*本欄は『フォーリンアフェアーズ誌』とは一切無関係な掲載です。
筆者:日向陸生 (“フォーリンアフェアーズ・ガイド” ブログ責任者)
近来日本の総理は論語を読まぬらしい。「子曰く、直なる哉、史魚」(衛霊公第十五)。中国春秋時代の衛の国、霊公による治世下、大臣として仕えた史魚は、賢臣登用と佞臣排除を同公へ進言するが、受け入れられぬ儘死期を迎えると「余は生前、臣下の責務を果たせなんだ故、正式な葬儀は無用」と子息へ固く遺言し身罷った。家族は之を守り粗末な葬式を出した話だ。
祖国の繁栄と真逆の目標を公言する組織に対し、私利党略の小利と引き換えに、同組織の与党内浸透を許し国家機密を晒すばかりか、国民から金銭が搾取され同勢力へ貢がれて行く事態を黙認するのは、明らかに国家への大罪である。もし一国の長が掛かる行為に関与していたならば、弾劾されるべきだろう。いつの世、何処の世界に於いても、国葬には相応しからぬ話である。
一方、日本のマスメディアが「元総理の国葬は概ね賛成、但し、その手続や経緯説明に難あり」との当初優勢であった生緩い総括を以って、本件幕引きと収束を試みるのであれば、斯かる情勢に対し物申したい。もっと幅広い論評と評価が行われるべきだろう。
マジックを操った安倍元首相
リチャード・ホルブルック(元米国国務次官補)は大統領の資質に就いて興味深い見解を述べて居る。即ち、大統領としての成否は、その人がマジックを持っているか否かが重要と云う。大統領と雖(いえど)も皆、手痛い過ちを犯す。大統領就任間もないケネディーは、キューバの豚港(ピッグ・ベイ)に仕掛けた上陸軍事作戦で惨敗し、クリントン大統領は、あろう事かホワイトハウス内で女性研修員モニカ・ルインスキーとの性的醜聞に塗れた。これ程の失態を仕出かし乍ら、それでも、彼らは、不思議な事に世間を味方に付け、結局何事もなかったかのように立ち直り、再び執務に邁進して行った。之が、ホルブリックが云う処のマジックを持つ大統領だ。一方、マジックのない者達は、懸命に務めても世間から評価される事なく、一層焦って行動を起こし却って墓穴を掘る展開に陥るのだと云う(*著者後注1)。
安倍元首相は、この点、マジックを持つ人であったのは間違いない。森友学園、加計学園問題、そして桜を見る会等、夫人にも幾度も足を取られつつ危機に直面するが、都度、マジックを発揮し乗り越えた。一方、同首相の実績に就いての評価は、2年前の9月、既に総理退任の際、一旦は概ね定まった。即ち、TTP創設、及び変人トランプ大統領政権下の対米関係を無難に乗り切った点は評価。複数疑惑事案に於いて毎度政権内に証拠改竄や破棄が取り沙汰され、政治に対する国民の信頼を損なった事、及びコロナ危機下に場当たり的対応に終始した点はマイナス。一方、アベノミクスの評価は政権前半と後半で功罪相半ばする。つまり、民主党前政権の無為無策の招いたデフレを引き継ぎ発足した安倍政権が、異次元金融緩和策を動員しその脱却を果たした(タダ同然の金利で、空気の如く市中に通貨を供する手法は“マジック・マネー”と呼ばれた)前半の功績に対し、3本目の矢(経済成長戦略)が結局飛翔せず、種々副作用を伴いつつ、成果と出口なき量的金融緩和の疾走を続けた後半の無成果を足し合わせれば、御相子(おあいこ)と云った処だ。そして、今年9月、不慮の死を契機に旧統一教会との関係が明らかになるにつれ、自身の政治家としての見識と根本評価を再度問われる事態となったのだ。総理在職中、打ち続く諸問題をその都度、無類のマジックを駆使し躱(かわ)す業(わざ)には確かに目を見張らせるものがあったが、最後は結局、自らが弄した反社会的な黒マジックが仇となった格好だ。
古来「棺蓋(おお)って論定まる」と云う。然し、安倍元首相が例外なのは、未完の大きな二つの問題を死後に持ち越しているからだ。政界に於ける旧統一教会汚染、そして経済に於いては異次元緩和策続行の弊害である。我々は、この二つの問題を真剣に対処する必要がある。
政界浄化には魔女狩りが必要
1950年の米国、マッカーシー上院議員は、政府内に共産党員(ソビエト連邦のスパイ)が多数存在する事を告発、これを機に、所謂「赤狩り」(マッカーシズム)と呼ばれる共産主義者の公職追放運動が吹き荒れる。摘発対象は政官界のみならず、更にマスコミ、映画界へとエスカレートして行った。然し、これに伴う、各界内の密告、告発或いは自白強要等の諸行為には問題ありとして、現代この一件は「品格を欠いた行き過ぎた行動」とされ、結局、最後は政界失脚したマッカーシーの評価も捗々しくない。一方、運動最盛の最中、マッカーシーを逆告訴する番組を企画放送、報道の自由と同運動見直しを訴えたジャーナリスト、エドワード・R・マローの勇気が報道人の鑑とし今日崇められている。
然し、目を逸らしてはならない点は、当時の米国では、現実に政府要職にソヴィエト連邦のスパイ達が紛れ込み、国益とは真逆の反逆行為が行われていた事実である。一例を挙げれば、米国財務省次官補と云う政府要職に在ったハリー・ホワイト(所謂ブレトンウッズ体制を築いた、同国際会議を取り仕切った米国側の中心人物)迄もがスパイとしてソヴィエト連邦の国益に貢献していたのだ(*筆者後注2)。当時の米ソ冷戦下に於いて、財政部門のみならず米国陸軍内部に迄も共産主義者が浸透しているとのマッカーシー告発に米国が震撼した事は頷ける。結局、マッカーシーは失脚するが、議会に於いて1954年に「アメリカ共産党」を非合法化するという成果を遺した。
