【フォーリンアフェアーズ誌 ガイド(2023年7月・8月号)掲載論文の概要紹介】 (Foreign Affairs 2023年 July/August号 、The Council on Foreign Relation出版)

 フォーリンアフェアーズ当月号は、表紙タイトルに「この戦争は如何に終わるのか ~ウクライナが勝利する道はあるか?~」と銘打ち、関連論文6編を集中掲載する。露西亜(ロシア)のウクライナ侵攻後、1年5ケ月経過したが、出口は尚も全く見通せない。斯かる中、停戦協定締結を主張する論稿が当月2篇登場した。

 先の朝鮮戦争を休戦に至らせた類の協定締結をウクライナ戦争でも模索すべきと彼らは主張する。紛争当事者間の様々な難問は棚上げにしてでも、流血と犠牲者の発生を喰い止めるのを最優先とする論だ。又、朝鮮戦争は休戦協定下に銃声が止み、爾来80年経過した今日も尚、停戦ラインが遵守される事実に照らし、大いに参考にすべき先例だと強調する。識者二人の見解は、これらの点で一致するものの、両者立ち位置には違いが在る。つまり、サムエル・チャープの論稿(『勝利なき戦い ~ワシントン政府がウクライナ戦争終結へ手を打つべき時~』、著者はランドコーポレーション上級政治研究員)は、露西亜を停戦に合意させるにはウクライナのNATO加盟は棚上げするのもやむを得ないとの譲歩姿勢を含み、如何に交渉成立させるかに腐心した提言であるのに対し、他方、カーター・マルカラシアンの論稿(『朝鮮戦争休戦方式の提言 ~ ウクライナ和平実現は停戦協定が最善策~』、著者は米海軍大学院の防衛研究部門長)は、朝鮮戦争の事例を回顧、停戦に至るまでの紆余曲折を検証の結果、実際に休戦協定成立に至るか、或いは破談するかは、何時の時代も「賭け」に等しく、成功の約束はないが、手を拱(こまね)いているよりは、同協定へ向け踏み出すべき、と悲観的状況認識を持った上での提言である。

 又、ラデック・シコルスキの論稿(『本当の試練がこれから欧州を襲う ~欧州大陸の安全保障を自身で真剣に考えるべき時が来た~』、著者は現役欧州議会議員)は、今般のウクライナ戦争を契機に、欧州大陸は各国自身による軍備増強が必要だと訴える。その理由は、次なる危機が欧州を襲う時、米国から支援を得られる保証はないからだ(今般のウクライナ戦争に対し、米国からの莫大な支援体制は謂わば、僥倖で、仮にトランプ政権下では事態が全く異なっていただろう)。更に、欧州が次に憂慮すべき危機とは、米中対立が愈々先鋭化する事態で、その際、欧州はウクライナ戦争以上に同域内に重大な影響を被る中、対中政策に関し、深刻な岐路選択(和するか、敵するか)を迫られるだろう、と近未来へ警鐘を鳴らす。然し、論稿には処々論理飛躍が在る。著者主張は上述通り、ウクライナ危機の後の、来るべき米中対立脅威に焦点を当てるが、ウクライナ戦争に就いては、プーチン敗北を楽観視しながらその説明を欠く。更に「日本帝国の対露戦略」の筆者歴史観に見過ごされざる突飛性が在るのが難点だ(詳細は下記に別途指摘)。

 以上3篇が、いずれも危機下に於ける、問題解決或いは危険回避の具体的諸提言であるのに対し、その他の3篇は、趣をやや異にする。即ち、ウクライナ戦争を歴史や統計的分析を通じ、普遍的真理や人類への教訓を学び取ろうとする姿勢である。ルーカン・アマド・ウェイによる論稿『権力の座に留まる独裁者達 ~今日の独裁諸政権は予想以上の耐性を備えている~』(著者はトロント大学教授)は、独裁者君臨は長期化する傾向を指摘、反対勢力が期待する程に脆くはなく、寧ろ堅牢な点を論じ、更に現在の露西亜、中国、イランの各独裁政権の比較を行う。これら諸政権が強い耐性を持つ背景は、体制発足時に政敵を一掃し権力奪取後、その儘「一強状態」が保持されている為だ。先月6月、世界を刮目させたプリゴジンの乱も結局は不発に帰したのは、或る意味、当論稿の主旨が裏付けされたとも云える。一方、著者の見立てでは、現政権の耐久性比較は、露西亜のプーチンとイランのアリー・ハメネイが強く、中国習近平はこれらにやや劣ると評価する。 

