(Andrew S. Erickson 米国海軍大学教授、Gabriel Collinsライス大学研究員、両名主要な肩書のみ記載し詳細略)
論文概略
昨年、中国の習近平国家主席は、同国が2060年迄に「炭素中立化」を達成する事を約した。つまり、中国はこの期限迄に、毎年同国が排出すると同じ丈の二酸化炭素を、大気中から除去する事を意味する。現在、中国は世界最大の温室効果ガス排出国で、全世界の二酸化炭素排出量の約3割が同国に由来する。斯かる中、2060年迄に排出ゼロにする目標は、野心的な到達点である。更に、これは北京政府に取っては、巨大経済を化石燃料から脱却するよう変容を図る事、並びに気候変動との闘いに於いて、国際的諸取組を広範囲に支援する事、この両面に関して、同政府が請け合う旨を対外に広く伝えた事を意味する。
しかし、斯(か)く勇ましく語る姿勢の裏に、実はそれとは全く異なる現実が覆い隠されている。中国は、化石燃料中、最も地球を汚す石炭に依存する体質だ。その使用量たるや、全世界の使用量の半分に相当する、年間40億トンもの石炭を燃やしているのだ。中国の全電力の凡そ65%が石炭火力により供給され、その比率は米国(24%)や欧州(18%)に比較し著しく高い。更に、今年2月、フィンランドと米国の研究者は、中国が2020年、石炭火力発電の稼働を劇的に拡大した事を明らかにした。中国石炭火力発電の純増容量は、同年を通じ、差し引き30ギガワット増加し、世界の他地域に於ける17ギガワットの純減少の効果を打ち消している。その上、中国石炭火力発電所計画は、現在、建設着工中、建設許可済、並びに建設承認申請中の案件を合算すると、その容量は200ギガワット近くに上り、これは、世界第4位の経済大国である独逸、その丸々一国分の需要にも相当するのだ。また、石炭火力発電所が屡々(しばしば)40年乃至それ以上稼働する事実を踏まえれば、中国は今後数十年に亘り、依然として石炭に依存する公算が高い。
ここに、不都合な事実が存在する。即ち、制限された自由と一党独裁と引き換えに、成長と安定を提供すると云う、中国共産党が人民に対し約した社会的契約こそが、実は全面的に過剰投資を誘発し、特に中国経済の大半の原動力となる石炭分野に於いて、それが顕著に現れたのだ。中国は、石炭火力発電所を幾か所か閉鎖もし、再生可能エネルギー投資も行いはするものの、真剣に脱炭素に取組む見込みとなると、遥か彼方と云わざるを得ない状況だ。
習が気候変動との闘いを果敢に語るのは、より緻密に計算された政策優先諸課題を包み隠す為の煙幕なのだ。中国の政治家達は、温室効果ガス排出を抑える為に重要な、如何なる国際的取組に於いても、同国の存在は欠かせない事を承知している。そこで、彼らは他分野に於ける自国の利益を増長させるべく、その立場を梃に利用しようとしている。一方、米国の政治家達は、米中両国が他分野では競おうとも、気候変動に就いては、両者が実質的な協力を行い得る問題として、切り離しが可能だと期待した。即ち、ジョン・ケリー米国気候変動問題担当特使は、米中諸関係に於いて、気候変動は、一つの独立した個別案件である点に固執したのだ。ところが、中国側はその様には考えない。
今年1月末、ワシントン政府は、中国と気候変動に関する話し合いを模索すると同時に、人権問題やその他、見解を異にする政策に就いては北京政府に圧力を掛ける旨、アントニー・ブリンケン米国務長官が方針発表した。その直後、趙立堅中国外交部報道官は、気候変動の問題で中国が協力を提供する事は、「相互に関係している諸問題と、全体として密接に結びついている」との警告を、バイデン政権に対し透かさず発したのだ。換言すれば、これは、中国が気候変動問題への協力を他の諸問題とは切り離さないと云う事だ。即ち、中国が地球温暖化を喰い止める取組に参画するか否かは、他分野に於いて海外の対話相手達が取る立場や行動次第という訳だ。
趙の人目を惹く舌鋒鋭い反論の効果か、米国の主要同盟国の中では、既に、気候問題に関する中国との交渉に於いて、既に手加減する反応も出始めている。今年2月に行われた、中国国務院の韓正副総理とのビデオ会議の中で、フランス・ティメルマンス欧州委員会副委員長、兼欧州グリーン・ディール担当は、人権問題やEUによる炭素越境税計画と云った、中国側が異論を持つ課題への言及を回避した、との由々しき事態が報じられた。北京政府は、彼らの国内人権問題や領土を巡る積極行動等を国際社会からの圧力から守る為に、気候変動問題を引き続き交渉材料として利用するのは略(ほぼ)間違いない。更に悪い事には、中国は恐らくは、米国並びに諸同盟国に対し、経済、技術、及び安全保障上の諸問題で妥協する事を要求して来る。その好事例として、南志那海に於ける中国の挑発的諸行動を黙認するよう求めて来る可能性があるが、これら諸国が、譬(たと)え、それに応じた所で、結局、見返りには何ら得るものはないだろう。