国益に反する組織を支援する者が政界・官界に携わってならぬのは自明の理だ。自民党が旧統一教会に係りありとして発表した121名の議員達はバッジを付ける資格があるだろうか。現職同党議員379人に対する121人の数字は、この悪病浸透の深刻度を物語る。「もうお付き合いしません」で済まされる話ではない。マッカーシー旋風に匹敵する大掃除が本来必要だろう。公表された人物の中には、現職乃至大臣経験者が含まれ、その内幾人かは、押出し良く、学歴申し分なく、雄弁にして頭脳明晰、漸く斯かる人物が日本政界に登場、今後の国の舵取りを託される期待を背負った人々だった。こんな処で挫けてなるものかと、本人達はさぞ悔しい事だろう。然し、何より残念なのは、期待を裏切られた我々有権者の方だ。腐ったりんごはもう食えぬ。譬え、若く青く、形も味も悪くとも、毒されていないフレッシュなりんごと取替えるしかないのだ。これ以上の悪あがきは未練というものだろう。国選されし国会議員たる者は、国会議事堂登壇に際し、正面玄関、最初の階段を踏みしめる度に、必ず自らの心を踏み絵する如く「自分は、一体どこの国益の為に、どこの国民の為に尽くす為に存在するのか」を問うて確認し神明に誓わねばならぬ。それが出来ない人々が選挙で選ばれる事自体が間違いなのだ。
崩れる、金融超緩和策持続の前提条件
「中央銀行が独立性を失えばマジック・マネーの時代は悲劇で終わる」。これは、異次元金融緩和策に関し、サンセバスチャン・マラビー(ボルカー外交問題評議会経済学上級研究員)が発した警鐘だ(論文『魔術通貨の時代(The Age of Magic Money)』*著者後注3)。当時の2020年、日、米、英国、及びEUの各政府はこぞって超低金利による金融緩和策を取った。その利点は、財務省と中央銀行が結託すれば「正に空気から金を生むが如きの通貨供給」つまりマジックマネーを生み出し市場に大量投入し、金融緩和を維持出来る事だ。そして、好都合にも、金利低下局面では、政府債務(国債)を増加させ、政府債務残高が膨らむにも拘わらず、債務(国債)利払い負担額は従前より逆に少なくなる(ゼロ金利なら新規国債に利払いが生じない)。政府にとり正に、願ったり叶ったりの手法だ。そして、その当時から、日本は同策採用に於いて最先頭を走り、対GDP政府債務残高比率は200%以上であるにも拘わらず、破綻なく財政運営を操る模範事例として世界から注目されていたのだった。
然し、彼は、この政策運営に対し二つの重大な留意点を指摘した。第一に「金利が上昇しない事」がこのオペレーション継続の大前提であり、第二に、もしもインフレーションが再発した場合は、断固として物価安定を優先し金利上昇に踏み切る中央銀行の独立性(債務の安定を優先しようとする政府に負けない)が確保される事を必須とする、と云うものだ。更に、第一の点に補足し次のように云う。つまり「昨今インフレーションがすっかり影を潜めた、この状況下にこそ、同策は成立し得る」一方、「何故インフレーションが消滅したか、或いは何時又再来し得るのかに関し、現在、然と説明し得る者は誰もいない」のだと。換言すれば、同政策存続の大前提となる根本条件、つまりその土台自体に関し客観的根拠と学術的裏付けが不十分の儘に、各国政府が同策に邁進する状況が、実は極めて危うく、心許ないものなのだとの指摘だ。
そして、マラビーが抱いた2年前の懸念通り、やはりインフレーションは絶滅しなかった。現在、世界は再びそれに襲われている。斯くして大前提に狂いが生じ始める中、異次元金融緩和の謂わばクラブメンバーだった米、欧、英は、中央銀行が独立性を発揮し利上げに踏み切り緩和縮小の方向を打ち出した。マジックマネー筆頭国としての日本は、如何なる対応を取るべきか。「現状維持が最善」との、日銀の説明を鵜呑みにして良いのか。私は固より経済の専門家ではないが、素人感覚では底知れぬ不安を感じてならぬ。以下に私見を述べ、有識者の言を待ちたい。
日銀よ何処へ行く
世界情勢が変じる中、異次元緩和を断固続ける日銀政策に死角はないかと云うのが私の疑問だ。今月22日の金融政策会議で、日銀が発表し確認した政策は以下に要約される。
1. 異次元金融緩和(ゼロ金利誘導策)の継続。
2.日本はインフレ基調にない。(足下はコロナとウクライナの特殊事情による特定的且つ一過性輸入物価上昇。来年3月には同上昇が鎮静化する)
3.需給ギャップの解消に時間を要する為、この先、尚も1~2年の間、国内物価の上昇は不足の儘に推移。従い、その間、異次元緩和を継続せざるを得ない。
4.金融緩和の方向転換(利上げ)は、賃金上昇を伴う物価上昇が認められた時に実施。(上記3の文脈からすれば、早くて2025年との計算になるが、具体時期に言及ない)
上記内容に対し以下の疑問が湧く。先ず、インフレーション到来予測は誰にも不可能とマラビーが指摘する中、黒田総裁は、今後半年は疎か、2年先迄の物価上昇動向を見越す能力を有した、世界唯一の人物と云う事になる。本当か? この超予見にはどれ程の客観的根拠と裏付けがあるだろうか?