 マーガレット・マクミランは『斯くして長引く戦争 ~露西亜ウクライナ戦争と第一次世界大戦~』(著者はオックスフォード大学教授)と題し、戦争は一旦始まれば終結させるのが至難である点を過去の歴史に照らし考察する。終結が難事な理由は、敗色濃い側は必死の挽回を試みて止まず、一方、勝ちを意識する側は決して譲らぬ為だ。「平和交渉は戦争着手より難事なり」との有名なクレマンソー(第一次世界大戦下仏国首相)の格言に本論主張は凝縮される。つまり、戦争の歴史から彼女が導き出すのは、極めて悲観的な結論のみで、過去の反省に基き、将来に対する希望も具体提案も一切ないのはやや喰い足りぬと読者は感じるだろう。加え、第二次世界大戦中の日米硫黄島決戦に関する記述に関し、著者は深刻な錯誤に陥っている点を指摘せざるを得ない(下記に別途詳述)。

 アンドレア・ケンドール=テイラー及びエリカ・フランツ共著の論稿、『茨(いばら)の道程/露西亜がより良い国になる為に ~ウクライナの将来とプーチンの運命~』(著者はそれぞれ、シンクタンクの新米国安全保障センター上席研究員、及び、ミシガン州立大学准教授)は、冷戦終焉以降世界の独裁諸政権の推移実態を統計的に分析し、その尺度を以って現在の露西亜ウクライナ戦争の行方を探ろうとする試みだ。彼女達が其処から導き出した結論は、「独裁者の権力の座は、戦争継続する限り底堅く維持される」と云う通則だ。故に、プーチン・ロシアを変ずると期待されるシナリオは、可能性は低い乍らも、ウクライナが戦争勝利し、露西亜内部の大衆蜂起による変革だ、と論ずる。然し、著者達自ら実現確率が低いと認めつつも、その針の孔を通すが如き幅の狭い展開に期待を懸ける結論で締め括るのは、聊(いささ)か説得力不足の観が否めない。

 又、世界に盛衰した独裁諸政権の推移を統計的に集計し、趨勢把握を論文中随所に試みる(例えば、冷戦後、20年以上独裁を維持した諸政権は、その内40%がその独裁者の死去を以ってのみ権力を手放した等々)が、この手の数字は大まかな参考にはなるが、各国事情の差異を無視し、一様な法則の如きに取り扱うには無理あろう。当月巻頭を飾る論稿としては、力量不足が否めぬと感じた読者が少なくない筈だ。

 ウクライナ戦争以外では、世界の所得格差問題を分析した、経済学者ブランコ・ミラノビッチの論稿、『世界の富分配は大収束へ向かうのか ~世界的平等化と不平の行方~』は示唆に富み、興味深い論稿だ。我々は自らの生活ぶりを周囲と比べ、自国内での貧富格差に目を奪われ勝ちだが、同論稿は世界全体を見渡し、国際社会全体の富のピラミッド構造の変化に注目する。世界は今や「産業革命以来営々と続いて来た傾向が”大転換期“」に差し掛かると筆者は以下に指摘する。即ち、人口大国中国等の台頭等を受け、世界の所得ピラミッドが変じつつある。最頂点の上位富裕層に就いては、中国人参入が増加するものの、同最裕福層の大半を欧米人が占める構成は安泰である。一方、欧米人の中流や貧しい世帯は、嘗ては世界の所得ピラミッド上位に位置していたが、今や国際比較基準に於いて、彼らはピラミッド下位層に沈む傾向なのだ。世界格差構造が変化を来す中で、我が国、日本の位置を再確認し、在るべき姿を考察する上で必読の論文だ。

 その他事案に就いては、国際貿易を賞賛する論稿一篇(現行WTO事務局長ンゴジ・オコンジョによる投稿)、世界の無秩序を利した中国勢力拡大を懸念する論が一篇、印度(インド)関連2篇、更に米国の難民問題を扱う論稿が一篇、総計12本を収録する。論稿一覧は下記ご参照下さい(興味深い論文に就いては、幾編か選んで逐次全訳をお届けします)。

又、当月書評欄 『民主的資本主義の限界?~不平等と不安定により加速される西欧諸国の危機~』と題し、評者ダロン・アシモル(経済学者、マサチューセッツ工科大学教授)が、本題に関する書籍を紹介し論じる。

 社会の不平等格差が拡大する弊害により、今や、民主的資本主義の危機が叫ばれる中、その実態と原因探求に取り組む二冊を取り上げる。書籍は『民主的資本主義の危機』(マーチン・ウルフ著)、と『不安定な世界 ~富裕国と貧困国の双方で蔓延する民主主義に対する幻滅~』(プラナブ・バルダン著)。評者が「近世の大手テクノロジー企業群は中世の西欧封建領主に類する権力を握る」と表現する通り、本件は悲観的状況を醸すテーマだが、両著を比較、考察する中から、問題改善への希望を探ろうとする試みである。

