【投稿論文】『中国との競争に勝利せよ ~中国との競合は管理するのでなく、米国による勝利が必須だ~』(原典:No Substitute for Victory ~American Competition With China Must Be Won, Not Managed~, Foreign Affairs 2024年5月・6月号、P25-39)

著者/肩書:マット・ポティンガーとマイク・ギャラガー共著(MATT POTTINGER AND MIKE GALLAGHER)/ 前者は元米国家安全保障会議亜細亜上級部長(2017-2019年)、国家安全保障副顧問(2019-2021年)、後者は   元米共和党下院議員(2017-2024年)、議会で中国共産党特別委員会の議長を務めた。尚、前者は新刊「沸騰する台湾海峡~台湾防衛策の緊急提言~」の共著者にして発行者である(原題The Boiling Moat ~Urgent Steps to Defend Taiwan~)。

(論稿主旨)

 バイデン大統領の任期中、抑止諸策の数々が失敗し、アフガニスタン、ウクライナ、及び中東地域に於いて、それらへの対応余儀なくさる中に在って、同政権の対中国政策は比較的良好な事例として際立っていた。即ち、亜細亜(アジア)で米国同盟関係を強化、米国重要先端技術の中国へのアクセスを制限、更に同国との競合に関する超党派的気運を支持した。然し、これら初期に築き上げた折角(せっかく)の優位性は、同政権がお決まりの罠に陥って行く事により、次第に失われつつ在る。即ち、短期的視野に捕われ、中国側指導者達との緊張関係緩和を優先させる結果、世界に禍(わざわい)を招く彼らの戦略に対し我々が勝利する為に必要な長期的視点を犠牲としているのだ。バイデン政権が提唱する“中国政府との競争を管理して行く政策”は極めて危うい。その理由は、結局、同策が、結果よりも過程を優先し、世界安全保障を犠牲に米中二国間安定を求め、所詮(しょせん)は安逸な油断を招く丈(だけ)の協力関係樹立を外交方針とし重視しているからだ。

 米国は中国との競争を“管理”すべきでない。競争に勝たねばならぬ。北京政府は、西欧諸国の結束を解体し、反民主主義的秩序に至らしめるべく設計された、数多くの国際諸構想を追求する。中国は、露西亜(ロシア)、イラン、北朝鮮、及びベネズエラの拡張主義的独裁諸政権を支援している。又、2020年以降、保有核兵器を倍増させ、通常兵器増強ペースは第二次大戦以降で如何(いか)なる国よりも速い。これら諸行動から、中国が狙うのは膠着状態ではないのは明らかだ。従い、米国が目指す処(ところ)も、よもや膠着であってはならぬが理屈だ。

 では、この競争での勝利は何を意味するのか? その時、中国共産党指導者達は、米国と友好諸国を相手に、最早(もはや)、武力紛争又は冷戦を戦い、勝利を目論もうとする諸行動を諦めるだろう。そして、中国国民にとっては、指導者層エリートから一般市民に至る全ての人々が感化される結果、新たなる発展モデル並びに、内に抑圧を加え、同時に外に向け敵意を強制し煽るが如くの従来手法からは決別した、新しい統治モデルを探求し始めるだろう。  

 米国は、上述した最終目標を明示した上、加えて、この目的達成には、その過程に於いて米中関係により大きな摩擦が生じる事を覚悟しなければならない。ワシントン政府は、居住まい悪く、闘争的とも見える、声明発表と諸政策を採用する必要があるのだ。即ち、北京政府と彼らに従う諸国が侵犯しつつある境界線を、挽回し復元する為に、以下の諸策が必要となる。即ち、国際的な混乱を助長する、習の政策は結局、高価な代償を伴う事を彼に知らしめる事。中国が米国利益を損なっている諸事態に就いては、率直に声に出して明らかにする事。米国は防衛能力を急速に増強し、北京政府に対し軍事上に圧倒的な質的優位性を確保する事。西欧側先端技術に対する中国アクセスを断ち、中国に蓄積された富を軍事力へと転換目論む、習の試みを挫く事。又、中国に対し媚びない精力的な外交政策推進は、米国が権勢上優位であるとの観点に唯一基いて為されるべきで、且つその優勢をワシントンと北京政府の双方共が認知する点が重要な事、等である。

 再び冷戦に突入するなど、誰も好き好んで舵を切る国はない。然し、中国指導者達は米国に対し冷戦を既に仕掛けているのだ。この闘争の存在を否定するより、ワシントン政府はそれを受け止め、そして勝利すべきだ。冷戦は恰(あたか)も存在しないが如くの生ぬるい説明に終始すれば、却って之により現実の戦争(a hot war)へ導かれて行く危険がある。何故(なぜ)なら、この場合、米国民に油断を与え、中国指導者達に対し譲歩の意思を示す事になるからだ。元祖米ソ冷戦当時の如く、今回新冷戦に於いても、生半可(なまはんか)な諸策や弱腰な声明で戦いを勝ち切ることは出来ない。即ち、「虐殺を犯し、紛争を煽り、武力を以って威示行動を試みる全体主義的体制の国家は信頼すべき朋友に値しない」旨を公言する事が勝利には欠かせない。1970年代、ソヴィエト連邦に対しワシントン政府が採用した緊張緩和策が失策であったと同様、現行政権が採る方策は、「中国指導者達から見返りに提供される協力は僅か」な一方、彼らが「罰せられる事なく世界の安定を崩し得る」との確信を益々強める効果しか生まぬ点が危惧される。

(次章以降順次掲載)

文責:日向陸生

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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