第二は、異次元金融緩和の政策持続性は金利が上昇しない(インフレーションが発生しない)事を大前提とする以上は、何れの時にか、もし再度金利が上昇局面に入った際の、量的緩和の出口戦略は用意されていて然るべきだ。即ち、予めどのような事態の場合にはどう収束させるのか、あらゆるシナリヲを想定し、盤石のプランと備えを持って置く事が必要だ。当然、量的緩和の圧縮は国債残高削減と表裏一体であるから、これは財政健全化計画に連動する。本来、これらは、2013年同策導入の時点で既に準備されるべきものだ。政府や日銀で十分検証されただろうか。斯かる“緊急時脱出マニュアル”無くして、無事に異次元緩和策を収束する事は出来ない。
そして、第三は、日銀が繰り出す「金利政策」の有効性に就いての疑問だ。黒田総裁は、低金利を維持し景気失速を防ぐと繰り返すが、抑々、金利政策は(欧米のように)上げたり、下げたりと、その双方向可動性が前提だ。即ち、上げるか、下げるか、現状維持かの三つだ。しかし、現在の如く下限のゼロ金利に張り付いたまま、上げる訳にいかず、現状維持する丈と云うのは機能不全なのだ。経済学入門書にも、景気(成長)維持と物価安定と云う二つの政策目標達成には、最低二つの手段の駆使が必要、とある(数学的に証明可能)。財政と金融の二本の柱を駆使して成長と安定の双方実現を図るのは教科書のセオリー通りだが、現状金融政策の機能性が著しく減じられた状況下は、片翼飛行に如く、その効果と安全性が甚だ疑わしい。一方、現に、総裁発言は、物価対策に就いては「無策不動」を良策と為し、只じっと逆境の去るの待つの一手の如くに聞こえる。
そして、最後は「中央銀行の独立性」の問題だ。現状日本政府と日銀の関係は異様だ。通常、両者の間に危惧される独立性とは、“物価安定”の本義に基づきインフレを鎮静化すべく「利上げ」支持する中央銀行と、一方、票田獲得に繋がる“景気浮揚”、乃至は財政負担を抑え“政府財源(国債)安定確保”の為「利下げ」支持する政府との葛藤を巡るものだ。即ち、中央銀行が「国民の暮らしを守る、物価の番人」として、政府圧力にも屈せず、飽くまでその本懐を貫徹出来るか堂か、その独立性が問われるのだ。然し、抑々この図式は日本には当て嵌まらない。欧米に見る健全な牽制関係とは異なり、政府と日銀は一連托生なのだ。何故なら、安倍政権発足当時の2013年1月に両者が政策協定(所謂、政府・日銀の政策連携)を結んでいるからだ。当時デフレ脱却を目指し、アベノミクス発進とその持続推進の為に両者協力が声明で発表され、以降双方は一致団結し不可分の関係だ。そして、現状に於いて、政府と日銀とが共に、政府財源安定を物価安定よりも重視する姿勢は明らかだ。更に、奇異な事は、経済政策を巡る両者の力関係は、本来のものと寧ろ逆転したかに見える。つまり、日銀の方が強いのだ。日銀が有無を云わせぬ経済方針を発表し、政府が追従して行くという、中央銀行独立と云うよりは、中央銀行独裁・独走の体制だ(今月22日、日銀が断固たる金融緩和策を発表、これを受け激化する円安に対し慌てて為替介入実施を図った財務省は恰も日銀の太刀持ちのようではないか)。
共通利害に基づき、現在、両者が共に最も回避したいと望むシナリヲは「金利上昇」なのだ。理由は、金利が上がれば、政府は財政負担(国債利払い)が増加し、且つ日銀は金融緩和過程に市中銀行から最大引き受けた国債と、これに見合って膨張した巨額の預かり預金勘定が裏目に出て日銀自身が債務超過に陥るリスクが高まる為だ。つまり、安倍政権下、アベノミクスの異次元緩和推進の為に、政府と一体となって機能してきた日銀は、無際限な量的緩和を続け、目一杯に債務を膨張させた処に、予想だにしなかった世界的インフレと金利上昇局面に遭遇する中、最早金利を上げる事も下げる事もできない、文字通り、引くも進むも儘ならぬ状況に陥っているのだ。即ち、マジックマネーを操る先駆的成功事例と一時称された日本であったが、前出、マラビーが指摘した懸念点に照らせば、金利上昇時に国の安全装置として機能すべき、中央銀行の独立性が、アベノミクスの立て付けの中で当初より存在しないと云う、実は極めて危うい体質であったのだ。
元来、「物価と通貨の番人」たる事が中央銀行の本懐である。その責務を果たすべく、時の政権圧力と闘った事例は数多く語り継がれる。然し、両者の確執が時として命懸けにもなった有名な逸話が、第二次大戦下の独逸(ドイツ)での出来事だ。同国中央銀行は、当時帝国銀行としてヒトラーの支配下に置かれ、戦費調達の為に膨大な通貨発行を強いられた。そんな中でも、無謀な紙幣乱造は超インフレにより国を亡ぼし、「健全な通貨」こそが長期繁栄の基礎であるとの論文を奉じ、命を賭しヒトラーを諫めて説得に成功したのが、ヴィルヘルム・フォッケだ。同論文「健全通貨」(*著者後注4)を当時、一早く翻訳し本邦に紹介したのは、紛れもなく当時の日本銀行調査課(吉野俊彦、後に理事)である。この「健全通貨」守護を貫く信念は、今日迄も必ず日銀に脈々と受け継がれている筈だ。