 処で、評者のアシモルは米国・トルコ両国籍保有者、紹介図書の著者バルダンは印度(インド)人経済学者で、多様性を伺わせる顔触れだ。それにつけ、日本人経済学者は一体何処に隠れて居るのか?研究成果を世界に発表しているのだろうか。地味な研究で露出がないだけか? 世界一の借金と円安で国力を最も棄損される内国問題に真剣に向き合う学者は果たして居るのか。小宮隆太郎氏亡き後、御用学者ばかりが残ったのでは話にならぬではないか。

 一方、「読者意見欄」で当月注目すべきは、前号掲載された、イスラエル‐パレスチナ問題を取り上げた論稿『イスラエル“一国制度”が現実化しつつある ~“二国制度”に替わる策が必要な事態~』(ジョージワシントン大学教授のマイケル・バーネット等4人の共著)に対し、意に違わず怒涛の反響が同誌に押し寄せ、識者5人からの反論、並びに当該論文著者達による再反駁の場が提供され、大変興味深い展開となった(概要は別途掲載)。前号掲載論稿の著者達が自認する通り、当件は本来米国内では決して注目度が高い案件ではないにも拘わらず、彼らが正々堂々と声を上げ、これに対し、各識者達(中には保身に汲々とし苦しい反撃を試みた投稿も含む)から諸反論が巻き起こり、当件の論戦が繰り広げられるのは極めて健全だ。フォーリンアフェアーズ誌が創刊以来その存続の原点とした「自由な議論討議の場」が具現され、政策提言と解決に向け議論百出する環境は、本邦から見れば、羨ましい気持ちを禁じ得ない。即ち、日本国に於いて「政府債務」、「国防」、及び「政治改革」の核心的難問題に関し、何故に斯かる闊達な議論が沸いて来ないのか、識者達及び各界の責任自覚と奮起を期したい。

掲載論文12編、及びその他欄の概要(訳者反論文を含む)

1)『茨の道程/露西亜がより良い国になる為に ~ウクライナの将来とプーチンの運命~』アンドレア・ケンドール=テイラー、及びエリカ・フランツ共著 (The Treacherous Path to a Better Russia ~Ukraine’s Future and Putin’s Fate~, By ANDREA KENDALL-TAYLOR  AND ERICA FRANTZ、P8-21)著者はそれぞれ、シンクタンクの新米国安全保障センター上席研究員、及び、ミシガン州立大学准教授。

2)『勝利なき戦い ~ワシントン政府がウクライナ戦争終結へ手を打つべき時~』、サムエル・チャープ著(An Unwinnable War ~Washington needs an endgame in Ukraine~, BY SAMUEL CHARP, P22-35)著者は、ランドコーポレーション上級政治研究員。元米国務省政策企画事務官。

3)『朝鮮戦争停戦方式の提言 ~ ウクライナ和平実現は停戦協定が最善策~』、カーター・マルカシアン著 (The Korea Model ~Why an Armistice Offers the Best Hope for Peace in Ukraine~, BY CARTER MALKASIAN, P36-51)、著者は米海軍大学院の防衛研究部門長。

4)『斯くして長引く戦争 ~露西亜ウクライナ戦争と第一次世界大戦~』、マーガレット・マクミラン著 (How Wars Don’t End  ~Ukraine, Russia, and the lessons of World War I~, BY MARGART MACMILLAN, P52-65)著者はオックスフォード大学教授(歴史・国際関係)。

*マクミランの誤認識に関する訳者反論文:

【問題箇所】(原文:P61 最後の段落)

 マクミランは、先の二つの大戦中に於いて「実際は戦略上重大な価値がないにも拘わらず、象徴的な意義を求め、正当化され得ない代償をも注ぎ込んだ戦い」が生じた点を指摘。その代表事例として、第二次世界大戦下、ヒトラーによるスターリングラード攻略と日米の硫黄島決戦、そして、第一次世界大戦下の独仏のヴェルダンの戦いを引き合いに出す。そして、プーチンにとりウクライナ戦争が似たような位置付けになりつつあると彼女は指摘する。この文脈はさて置き、此処では「硫黄島」に関する彼女の認識違いを以下に反論する(他の二事例は論じない)。

<当該箇所訳文>(原文:P61、後ろから15行目~後ろから9行目):

