【社説】米国は回復可能か? (“CAN AMERICA RECOVER ?” 原本 Foreign Affairs Jan/Feb 2021 巻頭P8)

 危機の後には何が来るのか? 米国を、“以前より、更に良く再構築”する事は本当に出来るだろうか?そして、国家刷新の可能性に就いて、歴史は何を語るだろうか?

 今回特集、最初の記事は、急進的な実験提案だ。政権運営は人格と能力を以ってせよ。サマンサ・パワーの論説は、ジョー・バイデン新政権チームは、コロナウィルス感染拡大を抑え、汚職を摘発し、国際社会へ参画再開することによって、法的正当性と国民の尊敬を得られるとする。ジェイソン・ファーマンが提案するのは、失業者達を救済する緊急諸策と、それに続く経済回復を持続させる為の、広範に及ぶ構造諸改革の二段階式刺激策実施を提言する。又、ジェニファー・ヌッツオは、将来の悲劇を回避する為に、国際的健康安全保障は如何に再考されるべきかを示す。

 残りの記事は、何れも過去から教訓を模索する。構造的人種差別、不平等、経済危機、退行する民主主義、に我々が対処すべく、過去の国家的試みを探求していく。デイヴィッド・ブライトは、南北戦争と再建に就いて。ゼファー・ティアショウトは、大好況時代と進歩主義に就いて。メグ・ジェイコブスは大恐慌とニューディール政策について。そして、ジョーン・ローレンスはウォーターゲート事件とそれに続いた諸改革に就いて記述した。筆者全員に共通する見解がある。それは、進歩は可能だが、常に緩慢で、勝ち難く、勝利は部分的なもので、決着の付かぬ闘争が次世代迄受け継がれるという事だ。

 思えば70年前も、米国は困難の最中にあった。現在同様、ワシントン政府は、大衆主義者による煽動行為の流行に捕らわれ、当時、ウィスコンシン州上院議員ジョセフ・マッカーシーが、陰の(共産主義者)政府による陰謀諸説を大声で喚(わめ)き立てていた。一方、中国も躍進中で、当時、文字通り国連軍を泥塗れにし押し戻し、朝鮮半島から恐らくは追い落としてしまう勢いだったのだ。ところが、1950年12月末、米国第八陸軍指揮官の将軍が交通事故死し、そこから歴史は急回転したのだ。

 後任指揮官マシュ―・リッジウェイは、朝鮮の軍事状況が悲惨なものと悟ったが、尚も救出可能だと考えた。彼は、専門軍人に相応しい熟達した基準を組織内に回復し、部隊将校人事を刷新し、低迷した士気を立て直し、兵士達に目的意識を植え込んだ。これらは奏功し、数か月の内に、彼の軍勢は敵を押し戻し、膠着状態へと持ち込み、そして最終的に休戦協定に繋げたのだ。

 一方、それから数年後、マッカーシー上院議員は、彼自身の造作物である魔物達(共産主義者)を狩ることを尚も追い求め、遂にテレビ中継下の公聴会の場で米国陸軍にまで喧嘩を売った。米国民達は、注意深くその様子(同議員の軌条を逸し品格を欠いた振る舞い)を視聴するに付け、熱狂は冷め行き、結局は、品格を伴わぬものは贋物だったと断じ得たのだった。

 斯様に、先には、品格を重んじる気質と力量発揮する能力とが国を救ったのだ。今日、これらを、再度、救国の頼みとして私は期待したい。

                      編集長 ギデオン・ローズ

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