【特集論文】『台湾への異常な執着を捨てよ ~勝利できない対中国戦争に米国戦略が依存してはならない~』(原典:『The Taiwan Fixation ~American Strategy Shouldn’t Hinge on an Unwinnable War~』, Foreign Affairs 2025, March/April号, P90-105)

著者:ジェニファー・カバナー、ステファン・ウオートハイム共著(JENNIFER KAVANAGH & STEPHEN WERTHEIM)  

肩書:前者はシンクタンク、ディフェンス・プライオリティー財団上席研究員兼理事、及びジョージタウン大学大学院客員教授。後者は、カーネギー国際平和財団上席研究員、及び『世界の行方 ~米国の国際覇権の誕生~』の著者(原題『Tomorrow, the World ~The Birthe of U.S. Global Supremacy』2020年出版)。

(論稿主旨)

 台湾の運命は米国政治家達を悩ませ夜も眠らせぬが、そうあって当然の深刻な事案だ。中国が台湾侵攻すれば、米国は外交政策上これ迄で最も重大な判断を迫られるだろう。台湾が北京政府に陥落する事態となれば、ワシントン政府の信頼が損われ、在亜細亜(アジア)米国軍にとって新たな難問を生むことになる。

然し、台湾の自由を維持する効用は、1945年以来、初めての大国同士の軍事衝突を挙行する場合の代償と比較検討される必要がある。

もし、仮に米国が勝利したとして――負ける可能性すらあるのだが――中国との全面戦争は、ベトナム戦争や恐らくは第二次世界大戦をも上回る、米国人死者と富の破壊を招くだろう。更に最悪なことに、核爆弾とサイバー攻撃が米国本土に壊滅的な損害を与え兼ねない。これらは米国にとり悲劇的帰結だ。

 米国と中国の戦争が惨事になるのは論を待たぬが、同様に理不尽なのは、米国大統領が第三国たる台湾を守る戦争に踏み切るよう、巨大な圧力に直面する点だ。即ち、多くの米国政治家達は、現在、次のように固く信じている。「活発な亜細亜域内に位置し繫栄に満ちた民主国家の台湾は、譬え、如何に高価な代償を払っても防衛する価値がある」と。加えて、政治上の計算も又、大統領を戦争に嗾(けしか)けるかも知れない。

つまり、もし関与を避ければ、大統領に対する非難の矛先は、中国侵攻を引金とし経済崩壊を発生させたことに止まらず、「台湾の将来を巡りワシントンと北京が数十年に亘り双方意思のぶつかり合いを演じた挙句に台湾を失った」と云う点に向かうと予想される。それによって大統領の遺産は台無しになるだろう。負の影響がこのように確実視されるのとは反対に、もし事態を救う可能性が幾何(いくばく)でもあるなら、傍観するより、やってみる方に賭ける判断が働き――斯くして台湾を守る為に中国との戦いを選択することこそが、大統領が「戦争の偉大な勝利者」として歴史に名を遺す機会を温存する手段だ、と見做すに至るのだ。

現に、1960年代、リンドン・ジョンソン大統領は「ベトナムでの米国軍事行動を拡大するか」或いは「共産主義者が同国を乗っ取るのを許すか」、選択に直面した。彼は、その戦争が必須なのか、或いは勝ちを収められるか、その何れにも疑問を抱いたが、それにも拘わらず、米国人兵士達を戦場に送り続けたのだった。

 米国指導者達が是非共回避すべきは、「第三次世界大戦へ突入するか」或いは「台湾崩落を座して視るか」、何れも極めて酷い二者択一の意思決定を迫られる事態に身を置くことだ。そうではなく、第三の選択を選ぶべきだ。つまり、米国政府は「実行可能な自己防衛力を台湾が実装出来るよう」その計画案を策定し、遠方から支援する体制に切り替えることだ。そうすれば、台湾海峡を巡る紛争がどう決着しようとも、亜細亜に於ける米国地位は無傷に保たれる。即ち、もし中国が台湾に侵攻し、且つ米軍基地や戦艦に攻撃を加えなければ、米国は、台湾防衛を目的として自国軍勢力を出動させずに済むのだ。

 トランプ政権は、この第三の選択肢を実行可能とするよう今から尽力開始すべきだ。つまり、ワシントン政府がなすべきは、台湾への援助は防衛支出と軍備改革に限定し、彼らが自身で己(おのれ)を守れる体制を築けるよう後押しをすることだ。更に、米国は台湾が求める場合に武器補給が可能なよう、その能力と計画は拡充させて置くことが必要だ。

 その上で、米国の政治家達は更にある事実を認めるべきだ。つまり、米国が直接軍事介入を行わずとも、台湾は、中国軍を撃退する迄はいかなくとも、「同軍侵攻を長引かせ邪魔立てするくらいは可能かも知れない」と云う点だ。

この場合、米国は、当該地域の諸利益を、台湾の運命から切り離して保全する必要がある。つまり、台湾防衛義務を言明する代わり、ワシントン政府は敢えて曖昧策を維持し、台湾島を中国の支配から防御する重要度を引き下げるのが得策だ。

一方、他の亜細亜同盟諸国や友好諸国に対し、米国は各国に自己防衛力を増進させることを必要とする。これは、中国による台湾占領が成功した暁に、同国が更に域内支配を強めるシナリオを阻止する為だ。

詰まる所、国内に於いては、政治家や専門家達は、中国と戦争をする場合の代償を包み隠さず語り、「米国の存続や繫栄と云う重大事を、たかが台湾の政治的位置付けの問題にすっかり依存させる」が如き誤った考えを封じなければならない。

台湾への支援を限定しつつも確固たる意志に裏付けられた政策を採ることにより、米国は世界中を破壊する戦争の巻き添えになることなく、且つ、中国が危険な侵攻に踏み切る動きを牽制しつつ、譬(たと)え、万が一台湾侵攻が生じた場合にも、米国利益を守ることが出来るのだ。

(了)

次章以下の翻訳は順次掲載予定

文責:日向陸生

*尚、当ブログ翻訳文章は生成AI機能一切不使用です。

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