【社説】米国撤収後の中東秩序模索~米国政策変容下に於ける当地域諸国の新たな脅威と機会~In Search of a Post-American Order~Amid changes in U.S. Policy, regional powers are confronting new risks and finding new opportunityes~(原典:Foreign Affairs 2022 March/April号 P8)

 9/11テロ襲撃と米国によるイラク侵攻の後、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、米国の「エネルギー確保の必要と理想主義」に後押しされ、「中東に自由を推進する戦略」を表明した。その数年後、バラック・オバマ大統領は、米国の希望に満ちた中東政策を「新たに開始」すると宣言、後にアラブの春が生じると「この地が数十年に亘り現状に甘んじた末、遂に世界の本来あるべき姿を追求する好機が到来した」と激賞したのだった。処(ところ)が、間もなく、その壮大な宣言は厳しい現実にぶつかり、以来、米国の政治家達は、事態を更に悪化さぬよう、これ迄の約束事を撤回すべく先を争って動く状況に追い込まれたのだった。

 F.グレゴリー・ゴースは「民主党か共和党かその政権を問わず、ワシントン政府は建国よりも諸国家の破壊に秀でる点が証明された」と手厳しい。「彼(か)の地で血を流し乍ら、極度に欠陥ある諸体制と付き合う行為は、時として単にその無秩序な危険度を確認する作業の意味しか持たぬ」事を認め、米国は中東に於ける存在を縮小させるべきと云うのが彼の主張だ。又、アマネイ・ジャマルとマイケル・ロビンスは、民主化工程が影響力を失った点で一致した見解を有するが、数年間に亘る世論調査の分析から、中東に住む人々が必死に渇望して止まなかった経済的変容が、民主主義によっては生み出されなかったのがその原因となっており、更に、多くの人々が今や見習うべき典型とし、米国ではなく中国に目を向けるようになった点を見出した。

 一方、米国の対外政策が変化する中、当地域諸国家は新たな諸危険に立ち向うと同時に新しい諸機会も見出せる。キャーリム・サージャドプールは、イランの場合には、譬え国内が甚大な弱体化を被る事を代償としても、短期的に域内で支配権を握る戦略を追求したと見解する。マイケル・シンはアブラハム協定及びアラブとイスラエル国交正常化の波のうねりが「劇的な中東秩序の再構築を予告するもの」と見る。又、マルワ・ダウディーは、同域諸国が、気候変動を武器とし、短期的利益を犠牲にしても、資源の希少性を如何に最大限利用出来るかを考察する。

 最後に、マーク・リンチは、当地域に於いては、ある根本的問題の修繕に着手するのが、より賢明な策であると主張。即ち、従来政策は時代遅れの地図に等しく、先ずこれを改めるのだ。彼は論稿に警鐘し曰く、米国の学者や政治家達は、これ迄、中東と云うある定義に固執を続け、その結果「実際に同地域を形造る動態に相応しい米国戦略を洞察する目を暗からしめるに止まらず、更に悪い事に、ワシントン政府は同地で繰り返した悲劇的なしくじりを、尚も又惹き起こす虞すらあるのだ」と。          

編集長 ダニエル・カーツ・フェラン

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