この結果、米国高官達は、一つの明白な選択肢に直面している。もし、彼らが、気候変動への取組に関し、中国の協力を取り付ける為に、諸事妥協を図った場合、何が起こるか。北京政府は気候変動に関する諸条件を申し出はするものの、結局は国内の強固な諸利益集団の反対に逢って身動きが取れず、所詮、それら約束が実行される事なく、完全に失敗に終わるか、さもなければ、可能性は低いものの、同国経済成長が一般予測より遥かに鈍化した停滞に見舞われ、この経済運営の失敗の結果、偶然の賜物として環境目標が達成されるか、の何れかが関の山だろう。しかし、だからと云って、彼らが中国との取引を拒めば、それによって地球温暖化を喰い止める様々な取組みを危うくする可能性が生じる。従って、殊(こと)、気候変動問題に関しては、米国はその競争者に対し、協力ではなく対抗する道を取るべきだ。詳細は以下論稿に述べる通りだ。
石炭に依存する中国の事実
四半世紀に亘り、米国と他主要諸国は、中国との気候変動問題を巡り、同国と協力を模索して来た。その理由は、気候変動から世界を救う為には、国際的に広範な合意が必要とされ、二大大国、即ち米国と中国を抜きに本質的解決はあり得ないとする議論による。この多国間での努力は、国連の気候変動問題協議委員会(UNFCCC)の下で行われ、2015年にはパリ気候変協定調印という形で頂点に達した。この協定の成否は、排出二大大国である中国と米国が同案を妥協し受け入れるか否かに掛かっていた。
パリ協定に先立ち、後述の主要取極め項目に関し達成を約束するよう、当該二国間での相対交渉が中国に於いて重ねられた。即ち、二酸化炭素の排出量を国内総生産当たり、2005年対比で2030年迄には60~65%削減させる事。更に、主要な資源消費型重工業部門に於いて、炭素排出量に歯止めを掛ける国家的な仕組みの始動、並びに、諸企業間での排出権売買を強いる事による排出量削減の動機付けを、合わせ2017年迄に実行する事。再生可能エネルギーの開発を優先的に実施する事。“2030年頃”を目途に、二酸化炭素排出量のピーク時期を設定するよう尽力し、それ以降、これら排出量を漸減させて行く事、だ。これらの諸目標は、特に野心的と呼べる内容ではないものの、それでも、一般的に、北京政府はこれらすら達成する事が困難だ。一例を挙げれば、国内排出権売買の仕組みは、計画から4年遅れで、然も極(ごく)限定的な立上りに止まる。また、伝えられる所では、今年3月に開催された第13回人民会議に於いて、李克強首相が発表した政府活動報告では、何ら大胆な約束の実行は織り込まれず、中国は“同国が意図し、決定する所の諸貢献を”2030年迄に行う事を単に述べたに過ぎなかったのだ。
UNFCCCの外郭機構である、加盟国間協議に見られる通り、現在の気候問題に関する外交は、その温室効果ガス排出規模の大きさ故に、中国を必要不可欠の国として待遇している。ところが、北京政府のパリ協定調印以来、凡そ6年経過する中、同国が取った諸行動からは、同協定は根本的に脆弱である事が、結局、明かされた丈であった。即ち、同協定も、頑強なる国家の諸利益に面と向かうと、最早、真の透明性を確保する事は不可能なのだ。非政府組織のGEM(世界エネルギー監視機構)統計によると、中国企業は2015年から2020年の間に、総計、凡そ275ギガワットの石炭火力発電容量を増加させ、これは、世界第三位の石炭消費国である、米国に所在する全石炭火力発電所の発電容量を超える規模に相当する。その上、近年、設置された、これら設備は、その85%以上が近代的な超臨界圧式、乃至は超々臨海圧式のボイラー技術を起用する。これらが高額投資である点を考えれば、その稼働は長期に及ばざるを得ず、この事は、今後数十年にも亘り、石炭需要を固定化させ、中国では長期的に石炭依存を強めざるを得ない状況が、継続する根底要因となるだろう。
