『人口減少の時代 ~シルバー化する世界を生きる~』(原典:The Age of Depopulation ~Surviving a world Gone Gray~, Foreign Affairs 2024年November/December号P42-61)

著者:ニコラス・エバーシュタット(NICHOLAS EBERSTAD)

肩書:シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所、政治経済部議長。

(論稿主旨)
 人類が歴史上新しい局面に入りつつあるのを知る人はまだ少ない。「人口減少の時代」がやって来る。1300年代の黒死病蔓延以来、地球上の人類が初めて減って行くのだ。前回の人口縮小が、蚤(ノミ)を発生源とする死病を原因としたのに対し、次に来る事態は偏(ひとえ)に我々人類自身の選択に由来するものだ。

 出生率が急速に低下するに従い、益々多くの社会が広くそして無期限な「人口減少」へ向かいつつあり、その動きは遂には地球全体を包み込むだろう。その先にあるのは、規模が縮小し且つ老齢化した社会だ。純死亡率の勝(まさ)る世界――即ち、或る社会に於いて死亡率が出生率を上回り始める――と云うのが同様に、新しい標準となる。斯かる状況が出生率の継続的な崩落によって加速され、これ迄は、SF小説の中でのみ想像された家族構成や生活環境が、やがて当たり前で日常の極(ごく)普通の世界になる。

 「人口が減る」と云う集団的記憶を人類は持たない。それもその筈、世界総人口の減少を以前人間が体験したのは凡そ700年も前のこと。それは、ユーラシア大陸大半を黒死病(腺ペスト)が襲った直後だった。その後、7世紀を経て、世界人口は当時の約20倍に膨れ上がった。然も、この100年間に人類は4倍増したのだった。

 前回の世界人口減少は、黒死病が猛威を振るった後、人類が力強い生殖力を発揮し挽回した。然し、今回に限っては、「人類の生殖能力欠乏が人口減少の要因」と云う、人類が種として歴史上初めて直面する事態なのだ。差し迫る人口減少を推し進めるのは、ある革命的な潮流によるものだ。即ち、子供を望む気持ちが世界的規模で減じている。

 出生率を再生産水準まで回復させようと、出産奨励に躍起な政府の諸取組はこれ迄の処失敗している。将来、政府がこの問題に如何に意欲的に取り組もうとも、人口減少に歯止めを掛けることは困難だろう。最早、世界人口の縮小は殆ど不可避だと承知すべきだ。その結果、労働者、起業家、及び発明家といったあらゆる職域で人手不足が発生――その一方、より多くの人々は裏腹に一層の介護と補助が必要になるのだ。然し、この変動過程に生み出される諸問題が、必ずしも悲劇に等しいとは限らない。「人口減少」を“墓場行きの宣告”と捉える必要はない。寧ろ、それは把握するのが中々困難な新しい文脈ではあるが、諸政府はその中にも尚、繁栄する道筋を見つけ出す余地があるのだ。つまり、各国は各々の社会が今直面しようとする、老齢化と人口減の世界に於いて社会的そして経済的諸難題に備える必要がある。

 米国及び他国に於いても、識者や政治家達は、この人口構成の新秩序を受け入れる準備がまだ出来ていない。多くの人々が、来る諸変化や、或いは、人口減少が長く継続すると、社会、諸経済、更に、武力を背景とした強権政治の力学にどのような影響が及ぶかを十分理解出来ずにいる状態だ。然し、未だ遅くはない。諸国の指導者達は、最早止めようがないと見込まれる「人口減少」の勢いを重々認知した上で、このシルバー化する世界に於いて自国を成功に導く諸策思念に専念すべきだ。

(次章以降順次翻訳予定)

文責:日向陸生

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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