一方、今月22日の記者会見の、黒田日銀総裁に、日本通貨を健全に保ち、物価安定を期す「番人」としての矜持は感ぜられない。寧ろ、ひたすら異次元緩和貫徹に執着する同総裁は、恰もその背後に安倍元首相の亡霊が取り憑いているかのようだった。然し、同緩和の永続が不可能な事は確かだ。何時かの時点で必ず終わりが来る。その段に事至り、結局、次のような総括で幕になるの丈は御免被りたいものだ。
「そして、この物語、そしてこの祝宴は此処に終わる。何が起こったのかは、愚か者にさえもわからない」(『オルガス伯の埋葬』ピカソ)。
アベノミクス脱却の処方箋とは
気候変動問題への対処を除けば、現在、日本が直面する最大課題が1,200千兆円を超える公的債務の存在だ。云う迄もなく、債務負担は我々のみならず、将来の世代と分かち合う長期的な世代間分配を伴う問題である。加えて、国民は現状と先行きの経済に不安を覚え且つ惑っている。先に見て来た通り、世界的な物価高騰と金利上昇局面に、日本は急激且つ大幅な円安に翻弄され、只でさえ長年に亘り賃金停滞する中、物価圧力に直面する状況だ。これらに対し、日銀や政府が機動的な対応を発揮しない事に、国民は納得が行かず憤懣が鬱積しつつある。
政府は、国民が抱くこのような不安と不信感の払拭に尽力すべきだ。先述した今月22日の日銀記者会見の席上の出来事だ。会見終盤、何処かの記者さんが「円安・物価高で国民が塗炭の苦しみにある中、それでも緩和政策の修正はないのか?」と半ば叫ぶような哀願口調の質問に対し、総裁は「金融政策は飽くまで景気対策で、為替誘導に用いない」と冷徹な模範解答を返し歯牙にも掛けない様子だった。これは、恰も、昔の時代劇によくある、困窮のお百姓が、意を決し代官様に必死に直訴するが,あえなく門前払いされるシーンのようで、私は不謹慎ながら思わず失笑した。同総裁は紳士であるが故に発言が慎ましい。しかし、推測するに、彼の心の声は次のようなものではなかったか。
「おい、おい、俺にそんな質問する? 君達、その前に、内閣府の出してる資料(中長期の経済財政に関する試算)をちゃんと読んでよ。其処に書いてある通り、国は長期名目金利を2025年迄は0.1%にするともう決めてるの。だって、そうでしょうよ。さもないと、金利が上がって財政破綻するよ。そうなってご覧よ、30円や40円の円安騒ぎどころじゃないぜ。国が破綻したら結局、あんたがたにしっぺ返しが来るんだよ。俺が会見でこんな事しゃべった日にゃ、それこそ日本国債の格付けがガタガタになるじゃねえか。そこ察してよ!」
これが当たっているか堂かはわからぬが、日銀は、内閣府が設定した、長期金利見通しを含む中長期の財政試算の通り走る、と云う結論が先にあるのだろう。件の資料である「中長期の財政に関する試算」を見てみよう(今年7月29日の経済財政諮問会議に同府から提出された資料。同諮問会議ホームページより閲覧可能)。
先ず、財政健全化に就いては、今やGDPの2倍以上迄に拡大した国債残高を縮小する為の政府基本方針が現在存在する。報道等で周知の通り、基礎的財政収支(所謂プライマリーバランス)を2025年迄に黒字化する目標だ。同収支は「歳入から、国債利払いを除いた歳出を差し引いた数字」を意味し、この黒字化が、国債利払いを除き、先ず歳出入をバランスさせ根幹部の出血を止める基準点だ(更に、利払い分を十分カバーするに足る迄、同収支を黒字化する事により財政は黒字化し、国債残高漸減が可能になる)。同方針は「骨太2021年に於ける財政健全化目標」の主眼だが、以降コロナ対策等経費増を受け、今般その試算を見直したのが上述資料だ。
財政再建の机上試算モデル自体は至ってシンプルだ。主要変数は、名目経済成長率、長期金利、及び消費者物価の三つである。長期金利レートが、国債残高に対し毎年支払う国債金利費用を決する。名目経済成長率が、国家歳入の基となる税収の高を左右する。そして、計画の試算諸金額はその時々の金銭額面(名目)価値なので、将来の物価上昇を各数字に織り込む為に必要な指標が、消費者物価上昇率だ。要はこれらの前提数字次第なのだ。内閣府の出す試算結果では「保守的シナリヲ」(同資料中は“ベースケース”と呼称)と「楽観シナリヲ」(同“成長ケース”)の2案が提示されているが、注目すべきは、その何れの場合にも、長期金利は2022年度から2025年度まで0.1%の超緩和策持続を前提としている事だ(その後、2031年度迄の5年間を掛け、保守、楽観シナリヲでそれぞれ、0.8%と2.8%への上昇を織り込む)。