今や、数多(あまた)のUNFCC加盟諸国が、より厳格な排出削減目標の導入を熟慮検討する最中、中国指導者達に同様の行動は見られない。その代わり、彼らは、国内経済上の利益と目先のエネルギー安全保障上の懸念とに応えるのに専念し、現行路線から大きく外れるような、排出量削減の約束を拒絶するのだ。彼らの気候変動の交渉に於ける論法は次の通りだ。即ち、巨大な人口を抱える同国は、国民一人当たりの平均所得が依然相対的に細(ささや)かな水準である事から発展途上国と位置付けられ、従い、同国指導者達が、先進国と同等の排出抑制を課されるのはお門違いだ、との主張だ。同国国民一人当たりの排出量が、多くの他富裕諸国より少ないのは事実だ。とは云え、同国民一人当たり排出量は、既に伊太利亜や英国等の産業諸国を超える水準なのだ。それに加え、何よりも、中国の排出絶対量こそ、最終的には地球の大気に与える影響の鍵を握るにも拘わらず、同数値の削減が覚束ない状況なのだ。2009年から2019年の間、中国が排出した二酸化炭素総量は、米国の略(ほぼ)2倍に相当する。両者のこの差は、北京政府が今後数十年間に亘り、石炭を中核エネルギー源として珍重する政治的誘導策を施行する為、一層拡大し、地球の大気及び海洋環境に対し、極めて甚大な結果を及ぼす事が懸念される。
過剰な迄の石炭依存から、中国を脱却させる事は極めて困難と云わざるを得ない。と云うのは、同国中央政府と地方政府との両方で、指導者達は皆、安価なエネルギー源を選好する為だ。それが経済成長を加速し、その事が政治闘争での彼らの生き残りを保するのだ。即ち、地方高官達は、管轄地域の経済成長率を高めようとし、貪欲に石炭利権を追い求め、然も、これによって成果を上げ、何処(どこ)か他地域で、今より昇進した地位を確保さえ出来れば、後はお構いなしという訳だ。斯様(かよう)に、彼らの思考は短期的且つ自己管轄地域内の投資優先の典型例と云える。従い、管轄地域を跨ぐような投資により、エネルギー効率を極大化し、より環境に寄り添った仕組みを組成するような試みは為されない。何故なら、これらは政治的な交渉を伴い、それによって彼ら自身が支配力を手放すに至る事態を嫌うからだ。この結果、中国国土は、非効率なエネルギー傾斜型投資に溢れ、本来は必要ない複数の石炭火力発電所が散りばめられる事となる。
中国に於いては、インフラ整備を推進する巨大な能力こそが、経済の中核的な柱だ。しかし、これら能力は、何れも排出量が著しく大きい諸産業に依存するのだ。新型コロナウィルス感染拡大に伴って生じた経済後退を回避するべく、同国はGDP成長を加速させる為に、石炭を焚く重工業部門への依存を図った。この結果、2020年、中国の高炉と電炉は、初めて10億トンを超える粗鋼を生産した。同じくアルミ精錬も同年に記録的生産量となり、更にセメント工場も同様、そしてこれらの各産業の生産量たるや、それぞれ世界の全生産量の6割近くを占めたのだ。
先述した事態は、一層悪い方向へと進む見込みだ。何故ならば、建設需要が拡大する環境が整っているのだ。中国経済活動を如実に著わす、先行指標の一つとされる、油圧ショベル販売台数は2020年に史上最高値に達した。斯様(かよう)な大型建機購入ブームが意味する所は、政府の外に在っては、将来の建設諸案件予想に最も有利な立場に在る地方建設業者達が、新規の大型諸案件がもう直(じき)至ると判断していると云う事だ。これは、今後数年間に亘り、実質的には、鉄鋼、セメント、及びその他、排出量の高い諸製品の製造が継続される事を予兆させる。最終的には、中国が2030年迄に炭素排出量を頭打ちとするという、自身で公言した目標に固執する事は十分考えられる。しかし、譬(たと)え、2031年排出量が2030年の最高潮より減じていたとしても、現状設定されている勢いから予想される、その炭素排出の高い水準を鑑みれば、その名ばかりと云える勝利は、全体的な世界規模の気候に対し損失となるばかりか、その勝利は同国にとっても大きな犠牲を伴うものとなろう。
中国の頑なまでに石炭に依存する体質の代償は甚大である。自国の石炭使用事業者に、一帯一路計画の一環で海外に建設される諸工場を合算すると、これらが燃焼する石炭数量は、今後2060年迄の間に何と1千億トンに上るのだ。この試算は保守的な見積もりに基づき、既存及び建設中の火力発電所、石炭化学設備、及び産業用ボイラーを対象とし、同国の再生可能エネルギーと原子力発電との妥当な拡大をも考慮に入れたものである。1千億トンの石炭貯蔵量は、ニューヨーク市の5区、全てを高さ340フィート(約104メートル)で埋め尽くす規模だ。これらを燃焼されば、大気中の二酸化炭素濃度が現在より10%近く上昇する計算だ。
偽りのグリーン政策
