【社説】中国の台頭は続くのか(Can China Keep Rising ?)原本 Foreign Affairs 2021年 July/August号 巻頭P8

 ジョー・バイデン米国大統領が執務を開始した丁度(ちょうど)その頃、中国指導者達は「台頭する東方」という考えを宣言する習慣が身に付き、更に「衰退する西欧」という言葉を加えるのが常となった。後半のフレーズが明言されれば、ワシントン政府や同盟国首脳人達はあきれるか、或いは、怒りの反論を露わにするだろう。しかし、前半部に関して云えば、これは最早(もはや)、衆目の認める事実なのだ。即ち、ここ数年の輝かしい経済成長と、習近平の強権的指導力に支えられ、自信を付けた中国は、自らを世界の大国と宣言し、その結果、同国が米国に対し長期的な競合関係となるのは回避できない事実をも、受け入れたのだ。

 かと云って過去の実績は、必ずしも将来の成功を約束しない。よく分析すると、中国の持続的成功に対し複数の障害が存在する懸念がある。そして、習自身はこれらの点を十分承知し、それが故、彼の行動計画はいかにも早急で且つずうずうしいものになっているのだと、ジュード・ブランシェットは論ずる。彼は、「野望を抱く事と実行する事とは別物」であり、そして「習は今や中国を危うい軌道に乗せ、毛沢東時代の後、習の前任者達が築き上げてきた実績を損なう虞がある」と本稿に述べる。

 同様の力学は経済分野にも生じている。ダニエル・ローゼンは、北京政府による最近の政治的実績は、決して世界に優たる統制力の賜物ではなく、寧ろ、必要不可欠とされた改革の中で行った諸策は悉く失敗し、慌てて中央集権へと後退した結果なのだと云う。また、所謂、中国版“金めっき時代”(19世紀末に米国が体験した汚職体質)を克服すべく、中国政府が公式に試みた諸尽力は、同国内の不平等や汚職を抑制する力を本来備えている、これら諸権限に対し、寧ろ、習自身が同時に圧力を掛け、逆に挫(くじ)いてしまっている実態が、ユエン ユエン アン(Yuen Yuen Ang)によって明かされる。

 他の様々な危険は中国国境を越え迫っている。同国を代表する重要な二人の学者は、今日の世界は北京政府から見ると、どのように映るかという観点より論稿を提供する。閻学通は、米国の占有状態に対し中国が挑戦を試みようとする欲求が大きくなっている点を、又、王緝思は、米国が虞(おそれ)と嫉妬に動かされ、あらゆる可能な手段を以って中国を封じ込めようとしていると、殆どの中国側観測者達が信じている理由に就き説明する。そして、斯様(かよう)に相互不信が高じる中、オリアナ・スカイラー・マストロは、「中国が台湾に対し、武力を間もなく行使する可能性に関し、ここ30年来で、初めて真剣に考慮する時期に来た」と論じる。

 又、国家主義的な虚勢に満ち、中国こそ単一の完全統一された大国と伝える、公式な同国共産党史観が雪崩の如く溢れる状態の中で、今年、北京政府が同党結成100周年を迎える状況に就き、オーヴィル・シェルは論述する。即ち、彼は過去100年間に中国並びに同党が歩んだ足跡を辿り、勝ち誇ったような勝利主義は、実際はより複雑で多様であった過去を曖昧にする難点が在るのを明らかにする。そして、恐らく、それは過去のみならず、中国の将来をも不確実なものにするという点がより重要なのだと述べる。

編集長 ダニエル・カーツフェラン

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