【Foreign Affairs 2020 JUL/AUG 社説】    感染蔓延後の世界 The world after the pandemic (原文 巻頭 P9)

15年前、SARSと鳥インフルエンザ(H5N1)が蔓延した際に、本誌は“次の感染拡大に備える”という記事を載せた。その僅か2年後には“感染拡大への不十分な備え”という記事発表、その後にまた別の記事数本を伝えてきた。MERS、エボラ、そしてジカ熱の発生があった後、2017年に移って今度は次の記事。即ち、“世界的感染拡大への備えはあるのか?トランプ政権は著しく準備を欠いている可能性がある“を掲載した。

これらは、そのどれ一つを取っても決して予見記事ではなく、寧ろ、公共の健康問題に関する専門家達の間での通常の知恵に類するものである。従って、もしこれらの危険を理解しなかった人々がいたとすると、それは、彼らが単に注意を払わなかったことが原因なのだ。

今回の対応が如何にお粗末であったかということに就いては、このような凶事到来の預言を仕事とすると云われる(ギリシャ神話の)カサンドラ達ですら、それを見たらあきれて衝撃を受けたであろうレベルであるということを、今月特集記事は説明する。

ミカエル・オスターホルムとマーク・オルシェイカーは、備えに失敗したことに続いて、更に蔓延の封じ込めにも失敗した経緯を辿る。世界的感染症との闘いに関し、1918年から一世紀以上を経た現在に於いて、我々は自分達の祖父の世代から僅かにしか進歩していなかったのだ。即ち、進歩する為の道のりは遥か遠いと言わざるを得まい。

フランシス・フクヤマ曰く、緊急事態の初期段階は、政治に対する、ある意味、過酷なストレステストと位置付けられ、しかも政治能力が高く、社会的信用と有効なリーダーシップとを合わせ持つ、ほんの一握りの国々だけが今回合格することができたと主張。更に、今後数年間は、世界中でより多くの失敗と政治的不安定(乱気流)が生じると彼は予想する。何故ならば、各国が長く辛い前途を乗り切るには、先述した資質が必要となる一方、これら資質を十分に備えている国は稀だからである。

ダニエル・アレンは、米国の初期対応が損なわれた理由を、単に貧弱なリーダーシップと連邦制の弱点に帰すのではなく、社会的な共通目標を欠いていたことも一因と主張。そして、スチュアート・パトリックは、同様の傾向は国際レベルで生じていることを分析、世界中が我先にと、封鎖、自国救助、及び身代わりに責任転嫁を求める方向へ殺到し、多国間主義から離れつつあることに警鐘を鳴らす。

実績を維持できない政治家達は、国民の注意をそらし、恐ろしくて、悪魔のような外国人に向かうよう手を尽くし、その結果、真の元凶はグローバリズムに在り、という、最近登場した考えに更に拍車をかける事態が次から次へと国々で生じた。彼ら曰く、自国以外の国との繋がりを断つことが、脆弱性を減じる為の唯一の方法であると、それは恰も北朝鮮が“自己依存”こそが21世紀に有望となる理想形態なりと提唱するに似たるが始末である。

事実は、繋がりが我々を滅ぼすのではない。協力なき繋がりが滅ぼすのである。そして、解決策は孤立ではなく、寧ろより深い繋がり、即ち、集団的行動を支援する種の繋がりである。世界の医者や科学者達は孤立とは異なる行動を取った。即ち、お互いが意思疎通し、才能と資源をプールすることによって、新の国際的コミュニティーとは如何なるものかを身を以って示したのだ。一方、恐らくそれが原因で、多くの政治家によって医師や科学者の言論を封じようと試みる動きが見られたのは由々しき事である。

                           ギデオン・ローズ 編集長

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