気候問題に関する中国外交は、炭素依存型産業と云う現実から飛躍的脱却を目指す事を宗としている。中国指導者達は、同国が気候変動問題へ積極的に取り組む約束に固執している証拠として、同国再生可能エネルギー向け投資が相当額に上る事と、原子力、天然瓦斯、風力、及び太陽光発電に対する振興努力とを挙げる。確かに、中国発電事業投資に於ける内訳は、額面上では、石炭火力向け投資が再生可能型エネルギー向け投資額に劣るように見える。中国国家エネルギー省に依れば、同国は、2014年から2020年迄の間、太陽光と風力との発電容量を、それぞれ235ギガワットと205ギガワット、新規増設したとし、両者の合計発電容量は、同期間に増設された石炭火力発電所容量の凡そ225ギガワットに比較し、その規模は約2倍に上る。
しかし、これら過渡的諸電源の泣き所は、他の多くの種類の再生エネルギー同様、送電網を通じ安定供給を維持する為に、不足分の電力を何時でも発電可能とする補助体制が不可欠な点だ。もし、大停電が生ずれば、経済活動の寸断に止まらず、中国共産党の権威が失墜する為、同党として、決してその危険を冒す訳にいかない。即ち、単発でもそれが深刻な電力供給不足であるか、或いは度重なる停電が継続すれば、同党支配体制の根幹を揺るがす危機に発展し兼ねないのだ。その為、同国は結果として石炭火力への依存を止める訳には行かない。現に、中国の2020年の各種設備の年間平均稼働率を見ると、石炭火力発電所は約50%と、風力発電(同24%)、太陽光発電(同15%)等、他の電源を圧倒する(引用した百分比率は、所与の一年間の内、当該設備が実際に稼働した時間の比率を現わす)。同国は、又、寒波や熱波の襲来による、電力送電網への異常な負荷増大を乗り切る為にも、火力発電所への石炭供給を物理的に加速しなければならない事情が有る。
更に、再生可能エネルギーへの移行は大切な重要課題ではあるものの、これら新規電源の同国電力供給に占める比率が上昇すると、厄介な事に、送電網の安定に関し様々な難題が生じる。米国の場合、再生可能エネルギーの補助電力に天然瓦斯(ガス)を用いるのに対し、中国は、米国シェールガス革命の模倣を試みるも失敗し、同国の消費する天然瓦斯は既にその4割以上を輸入に頼らざるを得ない状況だ。ここに、過少評価され勝ちな、ある国家安全保障上の懸念が在るのだ。従来、同国の天然瓦斯輸入は、ミャンマー、ロシア、及び中央アジアを通過するパイプライン経由で行われて来た。ところが、将来の需要増加を満たすには、輸送を海上に頼る液化天然瓦斯の輸入依存を徐々に高めざるを得なくなる。もし、同国電力発電の燃料別構成の内、瓦斯焚き発電所が大きな比率を占めるようになれば、この海上輸送ルートという点が、北京政府に取り、極めてデリケートな問題となる。即ち、敵対勢力は海上の天然瓦斯輸送船団を封鎖する事で、同国配電網を攪乱出来るのだ。従い、国家安全保障上の戦略的観点からも、中国の持続的石炭選好が後押しされると云う、今一つの要因が在るのだ。
中国の高官達は、石炭工場を廃棄していると主張する。確かに、一面では、同国は2015年から2020年の間に能力容量46ギガワットの石炭火力発電所を閉鎖したのは事実だ。ところが、破棄された設備をよく分析すると、実は同国が以前同様に石炭火力に依存する体質に変わりない事が判る。当局が破棄した石炭火力発電所は、大半が広東のような沿岸部の裕福な県に所在し、その背景は当該地域の大気汚染緩和と、発電事業より高収益を上げる案件に土地を提供する必要に迫られての事なのだ。更に、彼らはこれら発電設備を、単に内陸に所在する、貧しい県に移設し、そこで石炭を焚き、造られた電力を沿岸地帯所在の産業集積地へと効率的に送電する仕掛けなのだ。
発電所の煙突を、上海や広東から、安徽、湖南、内蒙古、或いは新疆と云った地域に移管した背景は、政策上の優先判断に基づくものだ。即ち、同国が、裕福な市の大気から汚染物質を取り除くのは、2016年、成都市の冬特有のスモッグに端を発して生じた抗議活動のような、一頻りの騒乱の再発を防ぐ事が目的なのだ。移設に伴う減増を差し引きすると、膨大な量の二酸化炭素は一向に衰えそうにはない。と云うのも、ここ10年間で中国に建設された火力発電所は、今日建設中の案件も含め、大変高額且つ最新技術を備えた設備で、旧来の老朽化した安価な工場に代えるものである。これら新規発電所の諸設備は、亜硫酸ガスや微粒子群排出による汚染を軽減する技術が駆使されているものの、二酸化炭素の排出に就いてはその限りではない。又、これら地域では、火力発電に代え、他にその敷地を活用し同様な収益を得る用途は殆どないのが実情だ。その結果、これら発電所は、通常の設備寿命の40年間は優に稼働する見込みで、それ以前に閉鎖・廃棄される可能性は薄い。
