊行為を廃絶した。此処から生まれたのが、海洋型でルールに基づく秩序で、それは進化を遂げつつ、数十カ国のメンバーが互いにこれら諸規範遵守の体制を確立した結果、彼ら全員が洩れなくその守護の恩恵に浴した。

 今日の競争は、正に大陸型と海洋型の闘争による相互作用の最新版なのだ。第二次大戦以来、米国戦略は常に「海洋型勢力」の位置取りを反映して来た。即ち、経済構造上、貿易と商活動を維持することに国益を見出した。加え、その地形と国力に恵まれたお陰で、他諸国の主権を敢えて犯す必要もなかったのだ。これに対し、中国、北朝鮮、及び露西亜が、規範に基づく秩序を崩そうと目論む理由は、これら諸国の指導者達が、社会の一層の自由化は自国ルールと治安の枠組みを損ない、彼らの生存すら脅かす脅威と考えるからだ。

 米国がこの度、二度目の冷戦で勝者になる可能性は十分にあるが、その為には先の冷戦当時を思い起こし、「海洋型」勢力としての良好なる戦略を守り抜くことが大前提だ。もし、これに反し米国が嘗ての「大陸主義」規範に先祖返りする――障壁を設け、隣国諸国を脅し上げ、そして国際諸機関を葬る――場合には、恐らく冷戦に勝利は得られない。そして、その節には更に、米国は最早、挽回を試みるのが復不可な事態に至るだろう。

(第一章 翻訳了)

文責:日向陸生

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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