『(第二次世界大戦中)米国軍が日本帝国から奪還に奮闘した太平洋諸島はその全てが重大な戦略性を帯びた訳ではない。その代表例が硫黄島攻略戦で、同島に於ける僅か36日間の戦闘で米軍死傷者2万6千人以上と、海兵隊史上、単一戦の中では最も多い犠牲者を出した戦いの一つだった。一方、之に対して得たのは、僅か島内滑走路一本のみと云う、戦略的価値の極めて疑わしいものだった。』(了)

<訳者反論>:

 著者は、際立った犠牲者数とささやかな物質的戦利品とを比較し、後知恵で上述のような、こじつけの浅薄な解釈を披瀝するが、之は事実ではない。米国作戦に於ける硫黄島攻略は、日本本土進攻戦略の一貫として、先ず、小笠原諸島内の同島を占領し、然る後に、本土攻略の足掛かりとなる沖縄侵攻へ向かう為の準備段階に位置し、同島確保は避けて通れない重要作戦なのだ。硫黄島攻撃前、米軍ターナー・スミス総司令官は、同島攻略には、戦闘期間5日間程度、然し、米側犠牲者は死傷者15,000人を見込んでいた。結果的に、実際の米軍被害はこれより大きく膨らむ事となった(死者6,821人、負傷者19,217人、合計26,038人)が、要塞化された島を攻略するのは、マクミランが考える程、甘い戦いではないのだ。米側犠牲者が増大した背景は、日本軍守備隊指揮官栗林中将の知略に基づいた頑強な抵抗に遭遇した米軍が、作戦予想の7倍以上の時間を費やした為で、同中将の戦法は小を以って大に抗する手本として米軍公式記録にも高く評価されている(所謂万歳攻撃は一切なかった)。一方、当時米軍内には派閥争いがあり、ターナー総司令官をライバル視したマッカーサー派が、意図的な中傷を以って、犠牲者数の大きい点をあげつらい硫黄島作戦を貶めるキャンペーンが張られた事実があるが、マクミランの見識は、恐らくはこの手の偏向した意見を盲目的に取り上げたものだろう。事実を曲げた著しく不穏当な見解である。マクミランに対し、本邦識者、及び東京都を含み、各方面専門家から公式に厳しい批評が続出する事を期待したい。因みに、硫黄島決戦は1946年2月14日から3月26日に掛け、米軍兵力25万人(支援部隊含む)に対し、日本は守備軍20,933人が戦い、捕虜1,033人を除き、全隊員が戦死した。合掌。

5)『本当の試練がこれから欧州を襲う ~欧州大陸の安全保障を自身で真剣に考えるべき時が来た~』ラデック・シコルスキ著(Europe’s Real Test is Yet to Come ~Will the Continent Ever Get Serious About Its Own Security? ~ BY RADEK SIKORSKI, P66-77)著者は現役欧州議会議員(ポーランド代表)、及び同国の防衛大臣、外務大臣、及び議会議長経験者。

 *シコルスキの論理飛躍に関する訳者反論文:

【問題箇所】

 著者の論理展開は飛躍傾向が在る。論稿主眼は、ウクライナ後の米中対立先鋭化により将来EUが見舞われる危機を警告する事だが、ウクライナ戦争の行方に就いては、「露西亜の弱体化」が著者の確信だ。彼は、パワーバランスが変じ、露西亜が欧州に下るか、或いは、中国に隷属するかだと云う。シナリオとして興味深いが、説得を欠き、十分な説明は為されない。

 又、大国が領土侵略を意図する実例を紹介する件(くだり)では、一つは、現在、習近平が、露西亜からウラジオストク奪還へ向け布石を打つ動きが既に在る事(習は、第二次アヘン戦争で失った領土回復の野望を抱き、但し、その手段は武力でなく露西亜との共同利用等平和的取極めを含む)を指摘した後、もう一つは、1939年に日本帝国がノモンハンで露西亜に戦いを挑んだ事例に言及する。シコルスキが此処で披露する、日本軍がノモンハン事件から真珠湾攻撃へ至る経緯説明は余りに粗野で誤解を生じるものだ。

<当該箇所の和訳(P77, 9行目~13行目)>

『然し、同戦闘(ノモンハン事件)が齎(もたら)した、最も重大な帰結は、日本軍は之によって、ソヴィエト連邦が外見よりも強国であると見て取って、北進策ではなく、東への拡大に勝負をかけるのを得策と確信した事だった。斯くして、最終的に日本による真珠湾攻撃へと繋がって行ったのだ』(訳了)