積極的に石炭火力発電所を閉鎖している、広州、江蘇、浙江の各州は、何れも、大規模な炭鉱事業を持たず、火力発電所が吸収する労働人口も、他の諸産業に比べ極(ごく)僅かに過ぎない。一方、内蒙古等、中国で低所得水準の地域に於いては、石炭が形成する地方経済比率が高く、政治的計算から導かれる結論は自ずと異なって来る。即ち、地方高官達は石炭から脱却する事に極めて消極的なのだ。
中国の石炭部門、並び同関連諸産業は、全体で何千万人という雇用を生み出し、何兆ドルもの資産価値の基盤構造を支配する。部外者は、中国と云うお国柄を考慮すれば、石炭から脱却するとの野心的エネルギー政策ですら容易(たやす)く実行可能だと往々にして思い勝ちである。しかし、この国家は決して一枚岩ではない。特別な地方の諸利権が複雑に絡み合う状況が、環境政策の推進を妨害するのだ。これを打開出来る頼みの綱は、中央政府が明確に最優先の順位付けされた指令を下す事だ。ところが、実際には、その肝心な中身は、実質的意味を持った気候変動への諸改善が含まれる事なく、骨抜きになるのは略(ほぼ)確実なのだ。何故なれば、同国の巨大なエネルギー機構を、同意可能な計画期限内で変容させる為の如何なる努力も、地方、省、並びに国家の全てのレベルに於いて、各電力族の広範な諸利益が全て同方向に一致を見ると云う、極めて稀な条件が揃わぬ限りは、決して成功はしないからだ。
ところが、殊(こと)、エネルギー問題に関し、これら諸利害の対立は根深い。石炭火力発電所及び炭鉱の閉鎖、乃至は部分的操業休止にしても、それらは巨額な投下資本と甚大な雇用の喪失を意味する。従い、再生可能エネルギー計画を推進する場合、これらの諸損失を打ち消し吊り合う丈の利益を得る事は期待薄なのだ。雇用への具体的影響はどうか。石炭火力発電所が生み出す雇用は、風力発電が支える雇用数の5倍に上ると試算される(毎時1メガワットの発電電力当たり、米国の雇用者数比較事例に拠る)。労働集約性がより高い中国の場合、風力発電への置き換えを推進すれば、石炭火力に比し、雇用創出効果の観点から、より大きなマイナス効果が出るのが明らかだ。
習は中国地方部での生育体験を持つ。中国共産党の歴史にどっぷり浸かった、彼や他の最高幹部達は、恐らくは地方経済の利益を極めて重大と考える傾向にある。従い、嘗て15年前には石炭火力発電所の招致を歓迎し(そして近年は一層、招致に熱心な)、石炭関連の有力財界人や地方高官達が懸念を表明すれば、当局側は交渉を通じ政治上、又は社会経済上の妥協を余儀なくされよう。こうして、中国が現在試みようとする環境問題への取り組みは妨げられる公算が高い。そして、時間の経過と共に事態は悪化し、上述した力学が働き、石炭依存は現在の予想より長く続き、中国の二酸化炭素排出量の将来軌道に相応の影響が及ぶのは避けられない。
又、中国が公言する化石燃料からの脱却の約束は、皮肉にも深刻な憂慮を生む事態に至る。つまり、国際的な脱炭素エネルギー革命を担う製造現場としての同国役割に於いて、中国の場合、太陽光パネルから電気自動車の蓄電池迄、造り出される全ての物は、実は石炭火力による電力供給網に過度に依存する体質なのだ。即ち、レアアース資源の精錬(多くの環境保全技術に必要な素材を製造する為の)を含む諸製造活動や電気自動車向け蓄電池の生産に於いてすらも、そのエネルギー源としては炭素燃料が自由自在に投入されているのだ。
例えば、蓄電池製造過程に於いて、毎時100キロワットの電池(テスラのモデルS搭載用と同容量)の場合、その生産には一個当たり凡そ7トンもの石炭を焚いて得られるエネルギー量が必要になるのだ。更に、電気自動車の背後に隠れる排出問題は、蓄電池製造過程のみに止まらない。つまり、同国が電力の生産手段を変更しない限り、中国国内を走る電気自動車の充電は、石炭を燃料とする電力によって効率的に行われる事になる。この場合、100万台の電気自動車が中国各地の国内配電網を利用し、接続充電された場合に排出される二酸化炭素の総量は、結局、セダン型のガソリン車、凡そ100万台分が排出する規模に匹敵するのだ。
幾人かの中国高官及び影響力のある顧問達、特に、同国気候変動担当特使である解振華、等は、排出を削減し中国共産党の数十年間に亘る環境破壊の伝統を修正する事が彼らの重要な使命である点を十分弁(わきま)えてはいるのだ。しかし、中国の振る舞いが大胆化する事に対する海外の反発と、同国2060年炭素中立化宣言により不利益を被る国内利益団体からの突き上げとの、この二つの動きが相俟(あいま)う結果、北京大学の学者Zha Daojiongが名付けた、所謂、エネルギー安全保障の「国家主義派」思想を、忠実に信奉する政府高官達の勢力を強める要因となっている。中国に於いては、今後エネルギー政策の方針決定が、安全保障の諸問題と絡められる公算が高く、現に2019年、李首相の発言が既にその事例で、彼は石炭が国家安全保障上の重要な資源であると述べている。一方、中国の環境問題に関する外交は、殊(こと)、同国石炭の傾斜的使用の問題となると、似非(えせ)環境活動家の立ち振る舞いを続け、そして、気候変動問題への協力義務よりも、中国共産党の国内並びに地政学的目標を引き続き優先させる事になるのだ。
