「戦争とは、権力の尺度に関し行われる争いの一形態である」と歴史家のジェフリー・ブレイニーは半世紀前に述べた。今年初、露西亜のウラジミール・プーチン首相は、露西亜とウクライナの双方の軍事力を推し量った末、両者兵力の不等価により迅速な勝利が約束されると予想した。世界中の多くの国々も、又、彼の見通しに同調したのだった。然し、それから数ケ月が経過、これら測定が如何に誤ったものであったかが明らかになった。
今月号特集記事の諸論稿は、権力とは何か、そしてそれは今日の世界に如何に機能するかを探求する。ローレンス・フリードマンは、露西亜の戦闘は様々な挫折に直面し、そして、それらは軍事力を滅失する原因として屡々(しばしば)挙げられる種々の失敗―「兵器の正味戦力」の過大評価、「指揮系統」の不機能、そして「敵の過小評価と云う、言い慣わされた悲劇的過ち」―によるもと見解する。ヌゲール・ウッズは、「自らの権力に夢中になる」指導者達は古今東西問わず広く存在する中、プーチンの抱く幻影が、それらの中でも、特異な、一つの極端事例である点を指摘する。
地政学的な緊張が先鋭化したこの時期、ダニエル・ドレズナーは、主要な敵対者達が、彼ら自身の権力軌道をどう認識するかの問題に関し、其処(そこ)に実に懸念すべき動態力学が働く事態に焦点を当てる。即ち、全て悲観的見解に立つ故に「権力が更に減退する状況を阻止する為に、現在目前の選択肢として存在する、危険を孕む諸行為をも実行する傾向にあり、その結果、様々な危機に際し軍拡競争や危うい瀬戸際外交が助長される」と論ずる。マリア・リプニツカヤは、今や米国と中国、双方が競合の場に持ち込んだ「ソフトパワー」に関し、その歴然と異なる互いの理想と、更には両国共、それら理想が直面する諸脅威に就き記述する。
最後の三つの論稿は、国際関係の中で、何が権力を決し、そして推進するか、その根底に在る諸要因を特定する試みだ。マイケル・マザルは歴史を通し諸権力の興亡を調査し、七つの国家的動態力を特定、それらは外交諸戦略を遥かに凌駕し影響を及ぼす事を示す。バリー・アイケングリーンは米国経済の有する影響力の状況を評価、それは今日尚強大ではあるものの、今後来る数年の内、複数の危機に直面すると結論付ける。そして、アミタフ・アチャリアは、「内部力」と彼が呼ぶもの ―従来その権力と影響力は過少評価されて来たが、一国が国内社会に於いて排斥と階層とに対し闘う事を通じて海外から獲得出来る力― に焦点を当てる。
上述諸論稿の執筆者達は、今日に於ける権力の特徴とその均衡に就いて正面から取り組むものだ。これらが与える便益は学術上に止まらず、実践的効果に迄及ぶ事が期待される。その理由は、ブレイニーが指摘する通り、計算の錯誤からもし戦争が生じるとすれば、平和は「その測定手法に関し、双方が大雑把な合意を為す事で得られる」からだ。
編集長 ダニエル・カーツ-フェラン
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