<訳者反論>

 シコルスキの説明は「日本がソ連とノモンハンで交戦結果、手強いと悟り南進策へ転換、即ち、真珠湾攻撃の起点となる事件」と総括するが、これは余りに雑で乱暴な解釈だ。周知の通り、南進策は1936年の段階で既に政府の重要国策として決定を見ているが、海軍と陸軍がそれぞれ推奨する、南進策と北進策とはその後も膠着した。1939年ノモンハン紛争の痛手により、陸軍内の征露北進論が急速に影を潜めたのは事実だが、その後、大戦前夜迄には独、ソ、及び英国等の世界の大局の流れが目まぐるしく変化する中、殊(こと)、日本と米国との外交交渉経緯も視座に入れずに、ノモンハンと真珠湾を直結するのは、突飛な拡大解釈だ。著者は「ノモンハンの衝突がなければ、日本が真珠湾攻撃に至らなかった」とセンセーショナルな暗示を狙う、甚だ関心出来兼ねる手法を確信犯的に取っている。この手の浅薄な解釈が、誌上で国際的に拡散するのは嘆かわしい事だ(況してや、彼がポーランド国防大臣経験者である)。マメに反駁して行く必要があるだろう。

6)『世界の富分配は大収束へ向かうのか ~世界的平等化と不平の行方~』ブランコ・ミラノビッチ著(The Great Convergence ~Global equality and its discontents~, BY BRANKO MILANOVIC, P78-91)著者はニューヨーク市立大学大学院客員教授(経済学)。

7)『世界貿易は必要だ ~国際化を捨ててはならぬ理由~』 ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ著(Why the World Still Needs Trade ~The case for reimagining not abandoning globalization~、BY NGOZI OKONJYO-IWEALA, P94-103)著者はTWO事務局長。

8)『権力の坐に留まる独裁者達 ~今日の独裁諸政権は予想以上の耐性を備えている~』、ルーカン・アマド・ウェイ著(Don’t Count the Dictators Out ~The Underappreciated Resilience of Today’s Autocracies~、BY  LUCAN AHMAD WAY, P104-115)著者はトロント大学教授(政治科学)

9)『無秩序化する世界に備える中国 ~片や遅れをとる米国~』、マーク・レオナルド著(China Is Ready for a World of Disorder ~America Is Not~、BY MARK LEONARD, P116-127)著者は、シンクタンクの欧州外交政策評議会理事。

10)『我が道を行く印度(インド)~ワシントン政府とニューデリー政府は価値観を異にしても利害を共にする関係だ~』、ダニエル・マーキー著(India as It Is ~Washington and New Delhi share interests, not values~, BY DANIEL MARKEY, P128-141) 著者は、米国NGO法人の亜米利加平和研究所の上席顧問。

11)『印度(インド)はクリーンエネルギーの旗頭たり得るか? ~エネルギー転換期に差し掛かる世界に於ける最大の賭けだ~』、アルナバ・ゴーシュ著(Can India Become a Green Superpower? ~The Stakes of the World’s Most important Energy Transition~, BY ARUNABHA  GHOSH, P144-155)著者は、国連経済社会理事会の下部組織である、開発政策委員会副会長を務める。

12)『難民危機を招く真の諸根源を暴く ~破綻的な難民保護制度が米国移住を歪める~』、ジュリア・プレストン著(The Real Origins of the Border Crisis ~How a Broken Asylum System Warped American Immigration~, BY JULIA PRESTON, P156-171) 著者はジャーナリスト。現在、米国非営利独立報道機関マーシャルプロジェクト寄稿者(1998年ピュリッツァー賞受賞実績を持つ)。

【書評欄】『民主的資本主義の限界? ~不平等と不安定により加速される西欧諸国の危機~』

評者:ダロン・アシモル(経済学者、マサチューセッツ工科大学教授)(原典:The End of Democratic Capitalism? ~How Inequality and Insecurity Fueled a Crisis in the West~, By DARON ACEMOGLU, P172-180)

対象図書:

『民主的資本主義の危機』マーチン・ウルフ著、2023年ペンギン社出版(496ページ)

(The Crisis of Democratic Capitalism, By MARTIN WOLF) 

『不安定な世界 ~富裕国と貧困国の双方で蔓延する民主主義に対する幻滅~』プラナブ・バルダン著、2022年ハーバード大学出版(240ページ)

(A World of Insecurity: Democratic Disenchantment in Rich and Poor Countries, By PRANAB BARDHAN)

【読者投稿欄】イスラエル「二国制度」による解決は尚も可能なのか? ~“イスラエル「一国制度」の現実”に関する論戦掲載~』(Can the Two-State Solution Be Saved? ~Debating Israel’s One-State Reality~、識者5人からのそれぞれ反応意見と、元論稿著者の再反論、P196-209)論争概要は別途掲載。

(了)

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