これらが、今後数年間の米国政策にとり意味する所は明らかだ。地球の大気は国境を越え移動し、そして、中国は、石炭使用を主原因とし、温室効果ガス各種の内、その多くの主要物質を、世界断トツの最大規模で排出し続ける。この事実は、持続可能な排出の仕組みを造り上げる為には、北京政府が国際交渉の場に参画する必要がある事を意味する。ところが、同国に対し協力を促そうと積極的に働き掛ければ、米国や他諸国は嘆願者の立場になる。一方、中国側はと云えば、気候変動会議への同国の出席可否が、他領域に於ける諸問題で引き出される譲歩次第である点を、既に、明確に示唆しているのだ。従い、中国に対し、政治的、或いは安全保障上の如何なる合意も、それを交わせば、その当事者は米国であれ、インド太平洋地域であれ、または全世界であれ、交わした側が事実上、二度の負けを喫する羽目になる。つまり、気候変動の交渉の場で、中国側の交渉者は、所詮実現不可能な約束をそれらしく提案し、時間稼ぎをする一方、ワシントン政府は中国に対し、例えば、中国によるインド太平洋地域での威圧的諸行動に対し、有効に対抗する術を放棄してしまう事になるのだ。
そのような諸事例が過去にある。ある分野で譲歩を勝ち取りつつ、他方、異なる領域で北京政府が、狭い自己本位の利益追求を弛まず続けると云うやり口だ。2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に於いて、南志那海に生じていた領有権問題に関し、当時、中国の李源潮副主席が「交渉と相談」による解決を呼びかけた。しかし、彼がこう発言した後に、中国人民解放軍は、正にその問題の海域に於いて、急速に軍事拠点化を進めた。しかも、僅かその2ケ月前には習主席が、同国は決してそのような事をしないと確約したにも拘わらず、である。同様に、気候変動に関する交渉に於いて、同国は、国内の既存、並びに海外で中国企業が建設中の石炭火力発電所群により日量数百万トンの温室化ガスが排出され続けている事を棚に上げ、バラ色の雄弁な提案を行うに違いない。こうして、中国共産党は利己的な観点に基づいた利益を獲得する一方、他の当事者達は、共用する生物圏の劣化を被り、全員が敗者となる。これを避けるには、懇請でなく、対決こそが、北京政府をして気候変動に対する同国取組を変容させ得る道なのだ。
今や対決の時なり
上記に見る通り、中国が莫大な規模で石炭を焚き続ける背景に、強固な構造的動機が存在する事実は、気候変動に関する同国との交渉の行方が、極めて危険極まりない事を意味する。成功する可能性がより高い道は、交渉の机に着く事ではなく、競争による闘いの中にこそ存在する。この戦略転換が必要とされる事、今や切実である。協調を第一とする路線では、北京政府が基本的条件を設定する立場となり、恐らくは失敗に終わる。何故なれば、中国との協調を模索する諸国は嘆願者の立場になるからだ。そして、この場合、最善の場合でも、それらの国々は先ず譲歩を強いられ、然る後に、北京政府が、親切ごかしに、漸く交渉に応じる、といった展開が精々なのだ。
それに代え、競争を宗として主導する戦略こそが、中国との交渉を進捗させる。ワシントン政府は、パリ協定やUNFCCの工程を破棄してはならない。同政府は、2021年11月、グラスゴーで開催が予定される、パリ協定の次期会合より前の時期に、寧ろ主導権を握り、数々の大胆な諸段階を実行に移すべきだなのだ。具体案を以下に示そう。
ワシントン政府は、主にOECD加盟の先進諸国からの参加を募り、価値観を共にする仲間との連立体制を組成し、これにより中国に対し、より持続性あるエネルギー諸供給源への変容に向け圧力を掛けるべきだ。2019年のOECD諸国のGDP総額は世界全体の凡そ75%を占有、一方、それらの二酸化炭素排出量は全世界の約35%を占める。参加国の内、豪州、カナダ、仏国、独逸、伊太利亜、日本、韓国、そして英国のこれら主要国を合同し取り込むような連立体制が実現すれば、影響力ある大きな力が構成され、それにより中国に排出削減の圧力を掛ける事が可能なる。米国と合わせ、これら諸国のGDP総額は2019年ベースで約43兆ドルに上り、これは世界銀行に依れば全世界のGDPの凡そ半分に相当するのだ。
