著者:マリアナ・マッツカート (MARIANA MAZZUCATO)
肩書:英ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教授。G20の気候変動への国際対策検討作業部会に対し助言する専門家集団共同議長を務める。
『課題解決型経済への移行提言 ~変貌する資本主義下の難題克服法(至難の月面着陸計画の如く、人類が再度成功する為に)~』の著者。(原題:Mission Economy ~A Moonshot Guide to Changing Capitalism~、2021年出版)
(第一章 論稿主旨)
ドナルド・トランプが二期目の大統領に選出された背景は、国民の経済的不平に多く関係する。非常に奇妙なことに、民主党大統領候補が、最貧層の票を上回る得票を、最も裕福な米国人層から得ると云う事態が生じたのは、この数十年間で初のことだった。
2020年の大統領選では、年間所得5万ドル以下の家計は、大半が民主党のジョー・バイデンを選択した。処(ところ)が、2024年に彼らは、寧ろ共和党のトランプを選好し、その一方で、年間所得が10万ドル以上の人々は、今般、トランプよりカマラ・ハリスに投票する傾向があったのだ。
民主党が労働者層からの支持を失ったのは、共和、民主両党の大統領政権下に増長された、経済システムに対し、彼らが大きな幻滅を感じたからだ。つまり、極(ごく)一握りの最頂点の人々に富を集中させ、金融業界の成長を、それ以外の経済部門を犠牲にして行い、一般人を負債の連鎖に陥れ、何百万人もの米国人の暮らしを悪化させたのだった。
経済復興に関しトランプが約束した諸事は、真実の問題を突いて、それを利用しようと図ったものだが、一方、彼が提供する具体的解決諸策は皆、見当違いだ。彼が進める諸政策を以ってしては、抑々(そもそも)民衆の怒涛の怒りを生み、彼に勝利を齎(もたら)した、その不評判な経済モデルを変革することは不可能だ。彼が提案する関税強化は、物価を上昇させ、結局、米国労働者層は殆ど利益を得ないだろう。更に、同政権が、もし公共部門の劇的削減をその計画通り実施すれば、米国政府は今後数年間に亘り、重要諸案件を実行する能力が著しく損なわれる。そして、彼の重商主義政策は、海外経済の不安定化を煽り、これ迄発揮してきた米国の経済主導力を縮小させる。
然し、米国で経済保護主義が復活しても、「世界のより包括的で持続的な成長実現」を追求する国際的努力が終わったことを必ずしも意味しない。何故なら、実際に、ブラジル、南アフリカ、そして英国と云った国々は、既に自国に於ける経済課題に対し意欲的な取り組み計画と共に、国際諸機関をより平等で有効化する為の多くの提言を実験中なのだ。
国際社会から後退して行く米国は、これら改革に向け尽力する立場には最早恐らくない。然し、米国の不在が、却って其処(そこ)に空間を生み、他諸国にとっては、それを埋める機会でもあるのだ。こうして、新しい諸発想がよく聞き届けられ、新しい貿易諸関係が出現し、そして斯かる新しい勢力の動態作用によって、より裾野の広い変革を進める推進力を生み出す契機になり得るだろう。
これから来(きた)る「国際秩序が再調整を余儀なくされる局面」が、果たして世界を、より平等で持続可能な将来に誘導出来るかは保証の限りではない。それを可能とする為には、諸政府が勇気をもって大胆な一歩を踏み出す覚悟が必要だ。そして、目指すべき経済システムとは、必要とする資金調達が可能で、公正な国際貿易が行われるよう統制され、環境負荷を低減させるグリーン産業に投資をする、全ての国々が国際支援を得て、その成長による便宜を享受出来る体制だ。
就いては、諸政権は、トランプに敗北したことから正しく学ばねばならない。即ち、現在の経済モデルが破綻しつつある中、バイデンとハリスが提言した如くのチマチマした漸増的諸策で最早これを救済するのは不可能、と云うことだ。当然、その答えは、トランプが提唱する保護主義者の諸策の中にもない。
変革的大転換を始動するには、全く新たな構想が必要だ。それは、即ち「人々の暮らしと地球の環境を最優先に据える思想に立脚すること」であると私は考える。
(了)
次章以下の翻訳は順次掲載予定
(*訳者注:著者は、これ迄、母国英国のみならず、ブラジル、南アの産業政策提言・策定作業に関わった実績を持つ。)
文責:日向陸生
*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。
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