『近代生物兵器の恐怖 ~世界を混乱させる力を持つ最新合成生物学~』(原典:The New Bioweapons ~How Synthetic Biology Could Destabilize the World~, The Foreign Affairs 2024年 September/October 号P148-159)

著者:ロジャー・ブレント、ジェイソン・マッサニー、T.グレッグ・マッケルビーJr、共著。(By ROGER BRENT,  T.GREG McKELVEY,Jr,  JASON MATHENY)

肩書:前者はフレッド・ハッチンソン癌センター教授。後続の2名は何れもランド・コーポレーション(米政府系超党派シンクタンク)所属。マッサニーは同代表兼CEO、マッケルビーJrは研究員兼アドバイザー。

論稿主旨

 サイバー空間に於いては、外敵侵入の阻止を確認する実証テストが屡々(しばしば)行われる。即ち、実際に侵入者が用いる諸ツールと技術を動員し、コンピューターシステム防御網に対し、攻撃演習を仕掛けるのだ。実際、斯かるテスト手法が、あらゆる公共諸機関や主要企業によって実施されている。例えば、銀行業界は、その手のコンピューター専門家達を定期的に雇用し、彼らにわざと、なりすましメールで銀行職員からログイン情報を入手させ、銀行システムに侵入、現金を不正な口座へ送金する行為を行わせる。このテストが成功(不正送金が成立)した場合、彼等専門家集団は、銀行に対し発見諸事項を提示した上で、サイバー空間の保全環境改善について提言する、と云う運びだ。

 同様に、我々人類は2010年代後半から20年代初に掛け、ある種の侵入テストを社会が試されたのを目撃した。即ち、コロナウィルスだ。それは思いも寄らぬ大敵であったが、最終的には、人類が新しい病原菌から身を守る能力を証明した。但し、一方、そのテスト過程で露呈したのは、人類は結局このテストに落第した事実である。

それは、次の諸事から明白だ。つまり、コロナウィルス感染が僻地の南極測候所から隔絶したアマゾン奥地の部族にまで遍く蔓延を許した。同ウィルスは老人ホームから機上室内に至る迄猛威を振い、感染の拡散に連れ、貴賤の区別なく、一般労働者から国家政府要人に迄及んだ。専制主義国家に於いては苛烈なロックダウンと、民主国家に於いては奇跡的なワクチン開発を以って、ウィルス拡散は弱まりこそすれ、止める事ができなかった。そして2022年末迄に、米国では4人の内3人が少なく共一度は感染。又、中国では同年12月“ゼロコロナ政策”を解除して以降、僅か6週間の内に10億人以上の国民が感染した。

この世界的蔓延の中で死亡者数がそれ程は大きくなかった主因は、人類社会がこの病を制圧したのではない。真実は、この感染症自体の致死性が比較的低かっただけなのだ。そして、結局、コロナウィルスは大部分が自然消滅し収束したのだった。

 人類が先のコロナウィルス対応に失敗したのは、誠に深刻な事態だ。何故なら、今や、世界は、益々多くの生物学的脅威に直面するからだ。それらの内、例えば鳥インフルエンザは自然由来の病気だ。一方、生物学の発展が多くの人工的ウィルスを生み出した。過去60余年の間に、研究者達は分子生物学とヒューマンバイオロジー双方に於いて複雑な理解を発達させた結果、致死性が高く効果的な病原体の開発を可能にした。

 研究者達は、免疫の攻撃を回避するウィルスを創出する手法を発見し、又、既存ウィルスが空気中でより容易に感染するよう進化させる手法や致死性を高める為にウィルスの遺伝子を組み換える方法を学んだ。コロナウィルスに就いては、果たして、斯かる人工造物由来か、或いは人間社会へ野生動物を介し持ち込まれたものか、その真相は依然闇の中だ。然しいずれにせよ、AIの登場によって、生物学分野の技術は一層加速的に進歩を遂げ、諸病原菌を簡単に造り出せるようになった点は揺るぎない事実なのだ。

 万が一、人工的に造り出されるか、改造が加えられた病原菌が研究室から漏れたり、或いは意図的に放たれた場合、悲劇的な事態が出現する。即ち、新たに生み出された合成細菌は、コロナウィルスよりもより多くの人々を死に至らせ、一層甚大な経済損失を与える可能性がある。最悪の場合、嘗て欧州で三人に一人が死亡した、あの黒死病を上回る致死率で世界中に感染拡大し得るのだ。

 このような悲劇を回避するのは世界中の指導者達にとり最優先の責務であるに相違ない。核兵器や気候変動と云った、初期人新世に於ける大課題と同様、合成細菌が地球に与える脅威を減じる為の管理を行うのは、極めて複雑な問題である。この危機に対処する為に、先ず諸政府は、人造細菌に対し強い社会の構築に着手すべきだ。具体的諸策を挙げれば、例えば、人工的に手が加えられた細菌を探知可能な警報システムの開発だ。又、各国政府がマスク等の個人用防御用品の生産増強とより遥かに効率的な生産法を考案する必要がある。更に、ウィルスに対するワクチンや飲み薬を開発し流通させる迄の期間を、数か月単位から数日間へと劇的に短縮させるべきだ。一方、ウィルスの人工造成や改造に使われる諸技術の統制も必要となる。そして、これら諸策は全て出来得る限り速やかに実行に移さねばならないのだ。

(次章以降は順次翻訳)

文責:日向陸生

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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