上記前提に基づき、結論部である2031年に達成される国債残高の減少成果はどうだろう。結果は、保守ケースの場合、残高が1,293兆円(2022年比 70兆円増加)、対GDP比率は213%(同4ポイント減少)、そして楽観ケースの場合、残高は1,264兆円(同61兆円増加)、対GDP比率は172%(同45ポイント減少)となる。この数値は、我々一般人の目にどう映るか。庶民感覚として、今後10年掛けても借金総額自体は減らずに逆に増えるのかと、先行き暗い気持ちになる。一方、対GDP比率で云えば、楽観ケースの場合には、パーセンテージポイントで45の減少は、目に見える改善と云えるものの、保守ケースだと10年経っても殆ど改善が見られないのだ。無論、既述通り、結果は何分経済成長次第で、債務残高の金額が増加しても、それ以上に経済が成長すれば対GDP比率は減少する。然し、問題は、保守、楽観の両ケース共に、長期金利を2025年迄0.1%に固定する前提だ。もしこの前提が崩れ、長期金利上昇を試算に織り込むとすれば、財政再建シナリヲは大きく遠のく。従って、上述再建成果のモデルを維持するには、異次元緩和を死守するしかないのだ。更に云うと、同試算中の消費者物価前提は、両ケース共2022年こそ2.6%に設定するが、その後、2031年迄2.0%に届く時が一度もない(楽観ケースの最終年2031年に漸く2%に到達)。これが政府と日銀が描く我が国の道程であり、黒田総裁の頭の中には、これに代わる如何なる「国家10年の大計」のシナリヲも存在しないのだ。
一方、日銀総裁が、口が裂けても触れる事がないのが「財政破綻」だ。従い、我々一般国民に、その危機と逼迫度が伝わらない。只、日本の現状、1,200兆円以上の国債残高と217%の対GDP比率が尋常でなく、昨今の金利上昇情勢により一層危うくなるだろう、と云う漠然とした不安を抱くに過ぎない。どう危ういのか。素人目に見ても、危機モードに入るスイッチは少なくとも三つあるだろう。日本銀行が保有する国債は、全残高の50%に上り、最早これ以上は国債の受け皿としての機能自体が限界に達している事(日銀以外の国債引き受け手が必要)。金利が上昇すると、政府の利払い増加により財政が悪化する事(日本政府の債務支払能力が低下)。日本国、及び同国債格付けが低下すれば、発行や借り換えに支障を来す事。これらのスイッチが、全てONになれば、財政破綻になりそうだが、一般人には、その詳しい実情や働くメカニズムが分かり兼ねる。嘗て、我々が歴史で目にした、中南米メキシコ、アルゼンチンや欧州のギリシャのような債務危機を伴う経済ショックに日本が見舞われるのだろうか。今の日本は、これらの諸国事例に比較し、どれ程の危機水準にあるのだろうか。
政府や日銀からは、これらの諸疑問点を解く説明がない。もし実態が「日本国は、重大疾患を抱え、何時発作を起こし、瀕死状態で病院に担ぎ込まれてもおかしくない状態」ならそうと云って欲しい。今の日銀の姿勢は、患者に対し「つべこべ云わずに、この薬を飲め」と正確な病状告知せず、臨床実験実績もない儘に、新薬を処方する強引なお医者のようだ。能力も情報も圧倒的な非対称関係にある、医者と患者の関係では只従う事こそが賢明と云えるだろうか。
「九度肘を折って名医となる」の諺がある。然し、殊、物価認識に関し、現在の政府と一般国民の間には深いギャップがあるように見える。実際の痛みを経験しないと、相手の気持ちは理解できない。消費者物価に就いて、政府や日銀、及びメディア報道を含み「…%消費者物価上昇、但し“生鮮食品を除く”」と必ず枕詞の如く発表されるが、我々一般国民であっても、毎日生鮮食品を喰わざるをえないのだ。実際の生活への打撃は、公表される消費者物価上昇率を遥かに上回る。彼らの心の内は「貧乏人は麦を喰え!」なのかも知れない。然し、実際に麦を喰った事のある池田勇人総理が云うなら愛嬌もあるが、その体験のない者が云っても説得力を欠く。国民の貯蓄に関しても同様だ。黒田総裁が、一度、思わず本音を漏らし「家計に積みあがった貯蓄によって、値上げを許容する余地が生まれた」と今年6月7日に発言したのは、自身の貯蓄額を前提に世間を推測したのだろう。富裕層にとり、食料品が20%や30%上がったところで、びくともしないが、一般家庭にとっては重大問題なのだ。更に、同総裁が、その際に根拠として引用した証拠も説得性を欠く。つまり、ある大学が実施したアンケート調査の結果の一事例のみを以って、其処から全体を推断する手法は「先に結論ありき」で、「理由は適当に拾って後付け」にしようとする、典型例なのだ。今回の内閣府の試算諸前提とその結果も本当に信じていいのだろうか。