連立体制が組成されたら、次は、同体制の下、炭素税を駆使する方法を模索すべきだ。即ち、財やサービスに対する徴税で、それらの炭素排出履歴、云い換えれば、これら諸製品を製造する為に要した排出量に賦課する仕組だ。これによってこそ、中国の環境に対する振る舞いを変容させることが出来る。そこで、米国の主導下、民主主義を信奉する、主要産業諸国によって足並みを揃えねばならない。既述の通り、合算すると世界最大規模の市場圏を形成する、これら諸国によって、各々国内に於いて炭素税の仕組みの導入が求められる。同税制は、交渉を通じ設定された税水準と、必要に応じ、毎年、乃至、隔年で税率を増加させる条項を付す事を基準とするのが望ましい。次の段階として、これら諸国により、炭素税越境調整の仕組みを創立する。即ち、もし、その輸入製品が、全く炭素税が無いか、或いは炭素税率の低い地域から入って来る場合には、同製品の炭素履歴を評価し、それに基づき租税を課す方式を確立するのだ。
輸入製品に関し、その炭素使用履歴を評価するのに必要な資料の内、既に多くのものが、今日、市販で入手可能で、殊(こと)、規模の大きい、鉄鋼、アルミ、セメント、半導体、自動車、及び、他のエネルギー傾注型の製品に就いては、往々にしてそれらは中国製が多いのだが、資料に事欠かない。客観的で公開的な炭素履歴評価の仕組みが定着すれば、北京政府が発する、中国企業が不当に除外されたとの非難をも躱(かわ)せるのみならず、更に、もし、先方が制裁関税や、その他の手法で、炭素税加盟同盟国からの製品輸入に報復を試みる場合にも、WTOによる紛争解決の場に於いて、同仕組みに基づいた基礎証拠の提供が可能となるのだ。
このように調整が取れた仕組みが導入されると、炭素依存型の中国製品は価格競争力を失う反面、米国製造業は、これ迄石炭を熱源とした中国との競合に直面し難儀して来た不利を補う機会を得るだろう。しかし、何よりも、この仕組みにより、中国が真剣に脱炭素化に取組まざるを得なくなると云う点が重要なのだ。譬(たと)え、中国が同国経済を内需中心型へと再誘導を試みた所で、中国企業群は世界中の輸出市場を求め、その渇望が止む事は無いのだ。つまり、一度(ひとたび)、国境を越えた製品に対し炭素税で価格調整する仕組みが導入されると、主要輸出海外市場に於いて、中国諸企業が価格で尚も太刀打ちしていく為には、彼らが調達するエネルギー源を変容せざるを得なくなる訳だ。
又、炭素税導入は、今や、大西洋の両岸で重大な関心を集めている。一般的に世界の民主主義国家は、炭素排出量実質ゼロへの移行を可能とする為に必要な基礎条件である、炭素価格の有効な設定作業、及び産業とエネルギー源の諸整備状況の、両面に於いて中国に遥か先行している。その証拠に、米国議会では、民主党と共和党との政治家達が共に、炭素税導入の諸法案を支援しているのだ。そして、欧州では、その程度の差こそあれ、炭素税は既に16ケ国で導入され、EUは欧州グリーン・ディールの一環として、炭素国境越境税を検討している。
同様に、特記すべき動向として、企業存続の重大利害を化石燃料に直接有する、巨大企業ですら近来では、炭素税導入は不可避の流れとして受け入れ始めている。国際的石油・ガス企業の大御所、エクソンモービル社の複数の共同事業者達は、OECD諸国に於いて二酸化炭素の排出量トン当たり60ドルの炭素税が2030年迄には導入される事を、既に想定として織り込んでいる事が、2017年の裁判所提出書類により明らかにされた。この1トン当たり60ドルと云う炭素税額の影響は如何程かと云うと、それはガソリンスタンド販価で1ガロン(約3.8リットル)当たり54セントの値上に相当し、米国民一人当たりの燃料代が年間で凡そ245ドル上昇する。無論、大半の人々はこの様な費用増加を歓迎しないものの、この程度の影響は吸収可能だろう。更に、この炭素税の一部を、国の技術革新に資する財源とし貯え、その残余は、ジェームス・ベーカーとジョージ・シュルツの元国務長官の両名が提唱する通り(論稿詳細は、フォーリンアフェアーズ誌2020年5月・6月号掲載)、炭素税収から、所謂、配当を実施する形態で、家計への直接金銭支給に充てれば、炭素税は市民にとって一層受け入れ易いものとなろう。又、エネルギー投入量に課される炭素税は、生来的に家計に対し逆累進的課税効果を持つ為、炭素税配当が、低所得者層に重きを置いた配分比率で為されるよう、実施に際し政府による収入調査を伴う事が望ましいだろう。炭素排出に関する米国の同盟諸国に於いても、前述した手法を採用する事により、各国の社会に炭素税の利点を説得できるだろう。
