【一般論稿】『現在、欧州が検討余儀なくされる独自核戦略案の三選択肢は何れも難題 ~それでも安全保障確保に向け、他に代案がない事情~ 』(原典:Europe’s Bad Nuclear Options ~And Why They May Be the Only Path to Security~, Foreign Affairs 2025, July/August 号、P140-150)

筆者:フローレンス・ガウブ、ステファン・メア共著 (Florence Gaub & Stefan Mair) 

肩書:前者は、NATO防衛大学調査部門長。後者は、独逸シンクタンク(独逸国際政治・安全保障研究所)役員。

(論稿主旨)

 第二次トランプ政権発足後、僅か最初の数ケ月で欧州大陸は依る術なく恰も漂流状態に陥った。当時、同大陸は、既にウクライナ戦争による動揺の中に在り、露西亜からの侵略の恐怖に対する懸念が一層拡大していた。処(ところ)が、ワシントンの新大統領の下で、その指導力には翳が差し「欧州の同盟諸国を守る」約束自体へ疑問の余地を生じたからだ。

 米国の核による傘は、欧州大陸を数十年間に亘り外部脅威から遮蔽して来たものの、最早それに全幅の信頼は置けないと、欧州の人々の目には映った。今年3月、仏国エマニュエル・マクロン大統領は「米国が我々の陣営に止まるものと信じたい」と述べつつ、「然し、もし、そうならなかった場合に、我々は備えて置く必要がある」と付け加えた。

 マクロン論じて曰く「今後進むべき道は、米国核兵器の抑止力に依存せず、欧州大陸を攻撃から守ることだ」と。彼が示唆した仏国の貢献は、同国核兵器を欧州内の隣国に配備する可能性も含むものだった。

 仏国大統領のこの提案に対し、各国が如何なる反応を取るか、予測するのは未だ時期尚早だ。

2020年にマクロンが提示した類似提案は、当時、欧州内主要政府から無視された。然し、近年、欧州大陸の地政学上の苦境が益々増加し、今や、欧州のNATO加盟諸国に攻撃が加えられる確率は、1970年代後半以来、嘗てなかった程に高まっている。

眼前に迫る現実と、現状に対するトランプ政権の無関心ぶりとに鑑みれば、欧州大陸が自身の抑止戦略の再考を求められているのは確かだ。もし、米国の核安全保障の傘が、最早欧州には開かれないとするならば、欧州は自前の核をある程度保持する必要があるかも知れない。然し、これは皮肉なことに、2017年に米国トランプ大統領が宣言した「世界を非核化する」野望に逆行する事態となる。

 如何なる核抑止戦略も、その信頼性は2本の柱に準拠する。即ち、「適切な核能力」を保持し且つ「核を使用する」決意が有ることだ。そして、その意味する処は、これらの基準に照らした場合、マクロンの提案、及びその他、欧州による独立した核抑止諸策は、何れも現時点では条件を満たしていない、という事実だ。

但し、欧州がその安全保障を米国から完全に切り離す事態がまだ訪れぬとは云え、欧州大陸諸国の指導者達は、それがやがてやって来る可能性に備えるべきだ。即ち、欧州として自身の核戦略の諸選択肢を真剣に検討し用意し始める必要がある。

短期的に、これらの行動は、ワシントン政府に対し「欧州諸国が抱く核抑止に関する諸懸念をもっと真剣に捉えるべきである」とのメッセージを送る効果があるだろう。

一方、中長期の観点からは、この作業は、我々が一つの基礎を敷設することに外ならず、欧州が米国から見捨てられるかも知れないという恐れが万一現実のもとのなる場合、その上に適切な制度を構築して行くことを可能にする。

(第一章 了)

次章以降の翻訳は順次掲載予定。

文責:日向陸生

*当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

===End of the Documents===

コメント

タイトルとURLをコピーしました