コロンビア大学 伊藤隆敏教授による試算
医者の診断が、不安な場合はセカンドオピニオンだ。もう、一つの試算を見てみよう。
コロンビア大学、伊藤隆敏教授が日経新聞に寄稿した論文だ(今年8月24日付、『日銀財務を問う~赤字回避優先は本末転倒~』)。
これは、長年の異次元金融緩和過程で、日本銀行が市中銀行経由の国債買い入れを増加させた結果、日銀資産が今や736兆円に膨らむ異常事態(内526兆円が国債)下にあり、種々のリスク懸念が生じる中、この回避の為「量的緩和からの正常化」の道を模索する提言だ。結論は、その為に「日銀による政策金利引き上げ」と「日銀のバランスシート縮小(国債削減)」の実施を、具体的諸条件と共に示している。尚、内在するリスクとは、中央銀行資産の異常肥大化自体に加え、金利上昇局面に日銀自身の財務体質が悪化し、最悪債務超過に陥る事だ。(日銀のバランスシート上、国債の資産に見合う分、負債として市中銀行の当座預金が526兆円に上る中、現状は市中銀行に対する利払いが実質ゼロで済む処が、仮に1%金利が上がると5兆円の支払い増加要因となる)。
同論は、日銀の財務と同銀保有する国債の観点からの分析を試みるもので、アングルこそ異なれ、検証する本質は同じ、つまり先掲内閣府の国債残高(対GDP比率)削減計画と同一の問題なのだ。そして、同教授がモデル変数の諸前提を様々に験しシミュレーションの結果、代表ケースとして四事例を比較した上で、金利を引き上げ、国債残高を減じつつ、しかも日銀の財務破綻(債務超過)を回避し、異次元緩和を脱する、最善ケースの結果とその条件に就いて、以下の通り提案される。尚、計画期間は2022年から2036年迄の14年間だ。
その達成目標とは、2022年の日銀保有国債残高526兆円を、2036年には290兆円に削減(14年間で236兆円減少)する事だ。同モデルで鍵をなす前提要因は三つ。日銀が操作誘導する短期金利と長期金利の政策。そして、量的引き締め実施の度合い(国債借り換えのスピード)だ。詳細省くが、上記を達する条件は次の通りだ。即ち、政策金利に就いては、短期金利は2023年までゼロ、但し2024年以降毎年0.5%ずつ引き上げ、28年以降2036年迄2.5%に維持。一方、長期金利は、2022年に0.5%に引き上げ、以降毎年0.5%ずつ上昇させ2029年に年率4%に到達、以降同レートを維持。そして、国債借り換えの前提は、償還を迎える国債に対し、毎年その1/3を償還、2/3を残存5年物に置き換えるものだ(現存日銀保有国債の残存期間は平均6年7ケ月)。
私を含め素人には詳細理解し兼ねるものの、長金利を上げる前提に立ち、異次元金融緩和からの脱出を試み、且つ国債残高を減じる策に、現実性を感じる。同試算にしても、今後14年間を要する先の長い闘いではあるが、希望が持てそうな気がする提案だ。
見過ごせない財務省の参考見解
最後にサードオピニオンとして、参考に財務省のコメントを引用して置こう。財務省が昨年作成した「財政健全化の必要性と取組」と題する同省の立場と考えを説明する資料だ。内容要点のみ記すると、主張は以下の通りだ。
1)公債に依存する財政規律が緩く、公債に依存する体制、財政支出の中身のチェックが甘い。
2)国債増加による政策自由度制約と国債、通貨信認低下のリスクが増加している。
3)日本の財政赤字は構造的要因(少子高齢による社会保障費用増)である。
4)社会保障等の増大に見合う税収確保ができていない。給付負担の不均衡で制度持続性疑問。
5)財政健全化取り組みは、2025年の基礎的財政収支黒字化(既述)と歳出改革努力継続。
此処迄は、一般国民としても理解できる。一方、注目すべきは、末尾に“参考”として「我が国の財政に対する国際機関の見方」と題し、まるでオマケのように、OECDによる『2019年 対日経済審査報告書』からの抜粋を殊更転記、引用している点だ。そのOECD提言は曰く、「日本は主として消費税に依拠して歳入増加を図るべきである。十分な水準の基礎的財政黒字を消費増税によって確保する為には、OECD平均である19%を超え、税率を20%から26%の間の水準へと引き上げることが必要となる」と。これは他人の口を借り、我が身の望みを露骨に表明するものに違いない。然し、思うには、「政府歳出の徹底見直し」なくして、譬え一毛一厘たりとて消費税増率に国民の理解は得られないだろう。
