【投稿論文】『韓国の核武装を提言する ~核爆弾保有が北鮮の脅威を封じる最善策~』(原典:Why South Korea Should Go Nuclear ~The Bomb is the Best Way to Contain the Theat From the North~, Foreign Affairs, 2025年January/February号, P113-126)

著者:ロバート・E. ケリー、 & ミンヒョン・キム(ROBERT E.KELLY & MIN-HYUNG KIM)

肩書:前者は釜山大学教授(政治科学)、後者は慶熙大学教授(政治科学)

(論稿主旨)

 韓国はこれ迄(まで)永らく米国に依存することにより、北朝鮮の核脅威を水際(みずぎわ)で防御し続けてきた。

平城(ピョンヤン)政府は、冷戦期に核兵器保有に向けた諸施策を断続的に着手、そして2006年に最初の核実験を実施し、今日に至っては、韓国に対し核の脅威を定常的に与えるようになった。一方、韓国は、1953年、朝鮮戦争を実効的に終わらせた停戦協定の直後に米韓で調印された、防衛同盟に基づき、以降、米国の核の傘下に庇護を受ける身になった。事実、この仕組みによって、数十年間に亘り韓国には十分な安全保障が提供されて来た。然し、今日、この保障が次第に脆弱さを露呈し始めている。

 韓国が抱える問題の重大さは、現在、2倍に増幅した状況と云える。平城(ピョンヤン)政府は既に大陸弾道ミサイル開発を今般成功させ、其処(そこ)から「果たして米国は、同盟義務を尊重し、本当に韓国の替わりに北朝鮮と戦って呉れるのだろうか」との疑念が湧いてくる。何故なれば、今や北朝鮮は核兵器で米国諸都市を直接攻撃する能力を持つに至ったからだ。

加え、更に悪いことに、ドナルド・トランプは過去に米韓同盟を激しく批判した経緯を持ち、この人物が二期目の大統領として今、正に執務開始の準備を整えたのだ。このトランプ政権下では、「米国が、朝鮮半島内の一(いち)紛争に介入することを辞さない」点を我々が盲信すべき確度が一層低下するだろう。 

 もし、斯かる紛争が生じれば、平城(ピョンヤン)政府は、米国の参戦を抑止しようと、「米国側軍事諸目標を核攻撃する」との脅しを先ず確実に仕掛けて来る。即ち、亜細亜(アジア)太平洋、グアム、或いはハワイの米軍基地が先ず標的となり、その次に同脅威は米国本土に及ぶ。斯くして、自国が戦争に巻き込まれる危機を目の当たりし、米国が躊躇することは十分あり得る。ウクライナ戦争の事例を見れば、それは明白だ。つまり、露西亜(ロシア)の核による恫喝策は有効に機能し、米国がキーウ政府に対する支援を抑制する、と云う成果を生んだ。従い、モスクワ政府の脅しが、同盟諸国を重視したバイデン大統領にすらも効力を発揮したとすれば、取引重視主義のトランプに対し、平城(ピョンヤン)政府からの圧力は尚更(なおさら)、米国に対し種々行動制約を与える公算が高いと見るべきだ。こうなると、最早(もはや)、韓国は自身の国防は自力で遣り繰りせざるを得ぬ事態に放り出さたに等しいのだ。

この深刻な防衛上の隙間を埋める為、今や韓国は、極(ごく)最近迄(まで)は政界非本流の周辺部で密やかにしか議論されなかった、ある手段を検討している。即ち、自前の核兵器を製造することだ。

 この提言が、韓国に於いては最早、主流となった。調査機関、シカゴ国際問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)の調査によれば、韓国々民の71%が核武装を支持し、これはソウル所在の亜細亜政策研究機構(Asian Institute for Policy Studies)が2010年に実施した際の同支持率56%から大きく増加した。他の在韓諸シンクタンクによる調査でも同様に、国民支持が決定的水準に達することが判明した。一方、政界有力者達の間に、意見は依然割れているものの、今や、核武装案に共感を寄せる傾向が韓国史上の如何なる時よりも高い。

 韓国の核保有化に立ちはだかる最大の障壁は、国内の有権者ではなく、海外に在る。つまり、米国だ。ワシントン政府内には、譬(たと)えそれが同盟国であっても、核拡散に対しては、超党派による根強い反対が何十年間も存在し続けている。斯くして、近年、バイデン政権は、米国が韓国に安全保障の提供を再確約する諸声明を打ち出すことで、ソウル政府を満足させようと努めて来た。韓国が、加盟国の核開発を禁じる核兵器不拡散条約(NPT)に尚も参加し続けている最大の理由は、米国からのこうした圧力によるものと見て先ず間違いない。

 処(ところ)が、米国は既に、核配備を遂げた友好諸国と共存する道を学習して来たのだ。英国と仏国が初めて核実験を行った際(それぞれ1952年と1960年)、両国とも米国の同盟国だった。又、イスラエルが1960年代に、米国による制止と懇願にも拘わらず、核開発計画を推進した際、ワシントン政府は結局、同国との親密な関係を維持したのだった。

米国の核の傘に完全依存することに韓国が抱く懸念は何も新しい話ではない。即ち、冷戦期にソヴィエト連邦が米国本土に対する核攻撃の脅威を与えていた当時、米国の同盟諸国は同様の心配を皆持っていたのだ。然し、今般、韓国がこの懸念に基づき独自の対応を取ろうとする行動をワシントン政府が妨げる場合には、韓国のみならず他の同盟諸国との間にも無用な軋轢を生むことになるだろう。

 韓国核武装へ異論を唱える米国の関係者達は、同策の欠点を過大視し、利点は過少評価する。更に、米国自由主義の価値観に照らせば「民主主義を戴く同盟国の選択する自国安全保障方針は、譬え米国の気に染まなくとも尊重される」べきであるが、彼らはこれも無視しようとする。

我々は次のように反論したい。即ち、もし、仮に韓国政府がこの策を踏んだ場合でも、批評家達が懸念を抱くような“核不拡散の国際体制が崩壊する”引き金とはならぬであろう。と云うのは、北朝鮮の核保有により既に米国の抑止力は打ち砕かれたが、韓国が核を配備することによって、寧ろ崩れた均衡の隙間を埋めることが可能なのだ。又、核武装によって韓国はより自己完結型の防衛を確保し、トランプが万が一にも米国同盟諸国から引き揚げてしまった際に被る潜在的危険を軽減し、更に“米国の手で提供される核の安全保障”と云う、韓国政府がその信頼性に就いて常に抱いて来た不安をも和らげることが出来るのだ。

 北朝鮮問題への対処を韓国自身の責任に委ねれば、米国は東亜細亜に於ける自国の最優先事案――即ち中国との競合に一層の精力を傾注出来るようになる。然し、何よりも先ず、ワシントン政府は同盟国の方針決定を邪魔立てするのを止め、韓国政府に独自の意思決定を任せるべき時が来たのだ。そして、韓国による核武装化と云う判断は、勢力均衡の観点から韓国のみならず、米国にとっても望ましい。

(以上 第一章 論稿主旨部完訳)

文責:日向陸生

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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