著者:エリザベス・エコノミー(Elizabeth Economy)
肩書:フーバー研究所上席研究員(バイデン政権下に商務省中国担当顧問2021-22年)
第一章 論稿趣旨
昨年2025年10月13日、英国ロンドン北東に位置するフィーリックストウ港に一隻の中国コンテナ運搬船『イスタンブール・ブリッジ』が入港した。一見、それは何ら変哲ない光景だ。中国にとり英国は三番目に大きな輸出市場で、二国間ではひっきりなしに本船が行き来する。
その『ブリッジ』号が特異な理由は、同船の辿った経路にある――つまり、それは北極海経由で直接欧州に至った、中国初の主要貨物船だった。同経路に要した航海は20日間で、それは従来のスエズ運河経由、乃至は喜望峰を回る航路より数週間の節約になった。中国はこの航海を戦略的大成功と称え、供給網安定化に貢献すると公に評した。然し、より重要なメッセージは彼らが意図的に封印し、公表されなかった。即ち、新たな覇権王国として世界に名乗りを上げる同国が抱く、経済と安全保障上の「野望の真実」に就いてである。
北京政府が実施した、今回の北極圏での試みは、ほんの氷山の一角に過ぎぬ。1950年代初頭にして、中国指導者達は既に、世界の名実共に“新規開拓的な諸分野”に於ける競争に就き協議していた。つまり、対象は、深海、北極・南極圏、宇宙空間、そして、中国人民解放軍元幹部の徐光裕が唱えた「権力影響範囲と価値体系」分野で、この概念には今日のサイバー空間と国際金融システムが含まれるだろう。
これら領域こそが、国際権力を築く為に必要な戦略的基盤を構成する。そして、同領域の支配度合いが、希少資源の確保、インターネットの将来方向性、国際準備通貨を印刷する特権の齎(もたら)す巨大な便益、並びに安全保障上の一連の脅威から身を守る能力、等を決することになるのだ。
大概の専門家達は、関税や半導体供給網破断、或いは短期的な技術競争、等の“表層的競合事象”にばかり注目する。これ対し、実際の北京政府は、これら表面諸事象の“基盤となるシステム”それ自体に関し、構築能力と影響力強化を図っているのだ。何故なればこの根本システムこそが、今後の来る数十年間、世界の趨勢を決するからだ。
この実現を図ることが、実は「中国が国際舞台で再び中心に返り咲く」との習近平の野望に於ける核心部なのだ。習曰く「我々は、舞台建設の初期段階から中心的役割を果たすことにより、新しいゲームのルール設定を自ら行うのだ」と。こう彼が訴えたのは2014年のことである。
北京政府は、この戦いで既に極めて優位な位置取りに成功した。同国はこれら開拓的諸分野へ参入する際、「不変の法則と鉄則」に従う。即ち、先ず、必要となる現物(ハード)設備能力へ投資を惜しまず行う。そして、他諸国と友誼関係を結んで、諸機構に自らを組み入れ、これら諸団体に中国人専門家と高官を大量に送り込み、自国に都合よい機構改革を内部から進める運動を展開する。もし、中国が現存諸機構のメンバーに選任されない場合には、新たな機構を作る丈の話だ。これら全ての手法を駆使することにより、北京政府は極めて順応性に富み、従来と異なる新たな諸枠組みを縦横に試しつつ、自国の立場を強化し、そして、その新たな手法によって影響力を行使することに成功している。
米国の政治家達は、遅蒔きながら、今日の世界に於ける主要諸領域に於いて中国が権力構築に成功を収める全貌を目の当たりにし、漸く目を覚ましたばかりの段階だ。
換言すれば、今の米国は、現行国際システム内に於ける役割を放棄している丈には止まらない。更に加え「次なる国際秩序を決定付ける戦いに於いて、米国は既に劣後する」と云う現実こそ、しかと認識すべきである。
(第一章 訳 完了)
(*訳者補注):本船『イスタンブール・ブリッジ』は中国が保有する氷海仕様コンテナ積載船(搭載容量4,800個、パナマックス・サイズ)。因みに、スエズ運河、或いは喜望峰経由の中国―欧州航路の場合、40日~50日を要する。
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文責:日向陸生
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