以上、異次元金融緩和からの脱却見通しに関し、政府の試算、コロンビア大学伊藤教授の試算、財務省思惑を見て来た。これら脱却の計画を財政健全化に向いつつ且つ国民経済を維持して、尚成功裏に進める事は、薄氷を踏む如く際どく、又10数年に及ぶ歳月と忍耐を要する難作業である。十分に練った諸対策が、国民の理解を得た上で、検討そして推進されるべき事案だ。その為のプロセスは、次の通りと考えられる。先ず、「これで本当にいいのか?」と国民が疑心する事案を官民共に解き明かしに尽力し、その次に、これらに対する諸対策を考案、議論百出の上で検討し、更に、対策処方箋の洗練・良質化の作業を検討、施し、然る後に、国民が納得し国家一丸となって進む目標計画を見出し策定、そして之を共有しその実現に向かうのだ。
先ず、国民が不安を感じ疑問に思うのは次の諸点だ。
1)日本の金利鎖国は成立・存続可能なのか?:
仮に、世界が7%の金利に至る中、日本丈が0.1%金利に固定する事が可能か。その場合の国内経済の景色とは? 例えば1ドル300円時代でも、国民全体の富と効用の増加が持続的に可能か。
2)極度の為替変動が放置されてよいか?:
変動相場制下、変動は市場に委ね、政府として為替政策(レート目標)は放擲するのが最善か。民主党政権下の急激な円高、今般現政権下の急激な円安と、その都度適合対応余儀なくされる国内諸産業構造の棄損、淘汰、其処に投ずるエネルギーと被る機会損失は、ダーウィニズムによる市場進化に於ける不可避の代償とし正当化され得るか。
3)財政危機シナリオのシミュレーション:
自然災害(大地震、原発事故)の如く、物騒なシナリヲではあっても、その概況とイメージを国民に示し、懼れる必要のあるリスクとないリスク啓蒙が必要。(積年の異常な対GDP国債比率に慣れ、麻痺した国民に覚醒を促す)
4)日銀・内閣府の関係正常化:
政府・日銀の政策協定の問題点検証と、見直し検討。
5)根底に内在問題する諸問題:
経済の不平等格差拡大、一般家計の対経済不満度、政治不信、等
次に、上記を解明しつつ、民間からも広く意見提案を吸い上げ、次の問題が具体的に議論されるべきだ。
a)異次元緩和からの脱出プラン:各種試算と選択肢の提案
b)同プラン実行を補助する諸策(短期、及び中長期策):
政府決定プロセスの透明性とチェックの方策検討。又、異次元金融緩和発動時には導入される事がなかった、米国式の財務規律の検討。即ち、2011年、米国オバマ政権下、超党派で合意した財政赤字削減策“連邦政府債務残高の上限法定化”や、同年FRBバーナンキ議長が曲りなりにも議会に示した“金融緩和出口戦略”に類する案を吟味し参考とする。
c)政府・日銀の説明不足、政治不信感、国民との距離(溝)の解消策:
そして、更に、国債残高削減に関する上記対策a)とb)の異次元緩和からの脱出計画検討に際しては、次の要因が合わせ加味・検討される必要がある。即ち、計画の実現性をより高める為の内容点検と工夫だ。換言すれば、計画実行を加速させるドライバーの洗練と良質化の検討である。具体的には次の通り。
イ)財政歳入増加要因:経済成長ドライバーの洗練、創出検討(財政歳入増効果):
(生産性向上、投入労働力増加、新規軸事業創出、その他成長戦略等)
ロ)同支出削減要因:
歳費削減及び、制度上の諸問題への長期的取組(社会保障等)。1981年の土光臨調による「増税なき行政改革」の財政版「増税なき財政改革」の検討、推進が必要かも知れない。
我々は今、国家の危急に直面する。経済学者達は眠っているのだろうか。本来、経世済民を使命とすべき、彼らの奮起活躍を期待したい。伊藤教授の如く、一般国民に向けて問題分析と具体的対策や試算を発信、提供して頂きたいのだ。議論百出し、活発な議論こそが政府をも動かす事が出来る。日本国で経済学部を有する全大学から提案と試算の検討と提示が待たれる。同学部の学生さん方も教授の元で、或いは自分自身でPCを回し種々試算を検証したほうが良い。何故ならば、就職や起業も大切だが、国が破綻してしまえば素も粉もないのだ。
2019年1月16日付、ウオール・ストリート・ジャーナル紙の意見欄に「炭素税に関する経済学者達の見解 ~気候変動への取り組みに対する経済学者の総意として~」と題する、公開出状が掲載された。“炭素税導入”こそが気候変動問題に対する最善策であるとの具体策を示し、経済学者達45人の連著の下、世にその提案を訴えたものだ(*著者後注5)。同案にはその後大勢の賛同者を加え、最終的に3,500名の学者の署名を集める、一大運動となった。正に斯かる行動の如く、我が国に於いても、万人の目に留まる“異次元緩和からの脱却最善シナリヲ”提示がなされ、議論を呼ぶ事が必要なのだ。
国に道なきも矢の如く
扨て、冒頭、論語の一節に話を戻そう。その寓話を完結させると、史魚の簡素な葬式に参列し、驚いた霊公はその訳を遺族から聞き反省し、従来引き立てていた佞臣を退け、史魚の推薦していた人物を採用する。更に、後日改め、彼の格に相応しい葬儀を出したと史実は伝える。そして孔子は史魚の一本気な衷心を「邦(くに)に道あるも矢の如く、邦(くに)に道なきも矢の如し」と賞したのだ。斯くの如きの心意気を祖霊と国民に誓い、実現して行く人物を、日本の政治にも学会にも求めたい。