一方、中国諸企業に対し暗示される将来像は、極めて厳しいものとなる。中国の産業従事者達は、競争力を維持する為に、新しいエネルギー源や、汚染少なく、より環境に適した製造諸工程への投資を誘発させられる。この事は、翻って、中国社会を過度な炭素依存型経済からの脱却へと向かはしめる。この時点に於いて、米国並びにその同盟諸国は、北京政府が脱炭素に持続的に汲みせざるを得ない仕組みを、既に設置済であるのだ。即ち、万一、中国が脱炭素に逆行しようものなら、炭素税を引き上げてこれに対抗するという手段だ。そして、中国側にとっては、同国が気候変動問題を、これと引き換えに国際諸問題で譲歩を引き出す、交渉の武器として利用する事は最早、殆ど不可能になるのだ。
気候変動に関する、この種の競争的戦略は、バイデン政権の掲げる国内優先課題とも、又、一致する。国境越境に関する調整条項を備えた、炭素税が導入されると、米国に於いては、製造業の雇用が戻って来るのみならず、製造活動を支えるその他の産業界をも押し上げる事になろう。更に、それは、排出物が大気に到達するのを防ぐ、所謂、気体の直接回収を実現する為の、技術投入を促進するだろう。即ち、地中への炭素隔離法である。そして、更にその他の、炭素回収、有効利用、そして貯留に至る諸手法と諸技術により、国内の石油・ガス生産は、排出規制の状況下にあっても可能となるのだ。炭素税は、風力、太陽光、及び小型モジュール原子炉の各分野のみならず、潜在的可能性としては地熱エネルギー開発に於いてすら、より大きな進展を促す刺激を与えるだろう。この様に、炭素税は、バイデン政権が明瞭に掲げる「製造業復活」を推進する為に必要な、米国内エネルギー諸資源の豊富さを、更に補強且つ拡大する事に寄与するのだ。それに止まらず、これら利益に満ちた諸効果により、国内の賛同は十分に高まり、炭素税が長期的に持続可能となり、それによって、他諸国に対しては、今後、低炭素社会へ世界が持続的に移行する為に必要な数十年の永き期間に亘り、米国は約束を守り信頼に足る同盟国である点を、保して安心させる事が出来る。
大なる善は戦いの後に得られる
気候変動問題に関し、中国の外交政策に於いては、多くの米国政治家達が支持する環境や道徳上に鑑みた重要性は考慮されない。北京政府が目指す究極目標は、依然、中国共産党の支配力、好印象、そして影響力を強める事に在る。同党は、国際的な環境調和型経済に参画する事を通じ、この目標推進を狙っている。即ち、電気自動車と蓄電池、希少貴金属、及び風力発電設備の拡販が一例だ。或いは、決して実現されることがない空(から)約束と引き換えに、中国側の政治、経済、及び安全保障上の決定的重要諸事項に関し、米国や他諸国に譲歩させるべく、気候変動を巡る交渉を利用する事も可能なのだ。
中国に対し実効性ある変化を為さしめる為には、米国が気候問題に関する連立体制を結成する事により、中国と同国内の輸出事業者に圧力を掛けなければならない。この行動により、中国国内の改革派の人々が、同国の国家競争力を結果として高める事ができる基盤の上に、効果的で速やかな脱炭諸策の提言を行える環境が整うのだ。即ち、産業化が進んだ民主主義諸国に於いて炭素税制度が定着すれば、それが圧力となり、中国国内でエネルギー転換の必要性を提唱する人々に力を与える事ができる。そして、彼らが、地方地域の短期的利害優先に根差し、石炭依存を続ける同国エネルギー資源政策を固守する反対勢力に、対抗して行く事が可能になるだろう。
この様に、環境を廻る問題で、米国が中国と闘う事により、同国の圧制阻止と、加えて、修復不可能に陥る危険が潜在する環境への重度な負荷の増加阻止との両面に於いて勝利が可能になる。中国と積極的に交渉を試みても、気候変動に歯止めが掛かる事は望めない。何故なれば、同国は、こちらが到底飲めない法外な見返りを要求する一方、肝心の環境対策の実効性は極めて疑わしく、取引で約束した目標成果も結局は果たされずに終わるからだ。気候変動に関し価値観を共有する諸国間で組織立てされ連立体制こそが、中国を生産的に交渉の卓上に着かせる事が出来るのであり、現在行っているような、同国から無理にでも譲歩を引き出そうとする手法は効果がない。つまり、道徳上の観点を熱心に説く代わり、ぎりぎりの最低線を突き付ける事によってこそ、中国のやり方を修正させ、真剣に炭素排出量削減に取組むよう説得する事が出来るのだ。 (了)
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