(了)
【資料概要(抜粋)】
(1)内閣府による「中長期の財政に関する試算」(2022年7月29日開催の経済財政諮問会議に同府から提出された資料):
試算は、ベースケース(所謂、基本ケース)と成長シナリヲを織り込んだ成長ケース(所謂、楽観ケース)の二通り。それぞれの結果と、それら前提となる諸条件は以下の通り。
<試算結果>
2022年 2031年予想
見込み ベースケース vs 成長ケース
国債残高 : 1,203兆円 1,293兆円 1,264兆円
(対GDP比率) (217%) (213%) (172%)
<諸前提>
[名目経済成長率]:
(ベースケース)2022年は+2.1%、2023年は+2.2%、2024-27年の間+1.0~1.5%、それ以降 +0.5~0.9%
(成長ケース)2022 – 23年はベースケースと同様、24 – 28年の間は、+3.4~3.7%、
29 – 31年迄+3.1~3.2%
[消費者物価] :
(ベースケース)2022年は +2.6%、2023年は+1.7%、以降2031年迄は毎年+0.6%
(成長ケース) 2022 – 23年はベースケースと同様、24、25年それぞれ+1.4,+1.7%, 以降2031年迄毎年+2.0%
[名目長期金利] :
(ベースケース)2022 – 28年を通し0.1%。29、30、31年はそれぞれ0.3, 0.5, 0.8%
(成長ケース)2022 – 25年を通し0.1%。26、27、28年はそれぞれ0.2, 0.8, 1.5 %,
その後の3年、それぞれ2.0, 2.4. 2.8%
(2)コロンビア大学 伊藤隆敏教授による試算『日銀財務を問う~赤字回避優先は本末転倒~』(2022年8月24日付日本経済新聞掲載):
<日銀保有国債金額の推移試算/最善案>
2022年 526兆円
2036年(予想) 290兆円 (14年間で236兆円削減)
<前提>
国債圧縮方針:償還迎える国債は、毎年その1/3を償還、2/3を残存5年物に置き換える。
金利政策:短期金利は2023年までゼロ。2024年以降毎年0.5%ずつ利上げ、2028年以降は
年率2.5%を維持。長期金利は2022年に0.5%に利上げ。以降毎年0.5%ずつ上昇させ2029年に年率4%に到達、以降同レートを維持。
【著者後注】
*1)出典:『Our Man ~Richard Holbrooke and The End of the American Century~』(GEORGE PACKER著)
*2)出典:『The Battle of Bretton Woods』(BENN STEIL著)
*3)出典:『The Age of Magic Money』(SEBSTIAN MALLABY著、Foreign Affairs 2020 July/August掲載)
*4)出典:『健全通貨』(ヴィルヘルム・フォッケ著、吉野俊彦訳、至誠堂出版)
*5)炭素税導入を提言する経済学者による公開出状:
2019年1月16日付WSJ紙の意見欄に掲載、「炭素税に関する経済学者達の見解 ~気候変動への取り組みに対する経済学者の総意として~」(Economist’s Statement on Carbon Dividends ~Bipartisan agreement on how to combat climate change~) と題し、以下5項目を以って簡潔にその主旨を訴えたもの。
I:炭素税が炭素排出削減には規模と速度で最大の費用効率を発揮する最善策。
II: 炭素税率は目標達成まで毎年課税率を増大させ、脱炭素燃料社会への技術開発促進。同税収は完全配当還元により、政府税収に中立的。
Ⅲ:炭素税を十分適切且つ活発な規模で漸次税率増加させる事で、その他の非効率な炭素排出抑制諸策への置き換えになる。
Ⅳ:国境(輸出入管理)に於ける、海外諸国との炭素税調整制度確立が重要。これにより自国競争力維持と世界諸国での炭素税導入参画を期待。
Ⅴ:同税は米国市民への直接配当による完全還元方式とし、低所得層を含む大多数の家計にはエネルギー関連増加支出を上回る配当額支給を講じる事が可能。
同出状は、歴代連邦準備理事会(FRB)議長、歴代大統領経済諮問委員長、及び多勢のノーベル賞受賞者を含む、錚々(そうそう)たる経済学者達が署名。これら45名による連署で紙面公表の後、順次賛同者を加え、総計3,500人の署名に至る。
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